織物の里・桐生(群馬県)の機屋(はたや)に生まれ、伝統の技術と斬新な発想により、ユニークな布を次々に生みだしてきたテキスタイル・プランナー、新井淳一。
 氏の作品はまた、世界中のテキスタイル・クリエーターたちの指針ともなってきた。若き日の真木千秋も氏から大いなる刺激を受けたひとりである。 (氏と真木との出会いについてはこちらを参照)
 このたびはそうした氏の仕事の中から、生成の布を中心に集めてみた。
 初日から三日間は新井氏も来竹。
 8日の土曜にはお話会もあるので、ぜひご来駕を!!
(写真クリックで拡大)
新井淳一展
2008/3/7(金)〜3/13(木)
11:00-18:00 期間中無休
 竹林Shop・Akiruno, Tokyo
7−9日 新井氏在廊

新井淳一トークショー
「布ものがたり 」
3月8日(土) 14:00〜
(入場無料)
綿×ウール 6,300
ウール×合繊 3,360
綿×合繊 3,390
ウール×綿 13,440
綿×合繊 5,040
綿×合繊 2,730
 Shawls

 生成の生地を裁断してショールをつくってみました。
 生地は十数種、サイズはいろいろ。
 価格は二千円台より。
綿×合繊 4,620
綿×合繊 2,310
合繊 4,410
ウール 15,750
綿×合繊 12,600
シルク 15,750
 Vests & Skirts

 タンクトップ風のベスト、そして腰巻スカートもつくりました。

 また岐阜・百草(ももぐさ)の安藤明子さんが、サロンをつくってくれます。

 それから染織縫製作家の半田なな子さんも、生地を染めて服やバッグをつくってくれます。(もしかしたら室内履きも)
綿 12,600
綿×麻 12,600
新井淳一略歴
1932
1980

1983

1987

2003
群馬県桐生市に生まれる。
「民族衣装と染織展」を
オーガナイズ。
第一回毎日ファッション大賞
特別賞受賞。
英国王室名誉工業デザイナー
の称号を受ける。
The London Instituteより
名誉博士号を受ける。
 Fabric

 1955年から1999年の間につくられた生地の数々。
 木綿を主として、ウールや合成繊維を交える。
 今ではちょっとつくれない布もいろいろ。
 その一端をご紹介しましょう。
 まさに布のマジシャン、新井氏の面目躍如。
 ハギレもあり。
ウール×綿 5,250/m
綿×合繊 3,150/m
綿ニット 5,250/m
綿ニット 3,570/m
綿 8,400/m
綿 5,670/m
ウール×綿 8,400/m
綿×合繊 7,000/m
ウール×綿 4,620/m
ウール
綿ニット
ウール×綿 8,400/m
綿 6,000/m
ウールニット
綿ニット 5,040/m
綿ニット 5,250/m
真木千秋の「思いのタケ」 (ちょっと長い)

インドから帰って竹の家に行ってみる。
母屋は新井淳一さんの生成りの布でいっぱいになっている。
それもすべて生成りの布。
遠くから見るとみな生成りだが、近寄ってみるとそれぞれの顔がある。
去年から何回か桐生に通って、新井さんの倉庫から掘り出してきた、ヴィンテージの布、布、布…。

毎日スタッフがそれぞれいろいろな作業をしていて、ときどき私に相談してくる、
今日は4重織りで完結している反物を仕上げていた。
切り離すことによって、着るものが出来てくる。
ところが、本当は開いているはずの首のところが織られて、閉じてしまっている。
それで、みんなであーだこーだ、どうしたら使えるか考えていた。
結局首が出るところをハサミで切って、三つ折りすることに決まった。
その前に、いく種類もの着方が見いだされた…あんな使い方も良いのかも…。

その織物は二十数年前、私が米国に留学しているときに新井先生から頂いている。
それは白と黒で織り柄が出ているものだ。
今回のものは染める前の生成り。
生成りと白の二色でうっすらと柄がうきあがっていて、よりテクスチャーが感じられる。
とっても新鮮だ。

そろそろ展示のことを考え始めている。
今日スタッフに相談しながら、思い出したことがある。
これも二十数年前のこと。まだ学生時代に一時帰国して、新井淳一さんの佐賀町エキジビットスペースでの大きな展示会を手伝ったときのことだ。
「布」の店が東京にオープンして数年後に地方巡業の展示会が始まったのだが、その最初の頃だったかと思う。
たしか24才くらいだった私は元気まんまん。他の手伝いの学生やスタッフと一緒に8月初旬、冷房のない蒸し風呂のような広い広い展示場で数日間の展示作業に携わった。

そのときには、人間織機というものを新井さんが提案。
その経糸(たていと)づくりに、まず織物を反物から解いて、10mくらいの端と端を持って撚りをかけていく。ぐるぐるぐるぐる布に撚りをかけていく。
極限まで撚ったところで、今度は片端からくるくると巻いて鞠のような形にして、一本できあがり。
汗もほこりも全部一緒で、のどもからから。
でもその楽しかったことったらない。何百メートルやったのだろうか?
疲れてだんだん脱落していく人もありながら、私は体格の良さと体力と気力で疲れてきてもまた盛り返し、山登りをしているかのようにかけ声をかけながら最後までやりきったことをよく憶えている。

展示会初日にはそのくるくる巻いた糸を経糸にして、合計48人が一本づつ持って、
経糸になり、それぞれに番号がついた。
緯糸(よこいと)が通る前に番号が呼ばれ、その経人が糸を持ちあげて立つ。そこに緯人が通り、そして次の番号が呼ばれ…というように織物ができあがっていく。巨大な人間織機。ちゃんと綾の構造が浮きあがってきた…。

そんなことを思い出しながら…
さて、そこよりはスペースも小さい竹の家だが、母屋の二階も使って何ができるだろう。
例えば小さな子供たちが布にたわむれて遊べるようなスペースや、自然の中で生成りの布を見られたりしたらどうだろう。
果てしなく豊かな表情をみせてくれる生成りの布、透けるところ、すけないところ、厚い、薄い、ちりちり、ぽこぽこ、すーすー、しゃりしゃり、もこもこ、さらさら、つるつる…。
私たちの布よりさらにボキャブラリーの幅が広い。
気の済むまで布を広げて、触ったりひっぱったり、してみてほしいと思う。何をつくろうかなあ?と想像を広げてほしい。


楽しみながら展示をして、みなさんに御紹介したいと思う。

真木千秋