タッサーシルクとは
家蚕と野蚕
絹糸になる蚕には大きく分けて、家蚕と野蚕のふたつあります。家蚕というのは普通のオカイコさんのことで、それ以外のものはだいたい野蚕の部類に入ります。日本の天蚕や、中国の柞蚕(さくさん)、東南アジアのエリ蚕や、インドのムガ蚕などがこの野蚕の仲間に入ります。私たちの使っているタッサーシルクもその中のひとつです。中国の柞蚕と親戚筋にあたるということです。日本の学会ではタサール蚕と呼ばれています。
タッサーシルクとその産地
タッサーシルクはインド全域の森林地帯に産します。ただしその量は家蚕の五十分の一程度で(今やインドは中国に次ぐ世界第二の養蚕国です)、それも近年下降ぎみです。とはいえ依然としてインド農村部の重要な産業であり、国家機関による研究も盛んです。当スタジオでは主にインド中央部に産するタッサーを使います。家蚕は桑を食べますが、タッサーは沙羅双樹(さらそうじゅ)やアルジュンという樹の葉を食べます。
タッサーシルクとその品種
タッサーシルクといっても品種がいくつもあります。半養蚕化されているのもあれば、天然ものを採取するだけの品種もあります。半養蚕というのは、畑に食樹を植えておいて、そこに子虫を放つ飼育法です。天敵は猿とか鳥とか蟻ンコで、分止まり(収穫率)は約50%だということです。当スタジオの使用するタッサーシルクのうち、ダバと呼ばれる品種は半養蚕で色目は主にクリーム色、レイリーと呼ばれる品種は天然もので色目は茶色です。ただしタッサーは繭ごとにベージュから濃茶まで色のバラつきが大きく、そのために布に織り上がったとき、木目のような美しい色の濃淡が現れます。(反面、均質性が要求される量産の機械織りにはなじまないとも言えます)
タッサーシルクの特徴
家蚕糸と比べてタッサーシルクの特徴はと言えば、より光沢があることと、シャリ感があることでしょう。一本一本の繊維が太く、また精練も途中で止めているので、かなり丈夫です。当スタジオの製品はすべて水洗いでき、使い込むほどに肌になじんできます。シャリ感に関して言うと、水洗いの直後は麻を思わせる風合いですが、ほどなく柔らかくなり、また水を通すとシャリ感が現れるといった具合で、いろいろバラエティが楽しめます。