東京西多摩、秋川の清流を見下ろす崖上 |
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というわけで 、 大風でぶっ倒れた我が家の白樺の菩提を弔うため、その樹皮をもって染めようということになった。 |
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大鍋に入れて、火をつける。 |
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ちょっと遅くなったけども、やっと染めにこぎつける。
エイプリルフールの朝まだき、降り注ぐ春陽のもと、染液を大鍋に移して火を入れる。
燃料はケヤキの枯れ枝と、孟宗竹。
平鍋で熱効率がいいせいか、たちまち液温は70℃くらいまで上がる。(液温計は私の指)
そこでやおら、染師・若松ゆりえが、前もって下ごしらえをしたタッサーシルクの布を、染液に漬ける。(写真左)
絹というのは一般的に草木でよく染まるのだが、タッサーなどの野蚕は、家蚕(つまり普通のシルク)に比べると染まりつきがあまり良くない。さて、ウチの白樺、その首尾やいかに…
そして数時間後 ―
。夕方の光の中、ウラの物干しにへんぽんとひるがえるタッサーの布たち。
ちょっと整列して、ご登場ねがうと…(写真右)
左から、鉄媒染、鉄+灰、灰媒染。
春先の染材で言うと、梅の木に似た色合いだ。でも少々淡いか。特に灰媒染のが。
染師ゆりえいわく、「梅の方がずっとよく染まる」。(ここ竹林亭の大家さんが毎春、梅の剪定クズをどっさりもってきてくれるのである)
う〜ん、それじゃ我が家の白樺もあんまり浮かばれんな。まだ半分残ってるから、もう一度煮出して、重ね染めするか…。
4月15日 よろけ品評会 インド出張から戻り、約三週間ぶりにスタジオに現れた真木千秋。 デリーは既にもう夏。四十度近くまで気温が上昇したという。それでも例年よりはマシだったとか。 それでつい油断をして、朝から午後四時ごろまで昼食も摂らずに仕事をしたりして、同行の娘二人(う〜んちょっとムリがあるか!?)もさぞや迷惑なことであっただろう。なんでも真木千秋自身もダウンして、まっこと難儀なことだったらしい。(『もうインド行かない!』宣言まで飛び出し、真木テキスタイルスタジオの将来に暗雲がたれこめるのである。 …ま、単にトシなのかも) そうした艱難辛苦にもめげず、またいろいろ新しいモノをつくってきた模様である。 さっそく留守番隊長・若松ゆりえを相手に品評会。 ちょっとその会話を採録すると; ちあき「ほら、これね、ヨコ糸のよろけを出したいから、タテ糸の密度を変えたの」 ゆりえ「密度を変えると、織っているうちに糸の張りが変わってくるから…」 ちあき「そう、織りにくくて、織師さんもタイヘンだったみたい」 ゆりえ「こっちでカンテクロス*を織ったときもそうでしたよね」(*アフリカの細幅布) ちあき「この織りには、中国の苧麻と、ここで座繰りした絹糸を使ったの」 ゆりえ「あっ、この糸ですね」 ちあき「白いのを織って、後でインド藍で染めたの。だから、ほかの色でもできるね」
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サルトリイバラの枝をU字形にして、三つ使う。 |
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白いきれいな白樺の枝があった。 |
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サルトリイバラのU字形を二つ。 |
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ふたまたのケヤキの小枝を使って。 |
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6月7,8,9日の三日間にわたって開かれた、当スタジオのオープンハウス「竹の家
de 西表」。 |
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染め場では、西表から来た石井佐紀さんが、西表の素材で染めを行う。 |
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江戸時代の末期に建てられたという屋敷内には、当スタジオの布が展示されている。 |
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今回のスペシャルは、沖縄の炊き込み御飯「ジューシー」 |
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六月といえば「からむし」が伸びる季節。 |
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最終日におこなわれた真南風・衣ショー。(まあぱい・ころもショー) |
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木枠に巻き取った生糸は、乾かないうちにカセ上げする。 |
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織物坂のこの家 作詞:Lemmy Nakamura 作曲:De Curtis 歌唱指導:Parva Tanaka
1.
手間ヒマ惜しまず 手塩にかけて
育てたこの家 今日の日のため
マキの夢多く 予算は限られ
悩んだ日もある 泣いた夜もある
それさえ今では なつかし思い出
今日はあなたに 渡すこの家
ああこれが 私の定め
ただひとつの 生き甲斐
2.
森屋棟梁なら できぬはずはない
にらんだこの目に 狂いたがわず
屋根の波打ちも 柱の曲がりも
なんするものぞの 職人気質
目の覚めるような 見事な仕上がり
これがあの家 面影いずこ
ああぱるば こころして住め
織物坂の この家
歌唱上のポイント
築三十余年の陋屋を見事に変身させた建築家および棟梁の労苦、
その完成の喜びと、惜別の悲哀、
そうした悲喜こもごも、複雑なる心情を、切々、かつ朗々と歌い上げる。
…と言うわけで、話はあらぬ方向に赴いてしまったが、要するに、表題にもある通り、本日7月12日、世田谷・奥沢にある中村氏のスタジオ「レミングハウス」を訪れたのである。
実は1996年4月に青山店がオープンしたおり、今度ぜひLemmy氏の家具展をやりましょう!
という話になったのである。
氏は家の設計のみならず、こちらのページ写真内の「桐のチェスト」のごとく、木を使った家具調度のデザインも得意としている。
そもそも自分で手がけた店舗なのだから、氏の調度が合わぬはずはない!
…と思いつつ、お互い忙しかったこともあって、以来、六年余の歳月が経過してしまった。
そこで今年こそは、という意気込みを胸に抱き、当スタジオスタッフともども四人で久しぶりに氏のスタジオに赴いたわけ。
二年前に引っ越したという新スタジオ、入ってみると、さすがに美しい!
(わがアトリエと比ぶるに)
スタジオのそこここに、氏のデザインないしは見立てによる木製の家具や小物が案配され、実に心地よい空間が創出されている。
中村好文展は今年11月。
「さて、どんなもの作ろうか」
「箱なんか欲しいですね。裁縫箱とか」
「文箱とか、宝箱。CD箱とかもいいね」
「ウチの布を使ったもの。たとえば、青山店に置いてあるような椅子」
「布を使った屏風とか、扉とか」
「ストールを保管できる抽出が欲しい」
「壁掛タンスなんてのもある」
「地袋もいいね。つまり床面に接してつくられる戸棚」
「踏み台もほしい」
「折りたたみ式のお盆テーブルなんてどう?」
「ストール掛けも!」
…という具合に議論百出。
中でも一同の興味を最もそそったのが、Maki布で作る幕屋
(Maki屋?)だ。
パオのようにコンパクトに折り畳め、タタミ二畳ほどの広さ。四囲と天井は半透明のMaki布で覆う。
床面はMaki布を使ったキルティング風のマット。これも折り畳める。
屋内でも、屋外でも、使える。
中で何をするかというと、茶を喫したり、静坐したり、寝ころんだり…。あるいは蚊帳がわりに使ったり。
「僕もひとつほしい」、とは中村氏の弁。
さていったいどんな具合になることやら。以後の展開が楽しみである。