いといと雑記帳
2004
1月1日(木) 青山ショップ探訪…「古民藝もりた」
布好きにとって、青山に来たらまず見逃せないのが、この店「こみんげい・もりた」。
真木千秋もよく行く。
というか、できるだけ行かないようにしている。
というのも、欲しいものがいっぱいあって、非常に悩んでしまうからだ。
千秋がこの店のことを知ったのは、十年ほども前。
テキスタイル界の大御所、ジャック・ラーセンから聞いたのだった。
パリ在住のファイバーアーティスト、シーラ・ヒックスなども、この店を高く評価している。
すなわち世界的に有名な店なのである。
青山に店を開いて36年。
栄枯盛衰ハナハダしいご時世に、これはなかなかの事績である。
しかも年中無休というのだから、店主の森田夫妻がいかにこの仕事を愛しておられるか想像できよう。
店に一歩足を踏み入れるとわかる。
モノのひとつひとつに気が入り、手入れされ、とても生き生きしているのだ。
もともとは伊万里や唐津といった古陶磁が専門だった。
ところが、だんだんそうしたものが入手困難となり、染織工芸にシフトしていく。
現在は展示品の大半が布製品。
日本をはじめ、中国、東南アジア、おそらくはインドにいたるまでの古布が息づいている。
素材感のあるもの、きらびやかな装飾の施されたもの等、種類も豊富。
服飾デザイナーや工芸作家たちも、よくこの店に出入りしては、製作の参考にするらしい。
まるで博物館のようなところだ。
先日も真木千秋はこの店を訪れる。
インドのパートナー、ニルー・クマールへのお土産ハンティングだ。
言うまでもないが、ニルー姉御は千秋に劣らぬ布好きである。
いいものを見つけたようだ。
古い着物を二点。
ひとつは大島の男物着物。焦げ茶色の格子柄。
もうひとつは藍染の木綿に、絹糸でカスリ風の白い点々が入っている。おそらく絹糸を板締めで染め、織り込んだものであろう。
こうした手法から真木千秋は、布づくりのヒントを得るのである。
そしてニルーはこうした着物地で、クルタを仕立てて着るのだ。
インド風の長衣で、なかなかシック。
また機会があったらご紹介しよう。
「もりた」は、地下鉄「表参道」駅を降りて、徒歩数分。Maki
青山店へ道すがら、骨董通りぞいにある。
地図はこちらを参照。
古民藝もりた 港区南青山
5-12-2 TEL03-3407-4466 年中無休
1月8日(木) 冬の鳥
東京の僻地、ここ五日市にも、世に誇るべき食事処がある。
もう何回もご紹介しているが、今や我らがキッチンとなっている和食の店、魚冶だ。
家族は四人だが、みなMaki 布の愛用者である。
またそれぞれに、ちょっと変わった特技を持っている。
亭主の薫クンは山野草を使ったカゴ編みが得意。息子の七海クンは演劇青年。娘の風生はテディベア作家なのだが、私ぱるばの弟子。
さて女将の夏ちゃん。かつて園芸家を志したというのだが、何かの間違いで魚冶のヨメになってしまった。
この人の父親は明治生まれの文人で、実篤などとも親交があったという。
又二という名で、歌をよくした。
魚冶の書棚には又二さんの歌集が常備されている。
この店はなかなか料理が出てこないので、その間にも開いてみるといい。
口語体に徹して作歌されているので、私などにも読みやすい。
柿本人麻呂ではないが、まず長歌があって、それから反歌(五七五七七)、それから片歌(五七五)というのも添えられたりする。
自然を詠んだものが多く、そこはかとなき宗教性なども湛えられて、なかなか良いのである。
その魚冶から約5km上流、養沢谷の中腹にある当家(アトリエと呼ぶ)には、いろんな野鳥が訪れる。
その中でいちばんカラフルなのが、おそらくヤマガラと、ジョウビタキであろう。
ヒタキは概して色がきれい。
黄色いキビタキは、森の中で声はすれど、里には現れない。
瑠璃色のルリビタキは、魚冶に写真が飾ってあるくらいで、なかなかお目にかかれぬ。
そうした中で、常に我々の身近にいるのが、このジョウビタキ。
おそらく「ジョウ」とは「常」のことなのだろう。
毎年、十月の下旬になると、シベリアあたりから渡ってくる。
オスの体色は、茶と白と黒。その配合が、とても美しい。
メスは少し地味だが、クリクリした目がかわいらしい。
今朝も庭先にオスの姿があった。
葉を落とた姫娑羅の枝で、陽を浴びている。
一段と冷え込んだ朝だったので、羽毛に空気をはらませて、丸っこくなっている。
単なる日向ぼっこというわけでもないらしい。
ガラス越しに、チッチッという単調なさえずりが聞こえてくる。
写真を撮ってご紹介申し上げようと忍び足で近づいたが、サッと逃げられた。
いわゆる動物カメラマンの苦労がしのばれる。
ここは又二さんに倣って、片歌をひとつ。(すぐに影響される)
冬の陽にヒタキふくらむ枝の上 (春°馬)
2月1日(日) 帰国直後の注意点 あるいは「青い鳥」
帰国して早四日たち、暦は二月に突入。
しかし、表日本の冬の気候は特筆もので、気温は低いが、燦々たる陽光はインド・デリーを上回るものがある。
とにかくこの時期デリーはよく冷たい朝霧に閉ざされ、航空機の発着にも支障を来すほどだ。
久々の完全休日だった昨土曜は、天気も超よかったので、よし洗濯っ!
ってわけで、作務衣など藍系統を一挙に洗濯機に放り込んだ。
デリーではちょっとカッチョいいホテルに投宿していたのだが、私は藍の作務衣を常用。
きっと武道マスターかなんかと思われ尊敬されていたに違いない(かな!?)。
それから私が一昨年染めたルンギとか、藍染のシャツとか。
そんなのを一緒に洗濯機で回していると、その藍っぽい水の中に、ポツポツと小さな紙片みたいのが浮遊している。
「あっ、チリ紙をポケットに入れっぱなしだったか!」と思ってよく見ると、なにやら赤い小物体も一緒になって回っている。
これがなんと日本政府発行の公式書類。
すなわちパスポートであった。
帰りも作務衣だったからなあ、そのポケットに入れっぱなしだったのだ。
あわてて洗濯水の中から救助し、布巾やらティッシュやらで応急措置をする。
ま、こういう馬鹿な人もままあるのであろう、さすがに紙などはシッカリしていて、破れたりはしていない。
ただ、インドのビザは別紙の貼付だから、それが張り付いているページは、かなりヒネクレ曲がっている。
真木テキスタイル得意の「縮絨(しゅくじゅう)」と同じ原理だ。
というわけで、あわれ我がパスポートは、リビングテーブルの上で、かなり惨めな姿となって、完全乾燥を待っているのである。
「なんか現代アートみたい」と真木千秋。
このアートピースとまだ五年以上つきあうのか…。
みなさん、帰国直後の晴天には注意しましょう。
ところで、ひとつの前の日誌で「めったにお目にかかれぬ」と書いたルリビタキ。
今回帰国すると、意外や毎日お目にかかるのである。
しょっちゅう当家の庭を訪れる。
瑠璃色というより、ちょっと黒味がかって紺色に近い。
ここ養沢に転居し八年目にして、初めて見る鳥だ。
そこで片句。
藍の種つつけばそのうち藍ビタキ (春°婆)
2月6日(金) itoitoシステム管理者の悲哀
先日、税務署の調査が入った。どんなオジサンが来るのかと思いきや、いと麗しき妙齢の女性調査官ではないか。やっぱ麻布税務署は違うと感じ入った次第。これなら毎年来てもらってもいい、とか思ったりしたが、なんせ優良法人なもんで、当分お沙汰もあるまい。
で、そのとき「コンピュータ使用状況」なるアンケートを書かされる。
「システム管理者」という欄があって、やっぱ私なんだろうなあ、これは。
手織だからね、ここの産業は。
地上最古のハイテクなわけだ。
「機」と書くと、今では飛行機とかデスクトップ機とか思い出すが、そもそも「ハタ」のことだからね。
その進化はン百年前にあらかた終了しているわけである。
真木千秋を筆頭にそういうのが揃っているから、システム管理者としても苦労が絶えない。
銀座松屋というと、当スタジオが毎年春秋に展示会をとりおこなう「デザイン系百貨店」である。
おかげで私も年に何度か銀座に行けて嬉しい。
その正面に先頃、日本初のアップルストアが誕生した。
なかなかシックな店なのだ。トイレもウォッシュレットだし。(青山にもひとつ欲しい)
まあ、これをお読みのみなさんの多くには関係なかろうが、デザイン系の連中はみんなMacなわけ。
それで当スタジオでも幾つか使っている。
そのうち一台が故障したので、昨日、修理に持っていく。
ついでに操作法を習ったり、新しいソフトを買ってきたり。
で、今朝、このシステム管理者は真新しいパッケージを手に、颯爽と竹の家に現れる。
娘たちは縁側の日溜まりで、ミュージアムピースにハサミを入れている。
「iPhoto4 買ってきたぜい!
」と宣言すると、ややあって、「え…」と少々当惑を含んだ返事。
「これからPanther をインストールするからなっ!
」とタタミかけると、「…パンサーって??」
これがウチで「一番パソコンに強い」と将来を嘱望されるスタッフの反応なのであった。
う〜ん、これからこのコたちに最新デジタルフォトの取り扱いを教えにゃならんのか…。(自分もよく知らないのに)
というのも、今度、当HP内に、Makiアイテム紹介のページを設けようというのだ。
世間一般の会社ならまず一番最初に作製すべき大事なページなのだが、MakiのHPにはなかったのである。
そもそも役に立たないページが多いのだ。
その筆頭がこのページなわけで、みなさんおつきあいどうもありがとう。
2月21日(土) 青山かいわい散歩…「根津美術館」
今さらという感がしないでもないが、根津美術館。
Maki 青山店ができてもうじき満八年というのに、今日初めて行ってきたのだ。
徒歩五分のところにこんなスポットがあるなんて…
もっと早く来ればよかった。
ちょっと右側の写真を見ていただきたい。
とってもMaki shop から徒歩五分とは思えないよね。
名高い東洋古美術のコレクションだ。
今日私がふらりと訪ねたのも、中国・南画の巨匠、牧谿(もっけい)の作品があると聞いたから。
日本で水墨画というと雪舟とか宮本武蔵が有名だが、そうした人々が仰ぎ見たであろう大家である。
今日は能面の展示会をしていた。
中国・殷周時代の青銅器も見事。
ただ、残念ながら牧谿は見られなかった。
保存上の都合もあり、常設展示はできないのだという。
どうしても見たい人は、4月17日から5月16日まで、特別展「南宋絵画」をやっているので、そのときに行くこと。
(私も行きます!)
収蔵品が七千点もあるということだから、水墨画に限らず、年に十回ほど展示替えをして、いろいろ見せてくれる。
何が展示されるかは、根津美術館HPでチェックするか、あるいは電話で直接聞いてみるといい。
それから写真に見る通りの、広々とした庭園がある。
庭園を見下ろすカフェもあって、軽食などもいただける。
地図および入館案内はこちら。
4月11日(日) 青山特選お食事処「カフェ8」
これはちょっとした発見。
根津美術館の裏手にあるベジタリアンのカフェだ。
Maki 青山店から歩いて数分。
「TIME & STYLE」というお洒落なインテリアショップの三階にある。
こんなところに…と思えるような静かな一画だが、これがけっこう流行っているようだ。
もうじき満三年とのこと。
なんでも経営母体であるデザイン事務所の女性がビーガンなんだそうだ。
ビーガンというのはちょっと厳格な菜食主義者で、肉魚はもちろん、卵や乳製品もやらない。
我々のインド人パートナー、ニルー・クマールも乳製品は摂るから、それより徹底しているわけ。
だから、ここで供される料理には、肉魚はもちろん、卵・乳製品も使われていないのである。
「Eat your vagetables」というのが標語で、とにかく野菜をたくさん食べられるのがいい。
ご飯は玄米。パンは天然酵母だ。
私は別にベジタリアンではないし、正直言って玄米はあまり好きではないのだが、ここは雰囲気が良いので、おいしく食べられてしまう。
というか、きっと調理も上手なのであろう。
ランチセットは四種類あって、いずれも千円前後と手頃。
コーヒーや紅茶に添えるミルクだけは、牛乳と豆乳から選べる。
食事タイム以外には、たとえば「天然酵母パン二種と飲み物」セットとかがあって、これなど変なケーキセットよりヘルシーでいい。
休みは月に一度ということで、ほとんどいつも開いていて便利。
ここはおススメ!
営業時間:11:00〜23:00
定休:第三水曜
港区南青山 4-27-15-3F TEL 03-5464-3207
ホームページはこちら。
地図はこちら。
参考ホームページはこちら。
5月18日(火) 夏は来ぬ
ここ養沢の谷にも夏が来た(らしい)。
というのも、今日、ホトトギスが鳴いたからだ。
ホトトギスが鳴くと、かの文部省唱歌が自動的にリプレイされて、是非もなく「夏は来ぬ」になる。
二十四節気に「立夏」というのがあって、これは5月6日あたりだという。
古来、その立夏にはホトトギスが鳴くものとされていたらしい。
5月6日といえば連休の最後だが、ここ養沢の谷ではそんなに早くホトトギスを聞いたためしがない。
ここ五年ばかりの記録をひもとくと、ホトトギスの初鳴きは…
2004 5月18日
2003 5月13日
2002 5月18日
2001 5月24日
2000 5月18日
1999 5月23日
ということで、だいたい今の時期。
奇しくも今日18日が一番多い。
もっとも、出張や旅などで家を空けていたこともあるだろうから、必ずしも初鳴きと一致しているとは限らない。
あるいはまた、今日も昼過ぎに一度だけ耳にしたのみだから、日中留守にしていたら聞き逃すということも大いにありうることである。
春を告げる鳥といえばウグイスだが、夏になったからとて鳴きやむわけではない。
今も元気にホーホケキョをやっている。
都会の人がたまに聴くなら良いのかも。
うちみたいに庭先でもう三ヶ月近くも聞かされると、ほとんど慢性化して、興趣も薄くなる。
ウグイスだったら誰でも鳴き声を知っているが、ホトトギスとなるとどうだろう。
不肖私も十年ほど前、野鳥CDで聴いて、「ああこれか」と初めて納得した次第。
みなさんもきっと耳に馴染みがあるはず。
文字通り「ホ・ト・ト・ギ・ス」とか、あるいは「テッペンカケタカ」とか、「特許許可局」とか鳴く。
いにしえの和歌などでは、ウグイスよりもこのホトトギスのほうが盛んに詠まれたようだ。
鳴く期間も短いし、山の方から遙かに聞こえてくる風情が良いのだろう。
ともあれ、今年もめでたく夏が来たらしい。
ただ、ホトトギスと同時にヤブ蚊も現れるわけだから、「めでたさもちゅうくらいなり」か。
竹の家では蚊取り線香の煙がたゆとうていた。
(ついでに台風も来るみたい)
5月29日(土) 山形紀行
今、山形市郊外の「山寺」にいる。
ここには「風雅の国」という観光スポットがあって、芭蕉記念館とか後藤美術館といった文化施設が立地している。
その一画にあるのが、「風の蔵」という古民家ギャラリー。
山形県西部山間から移築した江戸時代中期の建物を利用している。
このギャラリーで、山形県初の真木テキスタイルスタジオ展示会が開かれる。
今日はその初日!
もうじき真木千秋のお話会なのだが…
外はざーざー降りの雨。
話者の平生の行いを物語っているようだ。
この山寺というのは地名なのだが、さる著名な山寺がここにあるのである。
東北屈指の名刹、立石寺。
かつて俳聖芭蕉が訪ね、「閑さや巖にしみ入る…」の名句を吐いた場所である。
ただ悪天候のせいか蝉たちもいたって閑かで、一匹も巖にしみ入ってくれないのは口惜しき限りである。
今回、はるばる山形まで赴いたのは、展示会のほかに、ひとつ目的があった。
「つぶつぶ」をやっている友人たちを訪ねたのである。
ご存じの方もあろうかと思うが、「未来食」という食文化を提唱している大谷ゆみこさんという人がいる。
この大谷さん、および夫君の郷田和男さんとは、じつは25年来の知己。(若きみぎりギリシアで出会った)
この郷田一家(夫婦+三人の子供)が、十数年前から山形に住んでいる。
新潟県境に近い、小国という山間の僻村だ。
そこに今回、一晩、やっかいになる。
これはなかなかに得難き体験であった。
未来食とはすなわち、雑穀を食べること。
雑穀というのは、アワ、キビ、ヒエのたぐいだ。
ただ、普通考えるような、米飯に雑穀を少々混ぜるだけではない。
「おかず」に積極的に雑穀を使うのだ。
たとえば、ハンバーグにしたり、スープにしたり、サラダのドレッシングにしたり。
そうして料理すると、かなりの量の雑穀が食べられる。
おかずというよりも主食みたいになって、別に米飯がなくてもいい感じ。
雑穀というのは案外クセがなくて食べやすいものだ。
郷田家の食卓は、いはゆるビーガンにかなり近い。
肉や卵や乳製品は一切使わない。
魚は例外的に近くの清流で息子たちが釣ってきたものはOKらしい。
それ以外はカツオブシすらも使わず、調味料は塩だけなんだそうだ。
だからといって禁欲的な趣もなく、子供たちも喜々としてつぶつぶを調理し、食べている。
真木千秋もすこぶる感銘を受けた様子で、当家の食卓にも変革が起こりそう。
つぶつぶのホームページはこちら。
6月14日(月) White Goddess
先々週の話になるが、日本橋高島屋で催された黒田泰蔵展に行ってきた。
黒田泰蔵というと、当スタジオ青山店でも三年ほど前に展示会をさせてもらった。
真木千秋の大好きな作家のひとり。
当然、ウチにも黒田作品がいっぱいあり、日夜欠かさず使っている。
ちょっと自慢しちゃおう。
無釉の飯茶碗!
世界広しといえどもウチにしかあるまい。
無理言ってお願いしたもの。
これに飯を盛ると、突如、銀シャリが金色燦然たる輝きを放つのである。
(最近は雑穀を混ぜてるけど)
(欠かないよう相当気を使うが)
さて、その展示会。
おそらく山口信博デザインであろう案内状も、まことにかっちょいい。
口上はただ一言、「黒田泰蔵さんの白は、真理を求めてやまない心の色である。 安藤忠雄」 。
当然の事ながら、初日に出かける。
六階の美術画廊。
会場の片隅にひとつ、目を引くものがある。
直径二十数センチ、無釉の円盤だ。
黒田磁器には、釉薬をかけたもの、灰釉のもの、無釉のものの三種がある。
私はことのほか無釉が好きだ。
何というか、手でひねり出したというより、石から切り出した感じ。
鉱物なんだけど、やわらかな木質の触感がある。
ほとんど真っ平ら。
縁の方がほのかに下がっている。
丸い月のよう。
古代・地中海沿岸で崇められた White Goddess を思わせる。
大理石でできた白面相の「月の女神」。
その上に載るのは、ウチの畑でできた大根とシシトウ。
それから三年前につくった(手前)味噌。
まっこと、つましい食材であるが、やっぱ燦然と輝くのである。
いよいよ神さびる当家の食卓。
黒田泰蔵さんも元気で創作に励まれてるご様子、なによりであった。
6月20日(日) Candle Nights
昨日、新聞で知ったんだけど、「キャンドルナイト」というイベントがあるらしい。
すなわち、「夏至の日、6月19、20、21日夜、8時から10時の2時間」、みんなでいっせいに電気を消して、ロウソクの火で過ごすんだという。
そういえば昨日、岩手から青山に来店した佐藤弓(佐惣珈琲豆)も、「今晩用に」とロウソクを手土産にしてきた。
私も火遊びが好きで、毎日のようにロウソクに火を灯して遊んでいる。
だからこういうイベントには、即座に乗るのである。
それで昨晩からさっそく、真木千秋とともにキャンドルナイトしている。
ロウソクというのはマイナス・イオンを発するのだそうで、私や皆さんみたいにパソコンの前に座る機会の多い人には、健康のために良いようである。
ついでに、公式HPで参加登録もする。
「candle scape」という日本地図があって、参加登録すると、自分の住んでいるあたりがピカッと光るのだ。
ちなみに私は7687人目の参加者であった。
一万人を目指しているようだから、関心のある人はhttp://www.candle-night.org/jp/apply/をクリック。
この日本地図は、新規参加者があると、そのつど画像がワープし、当該地がピカッと光っておもしろい。
「あ、松江だ」とか「小笠原諸島だ」とか、居ながらにして国内旅行してるような気分になる。
しかし、調子に乗って夜更かしすると、節電という本分に逆行することになるのでご注意。
6月26日(土) 養沢昆虫誌
本夕、養沢の谷でヒグラシの声を初めて聞いた。
ヒグラシは私のいちばん好きなセミなので、ここ数年、初鳴きの記録を取っている。
それによると;
2003年 6月30日
2002年 7月6日
2001年 7月2日
2000年 7月4日
ってことで、やはり今年がここ数年のうちでは一番早いようである。
ちなみにニイニイゼミも、だいたい同じころ鳴き始めるようだ。
もうひとつ、今夕、夏の風物虫を見た。
ホタルだ。
ホタルはヒグラシよりも活動の時期が短いから、注意が肝要である。
毎年、今ごろになると、あちこちから目撃談が伝わってくる。
たとえシーズンでも、時刻や天候によっては見られないこともあるから難しい。
昨年は失敗した。
私たちのホタル見物スポットは、これはヒミツなんだけど、ま、特別に明かしちゃおう。
養沢川をどこまでも遡った、どんずまりだ。
一般道路が終わって林道になるところで、そこまで行くと街灯がなくなる。
ホタル見物に灯りほど邪魔なものはない。
ただ、土曜夜なので見物人も多く、車のヘッドライトが少々うっとおしい。
ここはおそらく都内でも知る人ぞ知るスポットなのであろう、「練馬」とか「足立」とかいった域外車がけっこう多い。
ひとり、怪しいおじさんがいた。
普通ホタル見物は家族や友人と連れだって来るのだが、おじさんはひとりのようだ。
ときどき小さなライトをチカッチカッと明滅させている。
ホタルと交信しているのか!?
三十分ほどしておじさんが去ったので、ためしにそこへ行ってみる。
すると、ほかの所よりホタルが多い。
おかげで良い見物場所が見つかった。
「おじさんスポット」と命名する。
八王子ナンバーだったから、おそらく地元のホタルおじさんなのだろう。
しかしやっぱり、休前日は避けたいと思う。
6月27日(日) ウグイス攻撃
昨日ホタルを見に行った(前項参照)のは、じつは千秋の母親真木雅子と友人ユカリが当家に泊まったからであった。
その母親・雅子が今朝、開口一番、「ウグイス攻撃がたいへんで…」とこぼすのである。
鳥は早起きだから、今だとおそらく朝の四時ごろから「ホーホケキョ」とやるのであろう。
眠りの浅い真木雅子にとっては、それがかなり辛かったらしい。
ただ、ウグイスあたりならまだ序の口。
真木千秋にとっては、もっと辛いのがある。
ヒグラシ攻撃だ。
盛夏になると早朝に大合唱となる。
ヒグラシというと「カナカナ」と鳴いて風情があるのだが、それはあくまでも夕方、遠くから聞こえる場合。
近くで聞くと、決して「カナカナ」ではない。
母親譲りで眠りの浅い千秋にとって、朝方、それも庭先でやられると爆音のごとく聞こえるらしい。
幸い私は、鈍感なのか、慣れなのか、どちらも気にならず、すこぶる安眠である。
昨日、へんなホタルおじさんの話をした。
ただ、考えてみると、あまり他人のことは言えまい。
私もいたるところでへんなおじさんをしているのではないかと、そぞろ心配である
ところで、元祖「へんなおじさん」の喜納昌吉。
今般の参院選に出馬した模様である。
大人しくミュージシャンしていればいいのに(あんまり大人しくないか)、あえて政治の世界に投じるあたり、やっぱりへんなおじさんである。
ほんとなら沖縄県知事にでもなると面白いと思うのだが、チトへんすぎて沖縄県民にはウケないかも。
それで今回は比例区なのだろう。
三線(さんしん)抱えて全国遊説しているようなので、関心ある向きはどうぞ。
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