いといと雑記帳 2002
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11月23日(土) かよひじ
たとえば、あなたが Maki Shop にお見えになったとき、私がカウンターに佇立していることがあるでしょう。
ちょっと澄ましたような様子で。
しかし、その澄まし顔の裏には、深山幽谷の養沢から綺羅充満の南青山にいたる、長い道程が秘められているのである。
今日はちょっとそのお話をば。
朝、山中から車で駅に乗りつける。武蔵五日市駅に。
JR東日本には、五日市線ってのがあるのだ。
知らんだろうなあ。
中央線の支線の支線。
すなわち、東京駅に発する中央線が、立川で青梅線に枝分かれし、その青梅線が拝島で五日市線に枝分かれするのだ。
それを枝から枝へと逆にたどっていくわけ、朝の私は。
尺取り虫みたいなもんだ。
この五日市線。東京駅まで直通の電車も日に二本あるのだが、朝の六時と七時。
そのほかは、拝島行きか立川行きだ。
それも朝夕を除くと、一時間に三本。
しかも単線。
そんな痩せ馬ロシナンテにまたがって、ようやく中央線にたどりつく。
立川、国立、国分寺から、小金井、三鷹、吉祥寺…。この辺まで来ると、皆さんもご存じであろう。
やがて、中野、新宿…。
しかし中央線は青山まで行ってくれない。
そこで、さらに乗換が必要となるが、その選択肢はいくつかある。
代表的なものを挙げると;
さて、我が愛用の通い路はどれでしょう?
正解は4番!
新宿や渋谷といった大ターミナルを回避できるのがいい。
さてここで、皆さんのご参考にはまったくなるまいが、この4番における乗換の奥義を伝授いたそう。
あっ、なんか柄にもなくサラリーマンっぽくなっちゃったかな!?
しかし、すごい落差があるのだよ。彼我の間には。
先週なぞ、夜、青山から五日市に戻って、車で養沢の谷に入ったら、ヘッドライトに動物の影がっ!
多く場合ネコなんだけど、そのときはちょっと違った。
動作がノソノソしているのである。
それでよく見たら、小振りのイノシシであった。
そういえば、最近、猪害が甚だしいらしく、地元猟友会が出動して駆除にあたってるらしい。
撃たれんなよ、オマエ。
(ん、でもちょっと美味そうだった!?)
11月26日(火) ナタラジ
ついでに青山の食ネタをもうひとつ。
私はインド人であるから、(そのワリには日本語が上手でしょ)、ときどきインド飯を食わないと身が持たない。
そんなときよくでかけるのが、外苑前のインド料理店「ナタラジ」だ。
オーナーが私の友人だというせいもあるのだが、ここナタラジは、日本でも珍しい「グジャラート風」純ベジタリアン料理を出すのである。
ま、「グジャラート云々」は私の勝手な想像なのだが…。
というのも、オーナーのサティアティルス氏も、シェフのサダナンダ氏も、ともにグジャラート州出身だからだ。
余談であるが、私はかつてプロの旅人をしていて、世界各国を旅して回り、いろんなモノを食って生きながらえてきた。
現地調達主義だからね、私は。地元民の食うモノがいちばんうまいのだ。(間違っても日本料理店なんぞには入らない)
そんな中で、いちばん飽きずに美味しくいただけたのが、イタ飯でも、タイ飯でもなく、ほかならぬインド飯であった。
非常にバラエティー豊かなのである。
これは数千年にわたる食文化の賜物であろう。
よく「インド料理」と聞くと、「カレーですか?」とおっしゃる方がいる。
もしかして「インド人は毎日カレーライスを食っている」と思ってるのかな!?
言うまでもないが、インドにはああいう日本式カレーライスはない。
あれはインド飯がイギリスを経由して日本に入ったものであるらしい。
ちょうど、中華料理と聞くと、「ラーメンですか?」と言うようなものだ。(そんなこと言うヒトいないよね)
中華料理と同じくらい、インド料理は変化に富んでいるのである。
当スタジオのパートナーに、ウダイという人がいる。
ニューデリー在住で、ニルーの弟だ。私と同年である。
その奥さんアニータは、とっても料理上手。
料理のレパートリーは二百種にのぼるという。
すべてインド食だ。
西洋料理なんかひとつも作らない。過去あれだけ長くイギリスに支配されていた歴史があるにもかかわらずだ。
それだけ自国の食文化が豊かだという証左であろう。
ウダイ家の夕食に招かれるというのは、インド滞在中の大きな楽しみだ♪
夕食だけではない。
ウダイは毎日、愛妻弁当を下げて、いそいそと事務所にやってくる。
ところが…
そこに私の姿を認めると、彼はあっさり観念するのである。
「ああ、今日の昼は外食か…」
すなわち、私が彼の弁当を掠め取るからである。
私は別に他人の弁当を掠め取るという趣味はないのだが、ウダイの弁当箱を見ると、どうしても掠め取りたくなるのである。
その略奪現場を再現すると;
Parva "Hi, Uday....oh! you have your lunch box!"
Uday "Hi, Parva, so you want it?"
Parva "Yes, please!"
Uday "OK, you have it"
Chiaki "Oh no, Uday, that is yours!"
Uday "OK,OK Chiaki, I can go out, I eat one everyday!"― 和訳 ―
ぱるば "やあ、ウダイ。おっ、弁当箱じゃん!"
ウダイ "やあ、ぱるば。そう、欲しい?"
ぱるば "うん、おくれ!"
ウダイ "そう、じゃ、あげるよ"
ちあき "だめ、ウダイ、あんたのでしょ!"
ウダイ "まあ、まあ、チアキ。いいんだよ、外で食べるから。弁当は毎日食べてるし"
そう、当HPを見ていると実践的な英語の勉強にもなるのである。(でもやたらに実践しないように)
かくしてウダイの弁当は我が手に帰するのである。
ウダイ家の弁当箱は、簡易保温ジャーの中に、三段重ねの構造だ。
下の二段にはサブジ(野菜カレー)二品、上段にライス、その上に、アルミホイルにくるまってローティ(薄焼きパン)が置いてある。
サブジは前夜の残りだったりするのだが、それでもウマイ。
そして、私に弁当を奪われるウダイは、なんだかいつも嬉しそうである。
ヒトを喜ばせるのはいいことだ。
あっ、今日は余談だけで終わってしまった。
続きはまた明日。
11月29日(金) 続ナタラジ
外苑前にあるインド料理店「ナタラジ」。
ここは私の推測するに、グジャラート風の純ベジタリアン料理を出す。
ベジタリアンというと、ちょっと敬遠する人がいるかもしれないが、これがイケルのである。
私は雑食で何でも食べるのだが、インドへ行くと自然、肉や魚を食べたいとは思わなくなる。
もちろんインドには、たとえばタンドゥーリ・チキンなど、うまい肉料理はいくらでもある。
余談だが、インドではケンタッキー・フライドチキンは流行らないそうだ。
なんとなれば、そもそもニワトリの発祥地はインドであるから、ケンタッキーより美味いチキン料理はいくらでもあるのだ。
しかし、菜食の歴史はもっと古いのである。
私たちのパートナーであるニルーも徹底したベジタリアンで、卵すら食べない。
これは別に彼女が「変わっている」のではなく、インドで菜食はごく普通の食習慣なのだ。
多種多様なスパイスがあるので、別に肉や魚で味を出すまでもない。
さて、私は「ナタラジ」には、たいてい昼間にでかける。
その名物ランチは、四種の「カレー」からひとつ選び、それに御飯かナン、そして小さなサラダと飲み物がついて、\1000。
四種のひとつ「ナタラジ・カレー」は、グルテン(大豆タンパク)ミートを使用。「肉」の欲しい人にはお勧め。
辛いのが苦手な人は、「かぼちゃカレー」もいい。
私はたいてい、「日替わりカレー」か「野菜カレー」を頼む。
この「日替わりカレー」というのは、シェフのサダナンダがインスピレーションで作るもの。
店のスタッフも、当日朝にならないと何が出てくるかわからないという。
ちなみに今週の月曜は「チャナ・パラック(ひよこ豆とほうれん草のカレー)」、今日は丁字(クローブ)の効いた「たまごカレー」だった。
「野菜カレー」は、文字通りいろんな野菜が入ったオーソドックスな中辛カレー。野菜の食べたいときにいい。
ランチカレーのほかに、まだまだ多種多様な菜食カレーがあり、私はまだ全品制覇に程遠い状況だ。
このサダナンダ氏は料理大好きの研究熱心な人間だから、何を選んでもまず間違いはない。
もともとお国の大学で化学を専攻し、エリート官僚をしていたというインテリ。
それが、なんのご縁か異国のレストランでシェフを始めて、十有余年になる。
毎晩ネット上のスパイス・サイトをチェックしながら、新たな味の探究に余念がない。
その甲斐あってか店はいつも繁盛し、このたびは銀座にも支店をオープンしたらしい。(松坂屋の向かい)
ともあれ、美味しい菜食がいつも食えるというのは、私のようなインド人にはありがたいことだ。
ここからMaki青山店まで歩いて15分だから、食後の運動にはちょうどいい。
そういえば今年の夏のこと…。
私はルンギ(腰巻)姿で揚々と青山通りを闊歩していたのだが、どうもそのルンギがずり落ちてきて困った。
それで何度も立ち止まっては、人目も憚らず巻き直すのであった。
昔バリ島で習った簡便な巻き方だったのだが、街中の長い散歩には不向きであったらしい。
そのときちょうどナタラジ近辺を闊歩中だったので、これ幸いにと飛び込み、昼食がてら、サダナンダに相談したのである。
そうしたら、しっかりしたインド式の巻き方を、手取り足取り教えてくれた。
この写真のルンギ姿は、そうして巻いたものである。
彼自身はルンギを筒型に縫い、寝巻として使っているという。
(そう言う彼のオナカは、典型的な「コック腹」であった)
地下鉄銀座線「外苑前」。伊藤忠本社ビルの向かい。青山通り沿いB1F。
店の前にある「自然派インド・レストラン」という看板が目印。
(しかし「自然派」を標榜するなら、店内を全面禁煙にしてほしいなあ。せっかく良い料理を出してるんだから…)
03-5474-0510 年中無休。ホームページはこちら
12月10日(火) 香信の食い方
いやあ、久しぶりの雪で、うれしかった。
というのも、私たちは厳冬期ほとんどインドにいるので、雪におめにかかるチャンスが少ないのだ。
タイヤがスリップしてちょっと往生したが、それくらいは我慢しよう。
竹の家では、雪をかきわけシイタケの収穫。
最近は降雨が多いから、シイタケも成長する。
ウチのシイタケは出始めて三〜四年たつので、ちょっと小振りの香信が多くなった。
シイタケは、姿形で二種類に分ける。
冬茹(どんこ)と香信(こうしん)だ。
ずんぐり肉厚なのが冬茹。
傘の開いて肉薄なのが香信。
冬茹のほうが量感があって美しいので、これが採れるとうれしい。
香信はなんか貧弱で、ちょっとガッカリだったのだが…
先日、「木の小屋」(きのこや)を訪ねたときのこと。
木の小屋というのは、ウチから養沢川を遡ったところにある蕎麦屋さんで、木こりの吉沢さんが経営している。
ざるそばを注文したところ、吉沢さんが、火鉢でシイタケを焼いてくれた。
もちろん自分のところで採ったものだが、小振りの香信だった。
なんだシイタケか(失礼!)と思ったのだが、これがじつに美味なのである。
私でもできそうな、非常に簡単な「料理」。
すなわち、シイタケを洗わずに、ただそのままひっくりかえして網の上にのっける。
そして、白いヒダヒダの上にちょっと塩を振りかける。
香信の繊弱なフチが、ちょっとシナッとしたかな? くらいの、いはば生焼けくらいの状態で、できあがり。
見ると、ヒダヒダの上の塩粒が、シイタケの水を吸って水滴になっている。これがウマ味なのだ。
真木千秋いわく、「こんなに美味しい食べ方はない!」
雪の中から収穫してきたシイタケを見て、食いしん坊の千秋はそのことを思い出す。
むろん、竹の家に火鉢なんかない。
それで試しに、オーブントースターでやってみた。
するとやっぱり…美味なのである♪
(塩の水滴はできなかったが)
というわけで、いかに貧弱な香信とて、これからは大いに歓迎される次第となったのである。
はたしてスーパーで売ってる香信もこのように美味しくいただけるかどうか!? それはみなさんのご報告を待ちたいと思う。
〈12月11日・追記〉
昨夜「あきるの東急」に買い物に行ったのだが、売られているシイタケを見たら、笠の半開き状態のものが多い。
これじゃ上記の食べ方もできないか…。
まー値段も安いから、味も推して知るべしだろうなあ。
ウチのは自慢じゃないが、形は悪いが、味はすごい。原木から自然状態でつくってるからね。
夜食べて、翌日まで香りが口中に残るほど。(あっ、自慢になってるな ^_^;)
青山店で売ってる唯二の食品、飯田さんのシイタケもすごいよ。
本物の原木・干しシイタケ。いわゆる花冬茹だ。
ウチでは扱ってないけど、生のやつ。これも、ものすごい。
でえらぼっちか、横綱武蔵丸のごとき風格だ。
姿にしても、風味にしても、シイタケの認識が変わること請け合い。
だまされたと思って、直接注文してごらんになるといい。
菓子折くらいの箱入りで3000円。電話は0558-83-0640
伊豆天城の山中で天然栽培している。
ともあれ、キノコはせっせと食べたほうがいいらしい。
抗ガン作用のあるというβ-グルカンを始め、キノコの薬効は最近とみに注目されている。
というわけで、今夜ウチはキノコカレー。
自家製シイタケをはじめ、マイタケ、マッシュルーム、ブラウンマッシュ、あるいはヤマブシタケなる怪しいものも。
肉は使わず、その代わりに大豆や黒豆などを煮て入れる。
ちなみに、ウチの千秋は「キノコ女」の異名を取るほどの食菌人種。
シイタケなど私の三倍は食べる。
長生きするだろな〜。
12月12日(木) 備長炭洗濯法
真冬みたいな寒さも和らいだ今日12日。空も晴れ渡り、絶好の洗濯日和。
私は炊事はしないが、掃除と洗濯はちゃんとするのである。
ところで、備長炭洗濯法って知ってる?
私も近所の友人から教えてもらったんだが、すなわち、備長炭を袋に入れて洗濯機に放り込み、塩を小さじ一杯入れて、それで洗濯するというもの。
すすぎも一度でいいから、電気+水+時間の節約。無洗剤だから水を汚さない…。ということで、つまり環境負荷の小さい洗濯法なわけだ。
三年ほど前に習って、しばらくそれだけで通していた。
ちなみにウチはクラシカルな二槽式洗濯機である。
しかし去年の夏、ちょっと気づいたのだが、Tシャツの汗臭さがとれない。
それでネットを調べたら「そんなときには塩の量を増やせ」とあったので、試してみたんだが、やっぱりとれない。
それでこの洗濯法の限界を知ったのである。
更にネットで調べたら、どうやら、この洗濯法にはあまり科学的な根拠はないらしい。
そういえば、青山通りにある備長炭ギャラリー(青山にはそんなギャラリーまであるのである)に行っても、備長炭洗濯法については何も語っていなかったな。(ちなみに青山には蝋燭ギャラリーもある)
洗剤代わりになるという科学的根拠はないが、普段はそれほど不自由も感じなかった。
だいたい、日々の洗濯物の半分以上を占める下着類って、みんな毎日替えるじゃない。
それを毎度毎度、親のカタキみたいに洗剤で洗う必要もあるまい。
私なんぞ学生時代の夏休み、北アルプスの山小屋で一月ほど寝起きしたが、その間、下着を替えたのも、風呂に入ったのも、それぞれ一回こっきり。(自慢になんないか…^_^;)
それでもこうして元気に長生きしているのだ。
ともあれ、昨年夏の経験以来、再び粉石鹸や洗剤を使うようにはなった。
現在では備長炭洗濯法は三度に一回くらいかな。
二度に一回でもいいかも。
なんせ、二年間はそれで通してたんだから。
「まぶしい白さ」なんて関係ないしね、ウチは。
白と言えば生成を指すくらいだし。
まぶしい白さは窓外の雪だけでじゅうぶん。
(寒冷地なもんで、まだ雪が融けない)
12月22日(日) 青山 de さぬき
ひとついい店を発見したのでご紹介しよう。
Maki青山店の近くの話。
相変わらずの食ネタなんだけど、ご勘弁のほどを。
なにしろ衣食住をトータルに面倒見るMaki Textile Studio なもんで。
(というか単に食い意地が張ってるだけか!?)
名前は「カフェ・ア・コテ」
…と、フランス語だが、どういうわけか和食の店。
Maki青山店から一番近い食べ物屋だ。
当店から歩いて骨董通りにぶつかり、横断歩道がないにもかかわらずそこを押し渡り、目の前にあるコンビニ右隣のビル二階。
あっさりしたヘルシーな昼食を…というときには最適な店であろう。
ランチは讃岐うどんと御飯のセット。
うどんはほんとに西国風で、つゆの色や塩気が薄く、だしの味で食わせる。
麺もコシがあってうまい。
御飯は白米と玄米があり、じゃこやイクラなどトッピングが選べる。
私はあんまり玄米が得意ではないのだが、ここではがんばって玄米を選ぶ。
それに小さなサラダとデザートがついて900円(平日)は、この辺では安い。
ドリンクメニューも中国茶からコーヒー、アルコール類までいろいろ。
ここのカフェラテはミルク分が多く、私にはちょうどいい。(普通のコーヒーより大きめの器なので、ちょっとトクした気分♪)
店の雰囲気も明るくていい。
それから店長氏の髪型がユニーク。(見てのお楽しみ)
CAFE A COTE 南青山 5-4-26 FJB南青山ビル2F 03-3406-8072
12月30日(月) 東信濃・田沢温泉
一昨日夜から、私ぱるばの実家、信州上田に来ている。
月のテーブルのあるところだ。
日本で正月を迎えるのは、99年以来、三年ぶり。
別に正月なんてどうでもいいんだが、その前に大切な恒例行事があるのである。
餅つきだ。
普段は両親(&妹の田中惠子)が機械で餅をつく。
ただ私が日本にいるときには、いつも母親に頼んで手づきにしてもらう。
すなわち臼と杵でつくのだ。
ま、餅つきなんて一種のお祭りだからね。
それに先立つ細々とした準備の一切は、一家の主婦がやるのだ。
だから主婦のOKがないと、この遊びはできない。
今回は真木千秋ともども餅つきにやってきたが、その両親である真木貞治・雅子夫婦も東京小金井から見物に駆けつけてきた。
かつて長野・善光寺境内の実家で毎年餅をつきまくったという貞治氏、さすが往年の血が騒ぐらしい。
ひと臼ついてもらったのだが、「昔取った杵柄」という言葉通り、なかなかに見事な手つき腰つきであった。
私が餅つきにこだわる理由は、あんころ餅にある。
すなわち、餅つきが終わると、そのつきたての餅で、昼食にあんころ餅をつくるのである。
ま、家によって異なるのであろうが、ウチの場合、雑煮とあんころ餅だ。
かなり激しい肉体労働の直後でもあるせいか、そのあんころ餅が異常にウマイのである。
これはもちつき直後にしか食えない、まぼろしの味。
(私が基本的に甘党なのだね)
その夜は、マキ夫妻とともに、近くの田沢温泉に泊まる。
これは上田西郊の青木村にある鄙びた山の湯である。
湯質が良いので、私たちもよく入湯にでかける。
今回泊まった宿が思いのほか良かったので、まあ皆さんのご参考になるかは分からぬが、ご紹介いたそう。
和泉屋という旅館。
今月新館がオープンしたばかりで、とってもきれい。
部屋数が九つしかない小さな宿で、基本的に家族でやっているからアットホームな雰囲気。
ご主人が腕を振るう料理は、土地の素材が中心で、素朴ながら美味しい。(たとえば、信州の温泉宿でマグロの刺身とかエビの天ぷらが出てきたら興醒めじゃない)。和泉屋の魚はぜんぶ鯉。これは佐久鯉だそうだ。鯉というと「!?」と思う人もいるかもしれないが、今回出た鯉の甘露煮なぞ、なかなかの珍味であった。(量が多すぎないのもgood)
それから肝心の湯であるが、内湯も、露天も、家族風呂も、ぜんぶ掛け流し。すなわち循環式ではない。(田沢の旅館はどこも掛け流しのようだ)。二つある家族風呂も無料で利用できる。単純硫黄泉で、とても気持ちいい。
そして驚いたことに全室ADSL装備で、ノートパソコンも貸し出してくれる。自分でパソコンを持参してもOKだ。
これで一泊二食一万円はお値打ちだと思う。
ネットで予約するともっと安くなるみたい。ホームページはこちら。
隣に「有乳湯」という共同浴場があるが、ここもいい。
来年初夏には、ここ月のテーブルで真木千秋が「藍の生葉染ワークショップ」をする予定になっているので、そんな折にでもお泊まりになってみてはいかが?