Project Henchikurin Project Henchikrin BambooHouse" 竹林日誌2003,, BambooHouse Project Henchikurin Project Henchikurin

東京西多摩、秋川の清流を見下ろす崖上
築二百年の農家を舞台に展開する真木テキスタイルスタジオのお話。


10月21日(火) シンプル・ストールと「竹林の秋」

 このたび、「シンプル・ストール」というシリーズが登場。
 名前からして非常にシンプルである。
 「いつでも手軽に使えるストールを」ということで誕生した。
 シルクと麻を使い、秋のこの時期、柔らかくて暖かい。

 サイズは 50 x 170 cm くらい。
 2柄5色が順次お目見えする予定である。
 (上写真で真木千秋着用のものが生成、私ぱるば着用のものがチャコール)
 価格:18,000円。

 織師ワジッドがジャカード(紋織り)機でこつこつ織っている。
 青山店と「竹林の秋」イベントで同時デビューとなる。
 できたてのホヤホヤなので初回ロットは二十枚前後と少ないが、AA7ストールみたいに「幻」とはならないので、ご安心を。

 ところでこの写真、今回送付のDM用にと、急遽スタッフに撮ってもらったのだが、やっぱりイマイチということでボツになってしまった。
 せめてHPで、ということで特別掲載。

***

 さて、あと三日後に迫った竹の家オープンハウス「竹林の秋」。
 準備も着々と進んでいる。
 今日は大家の小峰さんと、近所の娘・大村風生ちゃんが助っ人で参加。

 中写真の風生(ふき)ちゃん、こうしたイベントには私の手下として、かいがいしく働くのである。
 今日はその名のごとく、窓ふき。
 掃除が大好きだそうで、一日中、熱心に窓ガラスを磨いていた。
 おかげでピッカピカ。

 ところで、写真ではよくわからないが、この窓ガラス、横から見ると、波打っているのだ。
 つまり、すごく昔のガラスらしい。
 今どき珍しい。
 まさにガラス版・手紡ぎ手織り。
 「竹の家」来訪の折には、とくとご覧あれ。

 で、私ぱるばは何をやっているかというと…。
 相変わらず、コレである。
 ま、ほかに能もないからね。
 竹を切って、コップにするのだ。
 夜になっても、電灯まで引っぱってきてやっている。

 今年はやめようかと思っていたのだが、「やっぱり紙コップじゃねぇ…」という真木千秋の一言で、この始末である。
 けっこう時間かかんだよ、これ。
 三日かかって、約二百個。
 (じつは私も決して嫌いではないらしい)
 欲しい人には進呈つかまつることになっている。
 ま、多少ナナメに切れてるのもあるんだけどね、その辺はご勘弁のほどを。 



10月23日(木) 「竹林の秋」eve

 
今、竹の家。
 午後、8時35分。
 明日から、一年ぶりの「竹の家オープンハウス・竹林の秋」だ。

 私ぱるばはこんなふうにパソコンに向かっているわけだから、さぞかしヒマなのだろうと、みなさん思われるかもしれない。
 そうじゃないのだ。
 この「竹の家」イベントに限っては、私は多忙なのである。
 ただ、暗くなってしまったから、仕方なくパソコンごっこなわけ。

 ここは女所帯のハーレム状態で、男手は私ひとり。(いや別にそれほどステキな立場じゃない)
 だから外仕事は私ひとりでやるしかないのである。
 竹コップづくりは別として、草刈りから庭の片づけ、樋の掃除から道路工事など、オープンハウスの前には仕事が山積である。
 (普段さぼってるからいけないのであるが)

 右写真は、今から十五分前の様子。
 囲炉裏の端に寄り添うタマタマは、真木千秋のてなぐさみ「オブジェ」。
 この囲炉裏にも、明日の夕方には火が入るであろう。(さきほどちょっと試運転)
 
 その向こうでは、スタッフの太田綾が糸を束ねている。
 インドのモトゥカ絹糸で、一束300円だそうだ。
 「もしかしたら買い占める人がいるかも」、「じゃ、500円にしようか」、「ひとり二つまでにしようか」などという会話が聞こえてくる。
 
 試運転といえば、さきほどは火鉢の試運転も。
 なにしろ火遊びが好きなもんで。
 今回は信州上田の実家から、古い長火鉢を運んできた。
 さきほどそこに炭火を起こして、その上でオーサワ・ジャパンのオーガニック玄米餅を焼き、汁粉に入れて食したのである。
 うまかった。
 これは一杯200円とのこと。
 ちなみにお茶は、私の竹コップつきで無料!

 明日から私は、受付をしながら、火鉢で餅を焼き、二つのかまどでそれぞれ汁粉と茶を保温し、かつ全体を監督するという仕事を遂行するのであるが、果たして無事こなせるであろうかっ!


 
10月26日(日) 「竹林の秋」深し

 10月24、25、26日の三日間、竹の家にて「オープンハウス・竹林の秋」が開かれる。
 お陰様で、まずまずの天気。

 上写真は、本日午前の模様である。
 秋空をバックに、家の前に茂るケヤキの木々。
 風の吹くたびに、黄色くなった枯葉を散らし、秋らしい風情を醸してた。
 冬前にはこの葉が全部落ちてしまうわけだから、掃除もたいへんだ。

 じつは、イベントの初日、庭の片隅に寄せ集めておいた昨年の落ち葉の山に、コムラサキシメジをいくつも発見!(中写真)
 私は狂喜乱舞したのであるが、他のみんなはけっこう冷静、というか冷淡。
 そこで私はひとり淋しく、イベントの合間に味噌汁に入れたりして食したのである。
 なかなか美味であった。
 (私の生存を危ぶむ向きもあったが、もちろん今でも生きている)

 さて、一年ぶりのオープンハウスだったせいか、例年より多数の来訪を頂く。
 二百個ほど用意した竹コップも、三日目の午後にはなくなってしまった。
 
 Silko (しるこ)もなかなかの人気で、連日、三時頃には売り切れる。
 下写真、手前、長火鉢の上で餅を焼く船附クン。

 藍の父であるこの船附クン、じつは昨年、皆に惜しまれつつ、隣町・日の出から、静岡・浜松へと転居したのである。
 しかし「竹の家」イベントと聞くと、じっとしてはいられない。
 このたびは妻子をクニに残し、よっぴいてクルマで駆けつけ、参加したのであった。

 その奥にいる群像は、藍の葉をちぎる人々。
 信州上田で育てた藍草を乾燥し、その葉をちぎって集めているのである。
 左端の白い人物は、千葉から来た寧々ちゃん。(八歳)
 お母さんが展示を見ている間、感心にもこうしてウチの手伝いをしてくれている。
 (おまけに私にアメ玉もくれた) 

 かくしてちぎった藍葉で、いつかスクモを作ろうと企んでいる。
 折も良く、来訪客の中に、簡便なスクモの作り方を知っている人がいた。
 今度、出かけて習ってこようと算段している。

 というわけで、みなさんの愛に支えられつつあゆむ、MAKI TEXTILE STUDIO であった。 

 (ちなみに、三日前掲載↑の太田綾が準備していた糸束は、「ひとつ300円、ひとり二束まで」としたが、一日目で完売だったそう)


10月31日(日) 「百衣展」直前インフォ


 今、午後6:15。Maki 青山店。
 明日からの安藤明子・百衣(ももごろも)展 準備におおわらわである。

 みんな忙しげに立ち働いている中、私ぱるばがヒマにまかせて盗撮した安藤明子作品の一部を、ここにご紹介しよう。

 ←左上写真は、サロンを展示中の明子さん。
 サロンというのは、筒状に縫製したスカート的な衣。
 腰ヒモで留めるのが特長。

 このグレーの作は、新井淳一氏のウール生地を使用したもの。
 二枚重ねのサロンで、内側は薄ベージュの木綿。

 その下にある、ベージュの作は、「袋サロン」。
 写真ではわからないが、三種の布をループ状にハギ合わせてある。
 すなわち、前でも後ろでも、上でも下でも、裏でも表でも、布の引き回し方で、無限のパターンが楽しめる。
 この説明で不明な人は、実物をご覧あれ。
 ↑右上写真は、「ひとつ釦単衣」。すなわちボタンがひとつだけある。
 Maki 布「しゅくしゅく」を、縮絨(しゅくじゅう)させて使用。
 グレーとベージュの二色。
 ←左中写真は「袖通し上衣」。
 すなわち、ソデだけがあって、前はない。
 肩と腕、そして背中の半分を覆う。
 袖を通さないでマフラーとしても。
 Maki 布「バーク」を使用。

 右中写真→は「ナーシ上単衣」
 左の「袖通し上衣」の上から重ねている。
 Maki 布「ナーシ・フローツ」を縮絨させて作った、ベスト的な半袖衣。
 ←左下写真は「襟重ね上単衣」と「腰巻」。
 「襟重ね…」は、ウールとナーシ絹で織ったMaki 布「ウネ」を縮絨させて使用。
 前向きにも後ろ向きにも着られる。
 写真は長袖だが、ほかに七分袖も。
 また、Maki 布「小ギザ」を使った、生地違いバージョンもある。

 「腰巻」もウールとナーシ絹。昨年の蚕衣無縫展のために織った布を使用。
 パンツやサロンの上に重ね、暖かで、お洒落。
 右下写真→
 
上に掛かるのは、「イカコート」。
 使用した生地は、「ウール・ナーシ格子」、すなわち wool x silk。

 下に半分だけ写っているのが、「とんがり型上衣」。
 生地は「モトゥカ・バーク」。すなわち、絹100%。


11月4日(火) 青山ももぐさ紀行

 
今、青山店で展示会中の安藤明子さんには、夫がひとりいる。
 安藤雅信というその夫君、焼物の里・多治見に生まれ育った陶芸家である。
 その雅信氏が今、偶然というか、すぐ近所で展示会をしている。
 Maki青山店
から徒歩十分ほどのギャラリー「桃居」だ。

 雅信氏の器は、つねづね我が家でも愛用している。
 そこで私たちも昨日、雨の中、桃居に駆けつけた。
 皿やカップといった、日用の器がいろいろ並んでいる。
 値段も手頃で求めやすい。

 そのほか、用途不明の箱形物体とか、思わず大空に投擲したくなる円盤とか、雅信氏ならではの作品も。
 用途が不明であるほど、製作に熱が入るらしい。
 この人、陶芸家であるのみならず、彫刻家、現代美術作家、茶人でもあるといった、多才な人なのだ。
 そういえば十有余年前、知り合ったばかりの明子さんを後に残し、インドまでダライラマに会いに行ったという変な人でもある。

 真木千秋はさっそく、皿を二枚買い求める。(写真右)
 (葉っぱはウチの庭前の落葉)
 いつもは白系統の皿を愛用しているのだが、今回は黒褐色。

 更に、店の奥には、用途不明の物体が…。
 立方体の単純な造形に魅入られる真木千秋。
 しかし、すんでのところでその魔力を振り切り、会場を後にするのであった。

 夫婦でほとんど同時・同場所開催だから、セットツアーでやってくるお客さんも多い。
 「雅信さんのところでいろいろ買っちゃったから、もうお金ないわ」とかのたまう憂慮すべきケースも…。
 (ツアーの順序を逆にすべし)

 そういえば、ウチの食器棚にもけっこうたくさんあるのだ。
 様々な焼物作家の秀品が。
 今度、「真木千秋・陶芸展」というのをやろうかと思っている。

 安藤雅信作陶展 11月3日 ― 8日 11:00 ― 19:00
 ギャラリー「桃居」港区西麻布 2-25-13 TEL 03-3797-4494 地図はこちら(ページの下の方)



 12月6日(土) ギッチャ撚糸

 冬のインド行まで、あと一月。
 私ぱるばも昨日、千鳥ヶ淵のインド大使館へ五人分のビザ申請に赴く。
 そして真木香もまた、八ヶ岳の麓から下りてきて、昨晩は当家に宿泊。
 (天気情報によると「東京は一月下旬並の気温」と言われていたが、500m以上も降下してきた真木香、「暖かいね〜」と一言)

 冬の陽光もまぶしい今日の土曜日、朝からリビングのテーブルを窓際に移し、Makiの姉妹がなにやら密談を凝らしている。
 インドから持参してきた糸を見ながら、織りの打ち合わせだ。

Chiaki : この糸、使ってみようと思うんだけど。
Kaori : あっ、これ、ほっそーい! すごいイイね、この細さ。あるかな、これ?
Chiaki : あるよ、聞いてみる。
Kaori : 生地にしたらいいと思うんだけど。毛羽立ちが少ないし。
Chiaki : ストールにもいいかも。きのう恭子ちゃんが言ってた、アレ。
Kaori : ギッチャの代わりに使いたいから、たくさんほしいな。
Chiaki : ギッチャに撚りをかけた糸なのよ。
Kaori : でも普通のギッチャよりずいぶん細いね。
Chiaki : きっと産地が違うのよ。
Kaori : タテ糸にかけられるかもね。
Chiaki : じゃ、今インドに連絡しとくね。(Chiaki、パソコンに移動する) 便利だなー、インターネットって…。でも誰に言ったらいいかなあ…。
Kaori : 最近、ウダイ、やんないしね。
Chiaki : ラムチャンダンだよね、だいたい。ま、ビジェイによく言っとくか …。

 解説:
 ギッチャというのは、タッサーの繭から「ずり出す」ザックリした紡ぎ糸。Makiが好んで使う素材である。
 それに撚りをかけたものが今、話題になっている糸。(写真下)
 二年ほど前からちょぼちょぼと使っていたのだが、その魅力を最近、改めて発見したらしい。
 左様、いつまでたってもインドには未知の素材が眠っているようである。

 下写真、真木香の手の左側にある布が「恭子ちゃんのアレ」。
 こんな感じのカジュアルなストールを作ってみたらという提案があったのだ。

 会話の末尾に現れるインド人名は、ニルー工房に関わる男たち。
 素材を調達するというのが、彼らの重要な仕事のひとつなのだ。
 なにしろ交通・通信といったインフラがまだまだだからね。
 ことに、素材の産地である田舎なんぞは、私たちの想像を絶するものがある。
 果たして、Makiがインドに到着するまでに、このギッチャ撚糸が無事準備されているであろうかっ!?



12月11日(木) 三谷展 eve

 明日から始まる「三谷龍二展」。
 今回で五回目になるようだ。
 さっきみんなで数えてみた。
 「桜の器展」とか、「雑木の器展」とか、いろいろあった。
 三谷氏いわく、「ここでやった回数が一番多い」。

 そう言えば、三谷氏との最初の縁は、今を去る11年前、松本クラフトフェアでのことであった。
 千秋の友人の娘が、三谷氏を父親と間違え、「パパー!」と言って、いきなり氏の脚に抱きついたのである。
 子供慣れしている三谷氏は平然としていたが、子供の方が間違いに気づいてびっくりしていた。

 写真上は二階で展示作業中の三谷氏。
 店はすっかり三谷ワールドと化している。
 全部で109種、数百点が展示される。

 今回のテーマは「白漆」。
 今、三谷氏が一番力を入れている分野だ。
 白といっても、写真中上に見る通り、真っ白ではない。
 白漆というのは漆にチタンを混ぜて作るのだが、漆とはそもそも褐色なので、白褐色とも言える色になるのである。
 ただ漆は年月が経つと透明になってくるので、やがて白味が増し、艶が出てくる。

 今年一年作りためた、白漆の作品である。
 ほかの展示会ではほとんど見せていないというから、請うご期待。
 大小様々の木皿。
 ブラシワークが美しい。

 会場には「プチ・ミュージアム」があり、長年使い込んだ三谷作品などが展示されている。(もちろんウチのもある)
 そこにも解説されている通り、現在の三谷作品は大きく分けて、1.山桜木地(オイル仕上げ)、2.神代ニレ(埋もれ木)、3.黒漆、4.白漆、の四種である。
 色で言うと、1.生成、2.グレー、3.黒、4.白、の四色だ。
 写真中下が、その黒漆と、神代ニレの作品(右側・実物はもっとグレー)。

 神代ニレの産地は、北海道の日高。
 川底に埋まっているのだそうだ。
 千年から七千年前のものだという。
 天然木にない色合いと質感。
 いはば、「神さびた」というか。
 この感じはなかなか写真では伝わらない。

 下写真は、今回の超大作。
 二つながら二階の壁に立てかけてある。
 (三谷氏は彫塑作家でもある)
 真木千秋は密かにこれを狙っているらしい。
 いや、右側の方だが、長さ160cmほどの神代ニレ製大皿。
 ほんと、私も欲しい。
 みなさんユメユメ買わないように。
 (と言いつつ値札はつけてあるのだが…。左側希望の方は応相談)

 三谷氏は、12日(金)、13日(土)、14日(日)の三日間在廊。
 (ついでに真木千秋と私ぱるばもその三日間在廊)


12月26日(金) ミュージアム・ピース

 年の瀬も押し迫った真木テキスタイルスタジオ「竹の家」。
 その一室で黙々と布に向かう人影。
 一年ほど前からスタジオに加わった新人、太田綾だ。
 糸や布をいじるのが大好きな、Maki 最年少スタッフである。
 
 服飾デザインを勉強した太田綾、昨年まではパタンナーとして働いていた。
 その腕を買われて、今日はMaki 衣のパターンおこしだ。
 春物のショート・コート。
 春にさらりと羽織る。
 真木千秋のイメージにできるだけ近づけようと、健気にがんばっている。

 これをスーツケースに忍ばせて太田綾、十日ほど後には、初のインドに旅立つ。
 期待と不安sの交錯する日々。
 デリーの縫製工房には、マスタジと呼ばれる親方職人がいる。
 工房のパターン作成を一手に担っている人だ。
 さてこの一見いたいけな太田綾が、百戦錬磨のマスタジを相手に、いったいどう渡り合うのか!?
 いずれまた恒例のインド絵日記でお伝えすることにしよう。

 ところで、この「ミュージアム・ピース」という布。
 その原型に出会ったのは、今を遡る十年ほど前、南インドの絹都バンガロールにあった小さなミュージアムでのことだった。
 (詳しくは名著174ページ参照)
 その縁もあって、「ミュージアム・ピース」と命名。
 手で引いた生糸と玉糸を使って、オーガンジー風に織り上げている。
 ちなみに、英語でmuseum pieceとは、「傑作」という意味である。

 さて、太田綾の手によって、どんな傑作が誕生するのであろうか。
 三月MAKI青山店にて開催の「春繭の布」展にてお目見え予定。
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