7月1日(火) 「住む」発売!
前々から幾度かお伝えしてきた季刊誌「住む」夏号が、このほど発売になった。
もちろん、皆さん既にお手許にお持ちですね。
えっ、「何のこと?」だって!?
仕方がない、もういっぺんご説明いたそう。
当スタジオに縁の深い塗師・赤木明登氏が、本年初頭、二週間にわたって我がインド工房を訪れ、途中で合流した敏腕フォトグラファー・小泉佳春氏とともに、Maki を密着取材。(その様子は、本HP特別記事
India2003内に散見される)
それがこのたび、数十葉のカラー写真とともに全10ページの記事となって掲載されたのだ。
これは近来稀にみる力作なので、皆さんぜひとも実物をご覧いただきたい。
ま、ついでだ。
ここでひとつ、本記事中に掲載されている写真から一枚選んで、特別に解説をいたそう。
はい、それでは19ページを開いて。
そう、扉の写真。
印象的な職人の群像である。
「せっかくだから、みんなで写真を撮ろう」ということで、工房前に集合。
それぞれ、自分の織った布を持ってきてもらう。
(そのときの撮影風景は
こちら)
最初はみんな直立不動。ここまで和ませるのは大変であった。
後列右から、織師ユスフ。手には細幅のカンテクロスを持っている。アフリカの布に想を得てつくったものだ。
その左に、染師
キシャン。工房の草木染めを一手に引き受けている。首にかけているのはユスフの織ったカンテクロス。
その左。旦那然として笑っているのが、最も古株のひとり、織師イスラムディン。手には新作の「あかね」を持ち、首には「空羽あかね格子」をかけている。
そして真木千秋。首には赤城節糸入り「風花」。
その隣は若手織師の
タヒール。手に持つは、いまや幻の
AA7ストール。まじめくさった顔をしているが、「ホントはもっとかわいい」(千秋)。
その左に古参織師
ワジッド。ジャカード機をあやつり、肩にベッドカバーを載せている。
その左に顔だけ写っているのが、織師グラム。服地に使われる「ちりめん」を織っている。
左端は織師バブー。手にする白い織物は「風花」。
前列右端に名手
シャザッド。「生葉格子」を羽織っている。
その隣に、経糸職人
パシウジャマ。手にするはタヒールの織ったタビー布。カメラを意識してただひとり気取っているのがこの人だ。隣のシャザッドがそれを見て笑っている。
真ん中が長老
ワヒッド。織っている服地が機から外せなかったので、ベッドカバーのサンプルを手に。それを肩越しに覗きこんでいるのが息子のチャンド。
その左に織師ニアズル。小布綴りを織っている。やはり機から外せなかったので、シャザッドの「風花・藍」を持っている。
その左に織師サクール。膝の上には「ウッディ」という交ぜ織り布。23ページ掲載のかわいい糸巻き姉妹の父親だ。
更にその左に、肩先しか写っていないかわいそうな人がいる。そう、織師
ナイームだ。シャザッドやワヒッドと同じくらい重要な職人なのだが、どうも性格が控え目。
その他、傑作写真満載なので、お楽しみに! (私ぱるばも特別出演)
なお、74ページ以降には、さきに
竹の家にて撮影の、「夏の午睡に…」が掲載されている。
「住む」夏号 発売:農文協 1200円
7月3日(木) 明日からisis「更紗展」
三年ぶりの isis (イシス)「更紗展」。
これは私も注目していた。
というのも、サロン、カインパンジャンという更紗布が多数並ぶからだ。
isis の主宰者・石田加奈さん(写真上)は、言うまでもなくインドネシア・ジャワ島西部のチレボンに更紗の工房を持っている。
今日は更紗のブラウスをお召しだ。
こうした更紗布は、そもそも腰に巻く布であった。
私ぱるばは昨日も書いた通り、腰巻のない夏は考えられない。
そもそも私が腰巻というものを初めて身につけたのは、今から二十数年前の1986年、インドネシア・バリ島でのことだった。
みなさんご存じのことと思うが、ジャワ島というのはインドネシアの中心となる島で、首都ジャカルタなどもこの島にある。
対するにバリ島は、イスラム教国インドネシアの中で唯一、ヒンドゥー教の支配的な独自の文化を築いている。
今日、加奈さんに話をうかがうと、ジャワとバリでは腰巻文化も微妙に違うらしい。
バリの場合、短い(長さ2m)のも、長い(2.4m)のも、ともにサロンと呼ぶ。
そしてどちらも縫合せずに、そのまま巻きつける。
ところがジャワの場合、短い方は円筒形に縫合することが多く、これをサロンと呼ぶ。
しかし長い方は、縫合することなくそのまま巻き付け、それをカインパンジャンと呼ぶ。
下写真で私がまとっているのは、三年前に購入した、isis のカインパンジャン。
加奈さんに巻いてもらったものだ。
巻き方は isis オリジナルで、私がバリやインドで習ったものとかなり違っている。
どうです、ちょっと風をはらんだ様、なかなかよいでしょう!?
巻き方は、明日、加奈さんが親しく教えてくれるはず。
(二時からは更紗お話会!)
明日来られない人は、ウチのスタッフがよく学んでおくので、習ってください。
いや、決して難しいものではないのでご安心を。
isis のカインパンジャンは、2.6mと、伝統的なものよりやや長い。
これは日本の場合、腰巻として使うほか、服地やインテリア布として利用することも多いからだという。
イシスの更紗 「チレボンの手描きバティック」展
7月4日(金)〜7月11日(金)11:00-19:00
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7月24日(木) 百草を訪ねる
名古屋にほど近い、美濃・多治見。
ここに「
ギャルリももぐさ」がある。
今日は三人で訪ねる。
今年11月に予定されている「ももぐさ・安藤明子展」の準備だ。
ももぐさでは過去二回、Maki の展示会を開いている。
これは「真木テキスタイル展」というより、「
蚕衣無縫展」という名の Maki+Akiko コラボレーション展であった。
そして今回は Maki 青山店で、初の「安藤明子展」!
真木千秋にとって、安藤明子さんはじつにスペシャルな存在である
ようだ。
造形に天賦の才を見せる。
ちょっと意表を突くようなカタチなのだが、それによって素材としての布の良さが存分に引き出される。
それがまた真木千秋に新鮮な刺激となるのだ。
「明子さんてアヴァンギャルド! 遊ばせてもらってるって感じ」と真木千秋。
今回の展示会のため、
今春のインド滞在の頃から布を織っている。
先日インドから到着したばかりの布を、今日もいくつか持参する。
それを見て、いつしか真木千秋の体に巻きつけている明子さん。(
写真右)
「今度、一緒にインドへ行って、布をつくろうか!」なんて言っている。
それからこれはヒミツなんだけど、今日は新井淳一氏の布も少々持参。
それを明子さんに見せたら、興味津々の様子。
新井氏の布と真木千秋の布を一緒に使って、衣をつくってくれるという。
今秋九月末に予定される「新井淳一展」にお目見えの予定!
今日の「ももぐさ」は常設展示期間なので、静かでいい。
写真中に見えるのは、オーナーである安藤雅信氏の焼き物。
ほかに三谷龍二、赤木明登、mon Sakataなどの作品を常備している。
企画展もいいが、やはりももぐさはゆっくり訪ねたいところ
。
今後、常設も充実させる予定だという。
それから、建築家
中村好文氏のデザインでカフェテラスを新設中。
9月28日にはこけら落としの「つのだたかしコンサート」ということで、これも楽しみだ。
7月29日(月) バロックな繭
八王子の養蚕農家・長田さん来訪。
今日は晶さん、そして幼児二人だ。
夫の誠一さんは草刈りの仕事で忙しいんだと。
今回は玉繭を1キロ持ってきてくれた。
玉繭というのは、二頭以上の蚕がひとつの繭を作ったもの。
普通の繭と比べると、多少大きく、太めで、いびつだ。
ちょうどバロック真珠みたいな感じ。
長田家の場合、100kgの繭の中に、30個ほどの玉繭ができるという。
比率にすると0.1パーセント以下だ。
玉繭からは、真綿が作りやすいのだそうな。
すなわち、繊維にクセがあるので、煮沸して解きほぐすと、ふんわりするのだ。
そうして「真綿帽子」というのを作る。
これは文字通りの帽子ではなく、ベレー帽のように丸くて平べったい真綿だ。
その真綿帽子から、紬糸(つむぎいと)を引き出す。
(写真左下にある白い糸カセが、真綿帽子から引いた紬糸)
晶さん、今日は自家製の真綿帽子をいくつか持ってきてくれた。
じつは私ぱるば、昨日坊主刈りにして頭が少々淋しく、帽子が欲しいと思っていたところ。
そこにこの真綿帽子!
帽子でないことは重々承知していたが、誘惑には抗いがたく、さっそく被ってみる。
う〜ん、頭に吸い付くようで、まっこと具合がいい。
そして驚くべき軽さ。
およそ世に帽子と名のつくもので、こんなに軽いものもまたとはあるまい。
(量産して青山で売ろっかな♪)
この帽子は玉繭三つから作ったものだそうだ。
青い色をしているのは、藍の生葉で染めたから。
長田家では藍草も育てていて、一昨日、生葉染めをしたのだという。
玉繭の利用法は、このように真綿帽子から紬糸をつくるほか、繭から直接、糸を引く仕方もある。
すなわち玉糸だ。
Maki がよく用いるインドの「デュピオン糸」もそうした玉糸である。
繊維が不均一なので、生糸を引くような具合にはうまくいかないらしい。
節のある、いかにもMaki 好みの糸だ。
かつては屑繭扱いされた玉繭だが、今では染織家の間で珍重されている。
さて、1Kgの玉繭、どうやって使うか!?
(やっぱ帽子かな♪)
8月5日(火) 藍の生葉染
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盛夏恒例、藍の生葉染。
なかなか盛夏にならなくて困ったが、やっと今日、実施!
今年の藍は、ちょっとスペシャルである。
というのも、自家製の種をまいて、自家の畑で丹誠こめて育てたから。
養沢のアトリエ近くにある畑に、今年四月蒔いた藍草が、ほれこの通り!
真木千秋と私ぱるばの二人で、汗をふきふき刈り取る。
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刈り取った藍を軽トラに積み込み、6km下流にある「竹の家」スタジオへと、いざ出発!
左写真は、本邦初公開の真木テキスタイル Official
Car「スズキ・キャリイ」
どう見たって田舎のおじさん・おばさんだよな〜。
でも、なかなか良いのだ、これが。
青山でギャラリーオーナーやってるよか、性に合ってるみたい。
十年たったら、たぶん毎日コレだろうな♪
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「竹の家」では、一家総出の作業。
まずは藍草から葉をちぎる。
「藍」の成分は葉に含まれているからだ。
フレッシュなうちにやらないとね。
小学五年のみなみちゃんも、お母さんのお手伝いで飛び入り参加。(みなみちゃんの右側が、お母さんのほなみちゃん)
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その間、真木千秋は糸の準備。
生葉で染めて、それを来月インドに持参し、ストールの中に織り込むのだ。
今日これから染めるのは、Makiの春繭、赤城の節糸、上州座繰り糸、苧麻糸、マルダシルク等々。
「今日はエメラルドブルーに染めたいな」と真木千秋。
生葉の出す色は、淡い藍色。
少し緑がかったブルーが欲しいらしい。
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ちぎった葉っぱをミキサーにかけ、晒しの綿布に包み取り、染液を搾りだす。
いつのまにか私も搾り役に仕立て上げられる。
濃厚な液体で、けっこう大変な作業なのだ。
エイヤッと気合いを入れ、渾身の力で絞る。
するとそばから真木千秋が、「もっと手早く」とか、「手を下げて空気に触れさせないように」とか、「かけ声がうるさい」とか、注文をつける。
自分のほうがよほどうるさいと思うのだが、ま、これもエメラルドブルーを求めてのことだろうから、しばし我慢してやろう。
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求める色を出すために、いろいろ試行錯誤を重ねる。
水の量、葉の量を変えてみたり。
ミキサーの作動時間を変えてみたり。
染液に漬ける時間を変えてみたり。
染め重ねてみたり。
天候もかなり影響するのではないかと…
「晴天の日に染めると色が美しい」という考えから、梅雨明けを選んで作業をする。
ところが今日、朝のうちは晴れていたが、だんだん雲行きがおかしくなり、午後にはついに雨も降り出す。
しかし染め色は、それほど変わらない。
というか、かえって美しかったりもする。
どなたか、藍の生葉染めと天候の関係を教えてはくれまいか。
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糸の種類によっても、染め色は変わってくる。
また、藍草の出来によっても、染め色は変わるのであろう。
一昨年は緑がかったブルーに染まった。
昨年は青味が強かった。
そして今年は、一昨年と似たような色が出た。
しかし、エメラルドブルーを出す秘法というのは、結局わからずじまいだった。
二週間ほどしたら信州上田月のテーブルにてまた実施するので、そのときに引き続き研究しよう。
ちなみに今日いちばん濃く染まったのは、我々の指の爪。
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8月12日(火) 「新井淳一」展の準備
台風一過の晴天も束の間、また梅雨みたいな日々である。
竹の家では、来月下旬に迫った「新井淳一」展の準備に余念がない。
上州桐生の新井宅には、今春以降、もう五度もお邪魔しただろうか。
先週の土曜にも台風をついて行ってきた。
最近は伺うごとに、ワゴン車いっぱい、新井さんの布を積んで帰る。
その数八十種以上にのぼるだろう。
もともと機屋だった新井さんの屋敷は、かなり大きい。
中に入ると布また布。
新井さんのクリエーションの軌跡が山をなす。
真木千秋にとっては宝の山だ。
その中から、今回の展示会にふさわしい布を携え帰る。
右写真は、最近の「竹の家」風景。
奥に立てかけられているのが、そうした反物の一部だ。
その反物に仕上げを施すのが、Maki の仕事。
中には生機(きばた)のものもある。機から下ろしたての反物だ。
どう料理するかで、表情がぜんぜん違ってくる。
断ったり、切ったり、抜いたり、洗ったり、熱を加えたり…
様々に試行錯誤を重ねる。
そうして、ストールとか、衣とか、いろいろできあがる。
単にカタチを与えるだけではなく、風合いをつくっていく。
楽しく、勉強になる作業だ。
さて、新井さんの布から、どんなものが現れるか!?
本HP上でおいおいご紹介するので、お楽しみに。
8月31日(日) 藍染 in 信州
信州・上田に行ってきた。
私ぱるばの実家である。
一昨日の29日、束の間の夏空の下、藍の生葉染をやった。
「さわやか信州」と言われるが、真夏の日中はしっかり30度を越える。
しかし、湿度が低いし、朝夕は気温が下がるので、「さわやか」なのである。
今年四月、父親の 田中一夫が蒔いた藍草が、青々と育った。
(堆肥が効いたのか、ちょっと育ちすぎかも)
二十坪ほどもある。
朝五時半に起きての作業であった。
基本的には、インドへ持参するための糸染めだ。
それと平行して、「生葉染めワークショップ」を実施。
「 月のテーブル」のお客さん二十人ほどに、生葉染めを体験してもらう。
玉糸を使ったシルクの生地を染めてもらった。
ケーブルテレビの取材なども入って、たいそうにぎやかだった。
写真上は、葉っぱを摘み取る作業。
この田舎家には木や竹でできた古い道具がいろいろある。
桶とか、籠とか、たらいとか、ひしゃくとか。
それが藍の葉にマッチして美しい。
いずれも数十年使わずにしまってあったものだが、道具たち、みんな平気な顔をして立派に役立っている。
写真下の中央にある、しもぶくれの大籠。
おそらく桑を収穫するときに使ったものだろうが、中に古新聞が敷いてあった。
「満州の開発権、陸相に」とかいう見出しがあるから、よく見たら、昭和8年8月31日の「信濃毎日新聞」だった。
奇しくもちょうど70年前の今日。
その頃はこの国に陸軍大臣なる人がいて、満州なる「國」の実権を握ろうとしていたらしい。
さて、この日のために、竹の家からスタッフが二名同道。
ムラウチ電気でミキサーも一台新調。
その甲斐あってか、前回(8月5日)より、満足する色が出たようだ。
じつは今回、ちょっと工夫をしたのだ。
ミキサーに入れる葉の量を少なめにして、撹拌時間を短縮させた。
それによって色がより鮮やかになったのではないか。
だいぶ染めたのであるが、それでも畑の藍草の二割も使っていないだろう。
余った分は乾燥させて、いずれスクモ作りに挑戦するとのことである。(真木千秋いわく)
写真下は、使わなかった葉を蔵の二階に広げたところ。
ところで、わが父親・田中一夫よりのお知らせ。
今年はブドウのできがよろしいので、当HP読者のために、巨峰をインターネット特別価格でご提供とのこと。
興味のある人は、こちらを参照。
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9月5日(金) 繊維工業試験場 in 桐生
群馬県の桐生には、県の繊維工業試験場がある。
今日は一族郎党四人で、そこへ行ってきた。
今月下旬に迫った「新井淳一展」に向けての染色作業だ。
広々とした試験場の一画に、染色棟がある。
中に入ると、見たこともないような様々な染色機器がズラリ。
これこそ現代の「繊維工業」なのだなあと感心。
化学染料を使って、一度に多量の布を染めることができる。
もちろん、布を染めるのは染色工場に頼んでもいいのだが、試験場の設備を使って自分で染めるほうが、自由に細かな作業ができる。
新井さんと試験場とは、かれこれ四十年以上のつきあいだという。
そうした中から、一世を風靡した様々な布が生まれてきたのだ。
新井さんの指導により、若者たちが作業にかかる。
上写真の右奥、太田綾の覗いているのが、自動式の染色機。
中で布がクルクルと巻かれて、染められていく。
真ん中にある大きな機械は、タンブラーといって、これもまた染色機。
中でドラムが回転し、布を染め上げる。
ただ今日は、これを使って、布を縮絨(しゅくじゅう)させる。
こうした自動機を使う一方、片隅の水槽を使って、手染めもする。
写真中では、新井さんが自ら染めている。
朝の十時過ぎから、夕方五時の閉門時間まで、ずっとこうした作業だ。
ウチのスタッフも、残暑の中、おにぎり二個と水だけで、よく働くこと!
(ことに若松ゆりえは燃費が良いことで有名)
染めるのも大変だが、乾かすのは更に大変。
というのも、これはお天気次第だからだ。
特別な乾燥設備がないので、新井家から物干しスタンドを持参し、染色棟の傍らで布を干す。
幸い、今日は晴れ上がったのみならず、今夏一番の低湿度だったという。
ときおり、乾いた風が布を巻き上げる。
(そういえば、上州名物はカカア天下とカラっ風であったな)
新井氏、黒く染めて縮絨させた布を手にしながら、満足げな様子;
Arai「よくできたねえ!」
Parva (黙ってうなずく)
Arai「これは織りっぱなしで、今まで置いといたんだよ」
Parva「いつごろ織ったんですか?」
Arai「二十五年くらい前かな」
Parva「どんな糸で…?」
Arai「この部分が縮むタテ糸と縮まないヨコ糸、こっちの部分が縮むヨコ糸と縮まないタテ糸だね」
Parva「それで、何に使うんですか?」
Arai「何に使うんだろうねえ…。帯に短しタスキに長しで…」
というわけで、どなたかこの布を、帯かタスキに使ってはくれまいか!?
新井淳一展は9月23日から10月2日まで、真木テキスタイルスタジオ青山店にて。
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9月20日(土) 魔法遣いと魔女っこたち
雨模様のウィークエンド。
竹の家ではスタッフ総出で、忙しく立ち働いている。
土日返上で展示会準備とは、Maki 始まって以来の椿事である。
八ヶ岳山麓に隠居したはずの妹真木香も、ここ数日アトリエ泊まり込みで参加。
真木千秋にとっては強力な助っ人だ。
バスケタリー作家である母親真木雅子も、今日はおっとり刀(いや、オフロード4WD)で駆けつける。
布ディスプレー用のオブジェを、籐蔓で製作だ。
ここ二月ほど、竹の家はまるで、新井布の仕上げ工場のような様相を呈している。
なんとなく非日常の世界。
桐生から次々に運び込まれる布々に、Makiの女たちの「魔手」が伸びる。
それはさながら、布づくりのmagician 新井淳一と、布づかいのwitches 真木一族の織りなす、真夏の饗宴のごとくであった。
新井氏は今回の展示会について、「日替わりメニューみたいに、いつ来ても楽しめるようにしたいね」とのたまう。
そんなご冗談を…とか思っていたのだが、なんとなく、そうなりそうな雰囲気。
というのも、桐生のお屋敷から、今になっても布が届くからだ。
さきおとといも、真木姉妹ともども新井邸に赴いた。
打ち合わせのためだったのに、帰りにはやっぱりワゴン車に布が山積み…。
(まっこと懲りない面々である)
更に昨日も二箱ばかり、桐生から荷が届く。
なにしろ尽きせぬ「宝庫」だからね、これがいつまで続くかわからない。
いくら魔女とて、そんなに手早くは仕上げできない。
いきおい、展示会と同時並行での作業となる。
それで、いやでも日替わりメニューになってしまうわけ。
新井邸を訪ねるたびに、真木千秋は仕上がった布を携えていく。
「先生、どうですか」と言って手渡すと、「ほー、こんなふうになったんだ」と嬉しそうな笑みを浮かべる新井氏。そして傍らに添うリコ夫人の首にそっと掛けてやる。
そんな顔が見たくて真木千秋、仕上げ作業にいっそう熱が入る。
Maki 布を仕上げて十数年、その間つちかった、技術的・人的リソースを総動員だ。
現在、Maki魔女の数、約七名。
夕食も忘れ、布と戯れている。
かくしてワルプルギスの夜は更ける…
下写真は、昨日の前庭の様子。
九月に入ってずーっと晴天だったので、布の仕上げには大いに助かった。
ほんとはそうしてできた作の数々を、「仕上げ前」「仕上げ後」の写真ともども、本ページでご紹介する心づもりだったんだが…。しそびれた。
青山にて実物をご覧あれ。 |
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9月22日(月) 青山夜話
明日は休みなんだそうだ。
ぜんぜん気づかなかった。
そういえば秋分であったな。
道理で日が短くなったと思った。
今、Maki 青山店。午後の十時。
さきほど、新井淳一展の飾り付けを終えたところ。
スタッフもみな帰し、真木千秋がひとりで最後の手直しをしている。
「ああ疲れた、早く帰ろう」と口では言いつつ、なかなか手が止まらないのが、この人の困ったところだ。
静かに更けゆく都会の夜。
(歩いて飯を食いに行けるのが便利♪)
昨夜の五日市「竹の家」。
台風がらみの雨の中、赤帽「倉島運送」の2トン車に荷を積み込む。
展示会に2トン車ってのも珍しい。
すっかりお馴染みの赤帽・倉島氏であるが、その量の多さに「引っ越しですか?」といぶかる。
(さすがに「夜逃げですか?」とは言われなかった)
夜来の雨も上がった朝の十時、その2トン車が青山に到着。
総勢八名のMaki スタッフが、よってたかって、てきぱきと、布の展示作業にとりかかる。
その数、布の種類にして百数十種、点数にして数百点。
(いや、別に2トンはない)
上写真は、それでもかなり片づいた午後四時過ぎの様子である。
右端には桐生から到着した新井氏の姿。
今日明日と、リコ夫人ともども、近くのホテルに投宿。
私ぱるばはほとんど展示の役に立たないので、外に遊び場を見つける。
すなわち、布のデコレーションだ。
お隣のカーポートの屋根にのっかって、布を結びつけている(写真下)。
ほんとは三階から布を垂らしたかったのだが、ヒトの事務所でもあるので、やめといた。
さ、これで準備万端あい整った。
あとは明日の開場を待つばかり。
あっ、それから、28日(日曜日)のオークションであるが、お話会に続いて、午後四時頃からに変更。
ふるってご参加を!
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9月27日(土) 途中経過
新井淳一展が始まって、今日で五日目。
毎日たくさんの人々に来ていただき、へいぜい閑古鳥の鳴いている当スタジオにとっては有難い限りである。
(昨9月26日の朝日新聞夕刊には、当展示会のことがカラー写真入りで紹介される ― 東日本版)
真木千秋もほとんど毎日青山に出かけ、帰ってくると自宅で夜更けまで布の仕上げだ。
切ったり、洗ったり、乾かしたり…
おかげで私など、風呂に入るのもままならぬ状態だ。
(風呂場が乾燥室になっているのである→
右写真は今朝の様子)
真木千秋ばかりではない。
大先生の新井氏もまた、昨日はゆっくり桐生の自宅で静養かと思いきや、布を染めていたんだそうだ。
更に今朝は、
オークション用にネックレスをふたつ手作りしたのだと。
これから、それらを抱えて東武特急に乗り、青山まで駆けつけるとのこと。
真木千秋は浅草駅まで出迎えに行き、今日は大先生の荷物持ちだ。
明日のオークションはいったいどうなるのであろうかっ!?
(半分冗談なのだが、かなり本気)
(ネットオークションだと思っている人がいるけど、
青山店でやる
本物のオークションなのだ)
ところで、青山まで出てくると、みなさんけっこう腹が減るよね。
あるのだよ、いいレストランが。
忙しくて今日は紹介できないんだけど…。
料理も雰囲気もexcellent で、値段もリーズナブル (千円もあれば満腹)、しかもいつも開いている(日曜以外)。
場所を知りたい人は、私か店スタッフに聞いてください。
竹林日誌2003春/2002後半/2002前半/2001/1999-2000/竹林日誌「建設篇」/ホームページ