いといと雑記帳  2007後半

07前半/06後半/06前半/05後半/05前半/04後半/04前半/03後半/03前半/02後半/02前半/99/98/97/96

 
8月7日(火) おススメ舞踊

 なにやらハーレムチックなこの写真。
 場所は三日前、福生・七夕祭りの会場。
 福生(ふっさ)というのは当地あきる野市の隣町だ。
 マニプリ舞踊のステージがあったので観に行ったと。
 6月24日の日誌でも触れたが、マニプリとはインド東部マニプール州に伝わる伝統舞踊だ。
 四人の群舞であったが、主役ラーダが左端の浅見佐和子さん、私の右が相手役クリシュナのめぐみさん。
 佐和子さんの主宰するニーラ・カマラというマニプリ舞踊のグループだ。

 そもそもこのラーダとクリシュナの出会いは今年の五月、竹林Shopのことだった。
 たまたまShopに来合わせた二人を引き合わせたところ、めぐみさんが佐和子さんからマニプリ舞踊を習い始めたというわけ。
 だから私としてもこのグループのことが大いに気にかかるのである。

 フラやバリ舞踊などとは違って、まだ日本ではほとんど紹介されていないこの踊り。
 数あるインド舞踊の中でも最も東に位置するものだけに、動きも柔らかく、日本人向けと言えるだろう。
 それとともにインド舞踊独特の精神性、神秘性も併せ持っている。
 インド風衣裳もエキゾチックで美しい。
 もっと踊り手が増えたらきっと楽しいと思う。
 日本では現在、佐和子さんを含め2〜3人しか教える人はいないようだ。
 何か踊りを始めたいと思っている首都圏の諸姉諸嬢、習うなら生徒の少ない今がチャンス!! 
 インド・タゴール自由大学で学んだ佐和子さんが、手取り足取り指導してくれるだろう。(諸兄を受け入れるかは不明)
 毎週水曜に福生で、日曜に三鷹でクラスがある。
 今秋・代々木のナマステ・インディアで披露するという話も。
fussa_manipuri@yahoo.co.jpまで。

9月7日(金) 台風9号

 台風が来た。
 こういう大自然系イベントは、わりあい好きである。
 特に今回は首都圏直撃。
 それも進路がちょっと怪しい。
 ウチの真上に来るかもしれない。
 これは滅多にないチャンスだ。
 なんでも、台風の目に入ると、今までの嵐はピタッと止み、青空や星々が望めるらしい。
 そこで朝の3時前に起き出して、様子を見る。
 NHKは夜っぴいて気象情報を流し、気象庁のHPでは一時間ごとの位置を確定している。
 そうした情報を総合すると、強い台風9号の中心は午前3時40分頃、ウチの8kmほど東側を通過したことになる。

 ま、台風は巨大な現象であり、こうした位置情報は一応の目安だ。
 目は直径数十kmあるから、ここ「あきる野市」は明け方、台風の目の中にあったことになる。
 ホントに真上を通過してったわけだ。
 外に出ると、確かに風雨は止み、傘もいらなかった。
 手許の簡易気圧計の数値も急落し、970台を示している。
 しかし残念ながら星空は望めなかった。
 衛星写真の画像では、目は厚く曇っていた。

 夜が明けて、今朝の秋川は見ものだった。
 今まで見たこともないような大量の濁流。
 地元のおじさんによると、数十年に一度の出水だという。
 前回の出水では「竹林」の下の住宅街が床上浸水し、それで現在の堤防が築かれた。
 その堤防がなかったら今回も浸水していたかもしれない。

 上写真はその堤防の階段を下がって撮った秋川の流れ。左上に見える橋は、みなさんが武蔵五日市駅から竹林に来る際に渡るもの。(駅は右方向)
 ゴウゴウたる流れで、ときどきしぶきが飛んでくる。
 これでも昨夜から比べると、1mほど水は引いたんだそうだ。
 残念!
 台風の襲来があと12時間ずれていれば、もっと迫力の画像をお見せできたのに。
 ただ最近は気候がおかしいから、また近々こういうことがあるかもしれない。
 下写真は濁流を前に(呆然と)立ちつくすマガモ。


9月9日(日) 秋の味覚

 台風一過で盛夏のような陽気であるが、日足や草木に秋の訪れを感じる今日このごろ。
 今朝は栗拾いをした。
 拙宅の前に栗の木が二本ほどあり、秋になると栗が成るのである。
 ウチの木ではないのだが、地主が不在なので毎年失敬している。
 そのまま放置しても虫に食われるだけだし。

 この栗を使って、当スタジオでは菓子を作るのだ。
 名づけて、栗ハルワ。
 インドにガジャハルワというデザートがある。
 ニンジン(ガジャ)とミルクから作る香ばしい菓子だ。
 そのニンジンの代わりに栗を使うのが、栗ハルワ。
 インドに栗はないから、これは当スタジオのオリジナルである。
 失敬した栗だけじゃ足りないから、大家の小峰さんにもお願いする。
 小峰家には栗畑があるので、快く分けてくれるのだ。
 この栗ハルワがなかなかいける。
 マロングラッセに匹敵…(と自画自賛)。
 今月22日開始の「グドリ展」あたりから登場するので、お試しあれ。

 写真の右上はオクラで、これも今日の収穫。
 今年はオクラの当たり年みたいで、たくさんできる。
 我が実家の信州上田からも盛んに送られてくる。
 インド料理には欠かせない栄養野菜で、オクラカレーは私の好物料理だ。
 竹林カフェでもふんだんに供されるので、こちらもお試しを!


9月16日(日) 夜遊び

 昨日、ウチのパートタイムHさんの舅(しゅうと)、Gさんが弊店に見えた。もう八十になろうかという齢であるがなかなかに艶っぽく、ウチの女性スタッフにも人気のおじいさんである。
 インドランチを召し上がった後、カフェでいろいろおしゃべりする。その中に、「夜遊び」の話があった。我々の知る夜遊びとはちょっと違った趣のものだ。まあ皆さんにはぜんぜん関係ない話ではあるが、民俗学的にいささか興味をそそられるので、書き留めておこう。

 Gさんは戦争末期、16の歳で海軍航空隊に志願し、熊本の基地に配属される。間もなく終戦を迎え、無事、故郷の五日市に戻る。そこからGさんの夜遊びが始まる。
 夜になると、男友達と連れ立って出かけるのだ。行く先は年頃の娘の居る家庭。時刻は夕食後のひとときだ。夏はなかなか日も暮れぬので都合が悪い。冬場がその主舞台となるのであった。
 娘の家を訪ね、コタツを囲んでお話をする。初めのうちは親たちも同席しているが、早くいなくなんないかな〜と若人たちは心に念じている。娘の男兄弟も居合わせたりするが所詮はお邪魔虫、そのうちつまらなくなって消え去る。かくして娘と若衆は夜もすがら語り合うのである。ハシッコイ手合いはその先まで行くこともあったようだが、たいがいはお話までだったらしい。
 あまり大勢で押しかけても迷惑だから、せいぜい2〜3人。相手を見定めると、ひとりで通った。
 当然のことながら、器量好しで気立ても良ければ競争率も高い。あまり若衆が通ってこないようだと、親たちも娘の行く末を案じるのであった。
 交通手段の乏しかった昔の田舎では、こうして若い男女は睦み合い、相手を見つけたわけだ。この「夜遊び」は男女とも結婚をもって終了する。

 Gさんもいろんな家に出かけたようだ。竹林の下にMちゃんという幼馴染みが住んでいて「いずれはこの娘と一緒になるのかなあ」とGさんも子供心に思っていた。しかし、長ずるにつれ娘のもとをいろんな若衆が訪ねるようになって、だんだん互いに疎遠になり、そのうちどっかに片付いてしまったそうだ。
 五日市街道ぞいにK商店という雑貨屋があり、Gさんの友人と知り合い筋だった。その家にはSちゃんという娘がいて、Gさんも友人とともに通い始めるのだった。最初は店先でいろいろお話しし、何度か通ううちに親しくなって、じゃ奥へということでコタツを囲むことになる。Gさん、この娘のことを好きになるが、娘の方はあまり愛想もない。それでGさんもこれは望み薄だなあと思っていた。
 そのうちSさんの親も、そろそろ娘も嫁ぎ時だということで、心当たりの若衆の名を何人か娘に告げる。しかし娘はなかなか首を縦に振らない。そのうち思い出したようにGさんの名前を出すと、娘はこっくり頷くのであった。それを伝え聞いたGさん、びっくりするとともに大いに喜ぶ。
 かくして二人はめでたく結ばれたのであった。

 その昔、おそらく明治期あたりまでは夜這いが行われていたと想像されるが、この「夜遊び」はその名残なのであろう。
 今を遡る六十年ほど前、昭和二十年代の話。
 そのSさんも先年、Gさんを残して先発ったのであった。

 そういえば最近、竹林カフェには若いカップルの来訪も多く、隠れたデートスポットと化しつつある。
 それもけっこう。どんどん利用していただきたい。


9月23日(日) 雨天のチャパティ

 グドリ展の二日目。
 昨日は33℃の真夏日、今日は一転して雨模様で、どうもスカッとした秋晴れに恵まれない。
 それでも諸方からお客さんが訪ねてくださり、有難き次第である。
 10月1日までの10日間、カフェも無休で営業している。
 基本的に金土日はタンドール(炭火竈)に点火して、ローティなどを焼く。
 ただ、今日みたいな雨の日にはタンドールはお休み。
 その代わり、小さなコンロを使ってチャパティを焼く。
 ローティもチャパティも円形をした薄いインドのパンであるが、当カフェでは便宜的に、タンドールで焼くのをローティ、コンロで手焼きするのをチャパティと呼んでいる。

 今日はお客さんも多かったので、写真の通り真木千秋も加わり、二人がかりでせっせとチャパティ焼きに励んだ。
 炭火を使う土竈タンドールよりも時間がかかる。
 北インドの家庭では主婦が毎日このようにチャパティを焼くのである。
 ローティがレストランの味だとすると、このチャパティは家庭の味だ。
 熱いうちに食べると香ばしくて美味しい。

 このチャパティ、コツさえ覚えれば、日本の家庭でもわりあい手軽に作ることができる。
 現在、毎月一度、ここ竹林でチャパティ教室を開催している。
 次回は10月11日(木) 15:00〜17:00 (材料費込み3500円) 
 チャパティのほか、簡単なサブジ(野菜料理)のレシピも伝授。

 ふっくらチャパティとサブジがあれば、ちょっとしたインド風食卓になる。
 042-595-1534あるいは
par812@itoito.jpまでメールのこと。

10月24日(水) カフェの模様替え 
by まきちあき

 今まで大きなテーブルでみなさんにご相席で食べていただいていたけれど、ちょっと気分を変えて、小さなテーブルでグループごとに食べていただけるようにしたらどうかな?と思って探していたら、出会ったのが、西荻窪のぶあいそうという骨董屋さん。
 初めて店に着いたその時から、「これはいいな」と思いました。
 「ここで何か見つけたい」と思ったので、いろいろ見せてもらったあとに、ぶあいそうのオリジナルのスツール12脚と、ちょうどそこにあった古い板に鉄の脚をつけてもらうことにしました。
 それから、細長い机と四角い机が2つ、合計3テーブルと、インドネシアの木のベンチ。
 写真でご覧いただけるかと思います。

 カウンターとテラスは今まで通り、Maki布の椅子やインドのムラ(網の腰かけ)で座っていただけるようになっています。
 
もっと自然を味わいたければ木の下の切り株の椅子もあります。
 またカフェに小さな棚に設置して、Shop取り扱いの本を置きました。お好きに読んでいただけます。
 その日の気分でお好きなところに座ってください。




10月28日(日) タンドール・ロール

 今週末からのオープンハウスに向け、今日はタンドール・ロールのシミュレーション。
 きっかけは先日、ラケッシュ君がスタッフのために余り物でこしらえたことから。
 好評だったので、じゃ、イベントで作ろうか、ということになる。

 まず、タンドール(炭火竈)で円形のナンを焼く。
 そこに、サブジ(野菜カレー)を載せて、ロールするのだ。
 アツアツのところを紙の袋に入れ、クレープみたいに囓る。
 フォークやスプーンを使わないワイルドな食べ方が新鮮。
 今日はナスと蓮根のサブジだったが、ミントチャツネを添えるといっそう美味。
 
 タンドールで焼くインドパンには、ナンとローティがある。
 ナンは精白小麦粉で、ローティは全粒粉。
 ローティで試してみると、特有の香ばしさと、甘みが感じられる。
 ナンの方が弾力があり、クセもないので、ロール向きであろう。

 本場インドにもカティ・ロールという同種の料理がある。
 ただ、タンドールは使わず、ナン生地をもっと薄くして鉄板で焼く。
 そのほうが巻きやすいからだ。
 タンドールのナンを使うロールは、だから竹林オリジナル。
 11月3、4、5日に供する予定。

10月31日(水) オーニング

 オーニングというのは、布製の日よけ雨よけのこと。
 最近は商店や住宅の軒先でよく見かける。
 イタリア発祥とのことで、開閉も自由。
 そういう地中海っぽいのが、昨日、竹林Shopについた。

 今まで雨天に際しては、テラスが雨ざらしで皆さんにはご不便をおかけしてきた。
 しかしながら、屋根をつけたら、テラスの開放性が損なわれてしまう。
 そこでたどりついたのが、このオーニング。
 普段は軒下で丸くなっているが、雨が降り出したらボタンひとつで自動的にテラスを蔽ってくれる。
 これは便利♪
(値も張ったが :_;)

 写真はオーニング会社の人に説明を受けているスタッフ一同。(右端は私ではなくて職人さん)
 これが全開の状態だ。
 操作はいたって簡単。
 これなら少々の雨でも大丈夫。
 そぼ降る雨の音をBGMにテラスで食事なんてのもすこぶる可能である。
 明日は雨模様だから、楽しみなことだ。
 ただし、台風には負けるから、そのときには出さない。(誰も来ないか…)

 というわけで、先日の模様替えも同様、ささやかながら進歩を遂げている竹林Shopである。


11月8日(木) ディワリ前夜

 ディワリというのは、インドで一番大きな祝日。言うなれば正月だ。
 太陽暦では一定しないが、毎年10月下旬から11月上旬の間にある。
 この時期は私たちにとって一番忙しいシーズンなので、まだ一度も現地で出くわしたことがない。
 なんでも明日から数日間にわたって祝われる。だから今日は大晦日のようなものだ。

 デリーのラケッシュ家も今日はにぎやかだ。
 嫁に行った娘たちが両親にお菓子を届けにやって来る。
 インドではおせち料理より、お菓子で盛り上がるらしい。
 ラケッシュ君はお菓子を届けるわけにはいかないので、スカイプでご挨拶だ。
 スカイプというのはインターネット経由のテレビ電話。無料だからいくらでもおしゃべりできる。

 おしゃべりついでに、インド装飾品の付け方を教えてもらう。
 上写真・画面の向こうには、ラケッシュ君の縁者、合わせて4人。
 向かって左から、去年結婚したばかりの妹サビータ、従妹のミニー、末妹スープリヤ、次姉サンギータ。う〜ん、けっこう美形揃い。
 画面の上、フレーム上の小さな黒点がビデオカメラで、向こうの人々にもこちらの様子がライブで見える。
 ヒンディー語で、ああでもない、こうでもないと、ワイワイガヤガヤ。
 画面の向こうはインドの家庭。
 ちょっと前では考えられないような光景だ。
 そのほか、サリーの着方など、スペシャル指導がいろいろある。いずれオープンハウスなどの機会にライブ中継しようかと思う。

 さて、明日は竹林カフェでもディワリご飯を出す予定だ。
 ラケッシュ家のディワリご飯は、豆入りのプーリー(揚げパン)。
 これは彼の両親の出身地・ウッタランチャル州(ヒマラヤの麓)に伝わるものだ。
 実はラケッシュ君、自分ではそれを作ったことがない。
 それでお母さんからレシピの伝授を受ける。
 下写真、濃緑のサリーを着ているのがお母さんだ。ラケッシュ君、せっせとノートを取る。
 さて、うまくできるであろうか。
 プーリーは先日の竹林1周年のときも登場したが、揚げたては実にウマかった。
 明日は豆入り。請うご期待!!
 (と言ってももう夜の11時半だし、これを見て来る人もあまりいないと思うが…)


12月7日(金) 火遊びの季節

 12月に入ってこのところ晴天続き。
 朝方には氷の張る寒さだが、日中はまことに心地よい。
 空気も乾燥しきっているから、焚き火には好適だ。
 そこで連日、カマドに火を入れ、草木染め。
 写真は昨日の様子。

 左端で服部謙二郎が栗のイガを使って染めている。
 イガは近所から拾ってきたものだ。
 きれいな茶色が染まる。
 手前では私ぱるばが薪割り。
 これも近所でもらった杉の端材。
 杉は火持ちが悪く、その上パチパチ跳ねるので、屋外で焚くのがいちばん良い。

 そもそも六百坪から敷地があると、燃料には事欠かない。
 枯れ枝とか、剪定屑とか、枯れた竹とか。
 こうしたものは、そのまま放置すると、やがて菌類や微生物によって分解され、水と二酸化炭素になる。
 だからそれを燃料として使えば、CO2発生に関する限り、かなりエコなわけである。

 ま、なにより火遊びは楽しい。
 庭も片付くし。
 ご近所はちょっと煙たいかもしれないが。


12月10日(月) インド藍粉

 かつて世界の藍マーケットに君臨したインド藍も、今は昔日の面影はまったくない。合成藍にその座をすっかり明け渡し、製藍業者も広いインド亜大陸にわずか三軒という状況であるようだ。
 昨年の今ごろ、南インドに一軒、昔ながらの製藍業者を捜し当て、訪ねてみる。そのときの様子はこちらを参照。チェンナイから百数十キロ、かなりの田舎であった。
 製藍所の主であるアンバラガン氏いはく、私の訪ねる二週間前にも、日本人がひとり来訪したという。ホラこの男だと言って、とある雑誌の表紙写真を指さす。驚いたことに、その人物、わが旧友のMではないか。かつてよく西部インドのプーナで、ともに遊んだ仲であった。その雑誌はインドのハーブ関係誌で、彼のことをドクターMと紹介している。う〜ん、いつのまにドクターになったんだろう。そういえば数年前からヘナやアムラなどインドのハーブについていろいろ研究していたようだ。伝え聞くところによると、ヘナ輸入の会社を立ち上げ、日印間をしばしば往復しているらしい。
 昨日、そのMと数年ぶりに会う。私とほとんど同年であるにもかかわらず、髪もヒゲも黒々。聞くと、やはりインドのハーブで染めているという。そのハーブとは、ヘナと藍。
 そう言えば前出のアンバラガン氏も藍でヒゲを染めていた。ただ彼の場合、いかにも藍染という感じで、青みがかっている。青ヒゲだ。「藍のパウダーがあるから君も染めるか」と聞かれたが、遠慮しといた。
 ところがMの染め色はかなり自然に近い。それは藍の紺青とヘナの赤褐色の効果だという。

 ひとつ面白かったのは、同じインド藍でも、糸や布を染めるのと、毛髪を染めるのでは、染め方が違うということだ。
 糸の場合は、インディゴ・ケーキというものを使う。すなわち、藍草を発酵させて抽出した藍の成分を酸化・沈殿させたものだ。そのインディゴ・ケーキを、細菌ないし化学物質(硫化水素)などで還元し、糸に染着させる。
 それに対して毛髪は、藍の葉を乾燥させ粉末化したものを使う(写真右)。一見、抹茶のようなパウダーを水に溶かして染めるのだ。前述のアンバラガン氏は、藍の生葉をそのままごしごしヒゲにすりつけて染めていたという。すなわち、生葉染めなのだ。
 粉末に含まれる藍の成分も生葉と同じで、酸化していない。そのまま水に溶かして毛髪に染着させる。ただし生葉ほどの染色力はないという。

 藍の生葉といえば、Makiでも欠かすことの出来ない染色素材だ。毎年夏、信州上田で藍の生葉を使い、主に手紡ぎ絹糸を染める。灰汁発酵建ての藍染とはまた違った、爽やかな青が特長だ。その藍草は日本のタデ藍だ。
 インド藍はタデ藍より藍の成分が多いと聞いているので、生葉でも染まるに違いない。ただ今まで試したことはなかった。そのことをMに話すと、自分の使っているインド藍粉をサンプルにと提供してくれる。藍粉の染色力も季節によって異なるそうで、最高なのは7〜8月産のものだという。アンバラガン氏から購入している藍粉だ。さてこれで糸が染まるか、試してみたいと思う。

 ところで、私がアンバラガン氏の許を訪ねた時は、残念ながら藍作りのシーズンが終わった直後だった。その二週間前、Mが訪ねた時は、まだ作業が行われていて、Mはその様子をビデオで撮影し、自分のサイトに収録している。こちらを参照。

蛇足:
 さてこのM、ドクターと言われるくらいインドのハーブ、特に毛髪とハーブの関係を研究し、そして生業としている男だ。洗髪に関しては一家言ある。世間一般の常識とカケ離れたこともいろいろ言う。
 たとえば、毎日シャンプーをする必要はなく週一度ヘナで洗うだけでいいとか、生理のとき洗髪してはいけないとか。
 私もじつは毎日石鹸で頭を洗っているクチだが、それは頭皮のアブラが気になるからだ(いわゆるオヤジ臭)。しかしMいはく、「頭皮の油脂は自然なものであり、毎日洗い流してしまうからこそ頭皮は余計に油脂を分泌するのである。また、石鹸やシャンプーにより頭皮の自然な細菌バランスが崩れるから、オヤジ臭もするのだ」という。そこでひとつ私も世のオヤジたちを代表して石鹸を止め、しばらくインドのハーブで頭を洗い、Mの言うことが本当かどうか身をもって確かめようと思うのである。(ただし本来の状態に戻るまでには時間がかかるらしい)。興味のある人はMのサイトを参照のこと。



07前半/06後半/06前半/05後半/05前半/04後半/04前半/03後半/03前半/02後半/02前半/99/98/97/96

ホームページへ戻る