いといと雑記帳 2005後半

05前半/04後半/04前半/03後半/03前半/02後半/02前半/99/98/97/96


7月7日(木) つるむらパニール

北インド系レストランに行って、だいたいいつも頼むのが、パラックパニール。
どういうわけか、あの濃緑色のドロドロしたのが好き。
ホウレンソウのカレーだ。

ところで、今、本場の北インドでは、ホウレンソウがオフシーズンらしい。
そこでキッチンをあずかる主婦は、別の新鮮な食材で、あの濃緑ドロドロをつくる。
その食材とは!?
ツルムラサキ。
マーケットに山積みされているという。

あれって、栄養満点草みたいだけど、独特なクセがある。
でもマサラを入れてパラックパニール風に仕立てると、かなりイケるらしい。
ま、本家のパラックにゃ負けるが、それでも90点くらいの出来だとか。
子供たちも喜んで食べるみたい。
腕に覚えの人はお試しあれ。

以上、昨日インドから帰国した真木千秋の話。
その「主婦」とはもちろん、アニータである。


7月31日(日) かぼちゃの不思議

炎暑の候、皆様にはいかがお過ごしのことであろうか。
お陰様で真木千秋も先週火曜、台風襲来のなか成田を飛び立ち、無事デリーに到着した模様。(嵐を呼ぶ女!?)

さて、話はガラッと変わって、カボチャのこと。
今年のウチのカボチャは出来が良い♪
たぶん北海道産「メルヘン」の裔であろうが、まさに栗みたい。

ところで、かつても書いたが、カボチャほど非暴力な野菜も珍しい。
たとえば、菜っ葉にしてもキュウリやナスにしても、あれは植物体の一部、ないしは未熟果を人間が勝手に食ってしまうのである。
野菜にしてみれば、けっこう迷惑な話。
ところが、カボチャは違う。
成熟した果実の、不要な果肉を人間が食い、必要な種子は捨てられる。
この果肉はじつは、種子をばらまいてもらう報酬として、カボチャが動物に提供する部分なのだ。
カボチャと動物との、うるはしき連帯である。
(もっともアジア・アフリカでは、種子も広く食用に供されるが)

ウチはもちろん、種は食わずに捨てる。
ただ、ちょっと不思議な現象がある。
これは私の農業技術の未熟を示すものであるが…。
すなわち、美味いカボチャに出くわすと、「これは良い、来年ウチの畑に蒔こう♪」と種をとっておく。
で、蒔くのであるが、出てきた芽はいつもへちゃむくれで、ロクに育たない。
あるいは、春ゴールデンウィークの頃、種苗屋で苗を買ってきて植えるのだが、やっぱり育たない。

ところがだ。
いつも、どこからともなく、カボチャが現れるのだ。
そして立派に実をつけるのである。

これは捨てられた種から芽生えたものだ。
ウチは生ゴミはすべて堆肥に積む。
それを春先に畑に入れるのだが、そこから芽が出るのだ。
つまり、数ヶ月の間、じっとゴミや堆肥の中でガマンしたやつだけが、立派に育つというわけ。
ウ〜ム、身につまされる話だ。

特に西洋カボチャはビタミンAやCが豊富な栄養野菜。
ただしカロリーも高目だから、調子に乗って食べ過ぎないほうがいいかも。


8月4日(木) 守護神

まあ皆さん、御存知かどうかは知らぬが ― 。
太古の昔、加山雄三が「若大将」で売っていたみぎり。
かの田中邦衛も脇役で出演しており、その名も「青大将」であった。
ウ〜ム、青大将って、ああいう顔なのか!?
なんてことをつらつら考えていたところ…

そのタタリか、今朝、庭の物置に入ったところ、脇の方でゴソッという物音。
そちらに目を遣ると、大蛇がいるではないか。
ま、大蛇って言うと大げさなんだが、かなり立派なクチナハである。
色は青緑褐色。
これはアオダイショウだ。

ヘビというのは美しい動物である。
お近づきになろうと、顔を寄せると、
タイショウ、それはお望みではないらしく、
ススッと引き戸の下を通り抜け、外に出てしまう。
なおもお近づきになろうとすると、
やっぱり嫌だったみたいで、
物置の脇を巡り、後ろの繁みに隠れてしまう。
1メートルほどもあったろうか。

このヘビ、農家では大切にされたそうだ。
ネズミを常食にするからだ。
ネズミと言ったら、米蔵の天敵である。
ウチでもさんざん悩まされた。
物置に置いていた、米とかヌカとかカボチャとか、よく囓られた。
米袋の中にネズミの糞なんか見つけると、その後しばらく食欲に影響する。(だから真木千秋には黙っていた)
夜になると母屋の天井裏で運動会。
いくら罠を仕掛けても見事に不発。
それが最近、音沙汰無いと思ったら、アオダイショウだったのか…。
ネズミも独自のネットワークを持っているから、「あそこに大蛇ありっ!」となると、寄りつかなくなるわけだ。
このままずっと居てくれたらいいんだが。
卵でもお供えしようか。

じつはこのところ、竹の家でもネズミ騒ぎが起こっている。
引っ越して六年経つが、初めてのことだ。
築200年で、見るからにアオダイショウの居そうな家なのだが。
転居でもしたのだろうか。

今日、真木香、大村恭子、太田綾の三人娘がインドに向かい、当地で真木千秋に合流する。
昨日は近辺の八王子でも34℃を記録し、夏、真っ盛り。
デリーは本来、雨期で気温が少々下がるはずだが、今年は「カラ梅雨」みたいで、気温は35〜6℃、湿度は90%だという。(真木千秋いはく)
まだ日本のほうがしのぎやすいかも。


8月12日(金) デリーの南印料理

再び皆さん御存知かどうかは知らぬが、かつて坂本九という歌手がいた。
今日はその二十周忌だという。
そしてたまたま今日、その終焉の地である上州上野村を車で通った。
十石峠をはさんで信州佐久に接する、山深い村だった。

九ちゃんとはささやかな思ひ出がある。
四十年ほど前、TBSの歌番で共演したのだ。
「えっ、ぱるばさんって、いくつ!?」という声が聞こえてきそう。
いや、全国デビューが早かったのだ。

* * *

さて、インドのデリーに出張中の大村恭子から、昨日、メールが来た。
その最後にこんな一節があった;

アニータの南インド料理が最高に美味しかったです。
アミータのマンゴーとレモンのピクルスも癖になっています。

解説:
アニータというのはニルーの次弟ウダイの嫁。専業主婦。
アミータというのは末弟ラレットの嫁。主婦&針場の女主人。
どちらも料理上手。しかも、インド料理以外はほとんど作らない。
彼女らの手料理を食べるのが、Maki インド滞在中の楽しみである。

このメールを読んで、私はチト首を傾げた。
というのも、デリーは北インドである。そして、アニータも北インド出身。したがって作る料理も北インド風である。彼女が南インド料理を作るとは知らなかった。
絲通信の最新号にも書いたが、北印と南印は、北欧と南欧以上に違う。
それで、どんな料理が出たのか、大村恭子に聞いてみた。
すると今朝、こんな返事が;

アニータの南インド料理は...

  1. サンバル。最高に美味しかった!
  2. イドリ。つけあわせのココナッツチャツネがすご〜く美味。甘すぎず、重たすぎずに、食べやすかったです。もちろんグリーンチャツネも。
  3. 中にパニールが挟んであるパラタのようなもの。これもすっごく美味しかったです。
  4. あと、コフタのようなサブジ。
  5. 食後にフルーツたっぷりのカスタードデザートでした。

    いかがですか?週末は南インド料理でも。

(数字はぱるば添付)


解説:
1のサンバルとは、南インドの代表的スープ。北インドのダールと同じく、レンズ豆を使う。ダールよりサラッとし、辛くて酸っぱい。
2のイドリとは、米粉を発酵させて、蒸したもの。中華饅頭に近いが、やや酸味がある。私の大好物で、毎朝、宿で食べる。それ自体は淡泊なので、サンバルやチャツネと一緒に食べる。
3は不明。パニールというのはインドのカテージチーズ。パラタはパンの一種なので、北インド料理かも。
4も不明。コフタというのはコロッケような野菜団子で、おそらくこれも北インド系か。アニータの得意料理。
5は言うまでもあるまい。

「週末は南インド料理」と言われたって、ちょっと困る。
食べたいのは山々だが、こちとら現在、信州上田の実家に滞在中。
南インド料理などという先端キュイジーヌには、まだまだお目にかかれまい。


8月15日(月) デジタル案山子

今、お盆休みで信州上田の実家に滞在中。
ヒマだから、ポチを連れて散歩に出る。
オスの柴犬だ。
正式な名前は別にあるのだが、面倒だから、犬は全部ポチになる。
家の周りには田んぼが広がり、もう穂が出始めている。

稲の天敵は、今も昔もスズメである。
しかし、かかしは最近すっかり様変わりだ。
もはや一本足に菅笠ではない。
田んぼのまわりに、棒が何本も立っている。
その先に、古いCDが吊り下がる。
風に揺られてピカピカ光る記録面が、スズメを追い払うのか。
最近はCDを捨てることも多いから、こうやって廃物利用されるのであろう。

中に音楽CDらしきものがあったので、どんな盤なのか手にとってみる。
すると「Textile Digital Printing System」とある。
こんなアーティストいたかな?と、よく見ると、どうやらPCソフトらしい。
布に模様をプリントするためのプログラムなのだろう。
同じTextileでも、ウチと違って、ずいぶんデジタルなのだ。
引退後にかかしとなり、ピカピカ光ってスズメを追うその姿は、なんとなくマトリックス。

* * *

実家の周囲には、もうひとつ天敵がいる。
タヌキだ。
これが夜な夜な出没して、ウチのトウモロコシを失敬するのである。
それで父親の田中一夫がいろいろ対抗策を練る。
愚妹・田中惠子いはく、「タヌキ同士の化かし合い」。
トウモロコシは 何十本もあって一家の消費量をいささか上回るのだが、やっぱり無断で取られるのは嫌であるらしい。

一昨日はその周りにネットを巡らすが、タヌキ(本物)は苦もなく二つ盗み出す。
そこでタヌキ(親父)は、昨晩、電灯を持ち出し、トウモロコシにくくりつけて一晩中点灯という挙に出る。
その甲斐あってか、今朝は全員無事。
いやタヌキ(本物)は単に昨晩は別の畑に遠征していたのかも。
もしこれも通用しなければ、いよいよポチの登場というのがもっぱらの噂である。


8月16日(火) 月卓昨今

お盆で実家に帰省した人も多かろう。
臨時独身の私にとっては、飯が自動的に出てくるのはありがたい。
しかし、実家というのはなかなか居場所を見つけづらいものだ。
書に親しもうと思っても、かつての勉強部屋は物置がわり。
しかたなくリビングに座を占めるのだが、
父親は暇があると高校野球観戦だし、
母親は暇があると茶菓を供そうとする。
これでは胃も心も休まらない。

で、ひとつ、屈強な場所を見つけた。
ギャラリー月のテーブルだ。
六年前、愚妹・田中惠子によってオープン。
当初はカフェ・ギャラリーとして毎日営業していたが、今は展示会時のみ。
だから普段はひっそり閑として、スペースを独占できるのだ。

ここでは年に二〜三度、当スタジオの展示会が開かれる。
それからもうひとつ ―
来月の中旬、真木テキスタイル総出で藍の生葉染めをする予定。(昨年の様子はこちら)
それに合わせて9月10日(土曜日)、生葉染めの「ミニ・ワークショップ」(予約制)をやろうかという話。
本決まりになったら当HPで告知するので、関心のある人はチェックいただきたい。


8月18日(木) 古民家再生

実家からの帰途、群馬県高崎市郊外の古民家再生現場に立ち寄る。
手がけているのは、古民家再生師の神保祥二氏。
憶えておられる方もいるかもしれないが、氏には昨年、青山店のディスプレーを手伝ってもらったこともある。
氏にとって、この現場は非常に大事なのである。
というのも、自分の家だからだ。

この古民家は、氏の生まれ育った実家である。
八十年ほど前の建築だそうだ。
昨年、実家の建て替えがあり、この古い家を取り壊すことに。
それで次男坊である神保氏はそれを譲り受け、ついでに土地ももらって、移築しているというわけ。

実家の敷地からやや離れているので、いったん全部、解体する。
傷んでいた土台のほかは、ほとんどオリジナルで再生するらしい。
たとえば、今やっている土壁塗り。
土はすべて古い家から剥がしたもの。
竹小舞(たけこまい)という竹組の下地も、ほとんど再利用だという。
ホント、これで新品の壁になってしまうのだから、すごい。
材料費もかからないし。
しかし手間が大変だから、一般の再生現場では新建材を使うことが多いらしい。
本物の土壁は、保温、防湿、耐震性などに優れ、シックハウスにも無縁だという。

なんだか楽しそうに塗っている神保氏であるが、夏の盛りの作業だからなかなかたいへん。
壁が終わったら、今度は土間を打ち固めたり、土の作業はまだまだ続くようだ。
年内にはなんとか住めるようにしたいとのこと。

竹の家と同じくらいの二階家で、二階部分はやはり蚕室。
ここ神保家では、平成に入るまで養蚕をやっていたそうだ。
群馬県は現在、日本の養蚕業の中心地である。
そういえばこのすぐ近所に、県立の絹博物館「絹の里」がある。

「来る者は拒まず」とのことだから、手伝い希望の人は私までメールのこと。
この日も大学時代の先輩が東京から手弁当で手伝いに来ていた。
神保氏の古民家再生譚もなかなかに興味深い。
この仕事が終わったら一冊の本にまとめてみたいということだ。
氏は画家でもあるから、きっと絵入りの楽しい本になることだろう。


9月18日(日) 青山パルキング事情

(本来なれば「パーキング」と表記すべきであるが、インド通いが長いせいでどうもナマってしまう)

というわけで、「無用の布」展に合わせ、私も真木千秋も、三泊四日の青山滞在である。
シティライフもたまには良いものだ。
我々の定宿は、Maki青山店から徒歩数分の「島根イン青山」。
こじんまり落ち着いていてよろしい。
高速道路に面していない南側に部屋を取れればなお良い。
別に島根県民でなくても泊まれる。
駐車場のないのがチト不便。

駐車場と言えば、当店に車で来られるお客さんもおられる。
店の前に一台分の駐車スペースがあるので、空いていれば駐めて頂いて結構。
ひとつ注意すべき点は、店舗前の道路が一方通行なこと。
骨董通りからは入れない。
裏通りから入るのは相当の土地勘を必要とするので、骨董通りにあるパルキングメーターを利用するのが無難であろう。

ただし、パーキングメーターは1時間まで。
それ以上駐めたい場合はどうするか?
ま、大方の読者には関係あるまいが、ついでだから教えて進ぜよう。

最近は青山一帯の地価上昇が著しく、周辺のパルキング事情も厳しいものがある。
私の利用していた駐車場も1時間900円に大幅upして、一日駐めていたら天文学的数字になる。
そこでだ、長時間の場合は、青山通りにあるスパイラルビルの駐車場を利用するといい。
ここは一日駐めても2500円(夜11時まで)。

それでも高いという人には、さらにウラワザがある。
根津美術館近くにあるフロムファーストの駐車場へ行く。
ここはスパイラルと同じく一日2500円。
で、ここが満杯の場合、スパイラル駐車場の特別優待券が発行され、それを持参してスパイラルへ行くと一日1500円になる。
ま、運もあるんだけどね。

というわけで、近在から車で来て、一日青山周辺で遊びたいという向きは、お試しあれ。


10月2日(日) 星港便り あるいは英語のお勉強

当サイトの展示会一覧を見て、オヤッと思った方もおられよう。
上から三つ目にSingaporeの文字がある。
今、シンガポールでミニ展示会が開かれており、真木千秋が行っている。
なかなか楽しいらしい。

今春、とある展示会に、アメリカ婦人が来訪する。
夫とともに現在シンガポールに在住しているL夫人だ。
もともと工芸関係のライターであるらしい。
彼女がMakiの織物をいたく気に入り、シンガポールでぜひ皆に見せたいということで、今回の催しとなった。

東南アジアのビジネスセンターである星港シンガポールには、世界各国から様々な企業が進出している。
当然、そうした企業に働く駐在員の数も多く、またそもそもがコスモポリタンな都市である。
駐在員の奥さんたちによる文化活動も盛んである様子。
その中には織物研究会のようなものがあり、L夫人もそのメンバーであるらしい。

そういう人々が相手だから、お話会をしても反応が芳しかった模様だ。
Chiaki Maki、拙い英語で一時間半も熱弁を振るったという。
主体は欧米人だが、そのほか地元シンガポールやインドネシア、インドや日本からの人々もいて、まことにインターナショナル。
それでは英語のお勉強も兼ねて、みなさんの感想を列挙すると;

-Your sense of photography is so beautiful, why don't you publish a book of your textiles and the photo together?
-I bought your passion to what you make.
-It will be interesting if you find a right person to hold an exhibition in India.
-They will absolutely love it in Berkeley,California!
-You are just like a butterfly, after being a worm, becoming a butterfly and fly wherever you want, isn't it wonderful?(やや意味不明)


10月29日(土) 菌種差別

毎年今頃になると、竹の家に、あるキノコが出現する。
いや、シイタケではない。
庭の片隅、ケヤキの葉っぱの堆積した周囲に生える。

コムラサキシメジというキノコだ。
その名の通り、淡い紫色をしている。
キジメジ科だから美味なのである。
しかし、庭という出現場所と、その色のせいで、誰も注目しない。

ウチの真木千秋はキノコ好きである。
さきほども近所の物産店で地物のシイタケを買ってきている。
きっと今晩のスープの具になるのであろう。
そして同じキッチンに、コムラサキもそのときを待っている。(写真右)
私が昨日、採取して、きれいに洗って、ざるに上げておいたのだ。

しかし、いくら待っても、「そのとき」は来ないかもしれない。
というのも、真木千秋が嫌がっているからである。
だいたい彼女は、私の採取物をてんで信用しないのだ。
たとえば、当家の薪割り台に、よくキクラゲが生える。
アラゲキクラゲというやつだ。
ちゃんとキノコ図鑑で調べ、食えると踏んでいる。
だが、どうも気持ち悪いらしく、一度も食材として認められない。

こういう「雑キノコ」は、栽培種には無いワイルドな風味があるものである。
何でもそうだが、自分で採ったものは味もひとしお。
さてこのコムラサキ、いわれなき菌種的偏見にもめげず、無事スープの具となりおおせるであろうか!?


11月1日(火) 大根の葉

  
流れ行く大根の葉の早さかな

中学の教科書に出ていた高濱虚子の句。
ちょうど今ごろの季節に詠まれたものだろう。
しかし最近の人々はあまりピンと来ないのではないか。
なんで大根の葉が流れて行くのだろう!?
これは言うまでもなく、かつては大根を川で洗ったからだ。
この一句は虚子の代表句とされるほど有名だが、そウラには「字面の妙」があるように思われる。
句末の「さかな」に、どうしても魚を連想してしまうのだ。
かくして、川べりで余計物として捨てられた青い大根葉は、晩秋の水面を滑りながら魚へと変身を遂げるのである。

…というわけで
なぜ突如、拙HPに大根葉が登場したのかというと、今しがた、それを飲まされたからだ。
最近、当家では青汁が流行っている。
今年は青菜類の出来が良いので、真木千秋がせっせとジューサーで絞るのである。
小松菜が主となるが、大根葉も多量に余るので、少々中に入れ込む。
で、気づいたのだが、大根葉というのはかなり辛いものである。
どうりで虫もつかないわけだ。
ま、多少辛いほうが、青臭さとの対抗上、良いのかもしれない。

八百屋の大根じゃわからないかもしれないが、
採りたての大根の葉は、それは見事な張りのあるものだ。
魚に変身したとて、何の不思議もない。


11月4日(金) 南印飯店レビュー「高崎・チェンナイ」

最近、ちょっとブームのような観を呈している南インド料理。
ここ一ヶ月のうちに、私の知る限り関東で三軒、新たにレストランがオープンした。
そのうちの一軒が、今日ご紹介する群馬県高崎市の「チェンナイ」。
実は昨日から前橋のギャラリーにしおでMakiの展示会が開かれているので、その足で真木千秋ともどもさっそくチェックを入れる。
交通の便は良くないんだが、これが予想に反して良い店であった。
そこで拙ページにおいてご紹介いたす次第。

広々とした明るい店内に、モダンでこざっぱりした内装と調度。
いはゆるインド臭がまったくない。
メニューにはいろいろ並んでいるが、まあ皆さん分かんないだろうから、私が決めて進ぜよう。
菜(おかず)とご飯とスープ。それから希望によってサラダ。

菜はポリヤルという日替わりの家庭料理がいい。
二人だったら、三品セットを2つ、ないしは五品セットを1つ。
ご飯はインド米のサフラン・ライスがいい。ガーリック・ライスも美味いが油っぽい。白飯は日本米なので好みに応じてどうぞ。
スープはアユールベディック・ラッサムかサンバル。かなり量が多いので二人でひとつで十分だが、両方あると更に南インドチック。
サラダはヨーグルト・サラダ。
食後にドリンクが欲しければ、南インドコーヒー。これはメニューにはないが、頼めば作ってくれるかも。
これでざっと五千円少々。

日本でインド料理というと北インド物が一般的なので、ここでも北インド料理を出している。
たとえばタンドール(土竃)を使った料理とか。
ただシェフの手さばきを見るとイマイチであった。
そもそも南インドの料理人にタンドールは不要なのである。
だからタンドーリチキンとかナンなどは他所で食べるとして、ここでは南印物で迫るべきであろう。
たとえば、ココナツジュースを使ったカレーとか、ドーサやイドリやワダなど米粉を使ったスナックなど。

このレストラン、私が今年チェックした六つの南印飯店のうちでもイチオシなのだが、難点はアクセス。
高崎なんて、普段あんまり行くことないよねぇ。
それも駅から2.5km。
一番近いのは高崎線の倉賀野駅。それでも2km少々。
車だと上信越道・藤岡インタから10分ほどなので、信州への行き帰りに途中下車して立ち寄りたい。
これでまた上州へ行く楽しみがひとつ増えた。

群馬県高崎市倉賀野 49-1
TEL:027-347-4455
営業時間:11:30〜15:00 17:30〜23:00 火曜休み
地図は
こちら


11月8日(火) 柿

今年は柿の当たり年だという。
今、信州上田に来ているが、街道のあちらこちらに柿の木が見える。
たわわな実が秋空に映えて美しい。

私ぱるばの実家にも柿の木が八本ほどある。
祖父が柿好きで、大事にしてきたのだ。
明治のみぎり、田舎では柿の実は貴重な甘味であったという。
ビタミンAやCの豊富なヘルシー果実だ。
おまけに肥料・農薬も要らない手間知らず。

ところが最近は、昔ほど稀少甘味ではなくなり、木の上で朽ち果てることも多い。
今年は当家で合わせて五千ほども実が成ったという。
そこで老父は、来る人ごとに、柿を持たせるのである。
左写真は、平無核(ひらむかく)という名の柿を収穫する老父・田中一夫。
「たいらで種が無い」という意味だ。
右写真は、実のヘタを整える真木千秋(左)と老母・和子(右)。
二人の間で愛犬のポチがじっと私を見ている。
(ちなみに田中老夫妻はこの11月に金婚)

真木千秋はこの作業がことのほかお気に入りの様子だ。
「藍染と同じくらい楽しい!」とのこと。
これは上写真の平無核である。
干し柿用の渋柿だ。
今日はこれを車に積んで、東京五日市へと戻る。

数にして百数十個はあるであろう。
ところが柿の木を見上げても、ほとんど減ったようには思えない。
老父の悩みもしばらく続きそう。
干し柿をつくりたい人は、月のテーブルへGo!
(次の週末にはコンサートもあることだし)

11月15日(火) インドへの道

 
ここ2〜3年、スムーズにいっていたので、心のゆるみがあったのかも…

 インドに行かないと仕事にならない Maki Textile。
 毎年今ごろになると、全員分のビザ取得のため、養沢の谷から電車を乗り継ぎ二時間半、はるばる花のお江戸はインド大使館まで出かけるのである。
 場所は千鳥ヶ淵。武道館の近所。
 さすが南アジアの大国だけあって、なかなか良い場所に屋敷を構えている。

 ところが今日は、どういうわけか領事部(ビザ係)が閉まっているではないか。
 不審に思って大使館の受付に回ってみる。
 インド人の館員がひとりぽつねんと座っている。
 インテリタイプの中年男性。
 今日はやってないんですか?と聞くと、シーク教の祭日だから休みなんだと。
 シーク教というのはインド第四の宗教で、教祖ナナックの誕生日がちょうど今日だったのだ。
 そんなこと知るわけがない。
 「前もって電話してチェックしてください」、と館員。なかなか愛想の良い人だ。
 「働く日より休日のほうが多いんですよ♪」とニッコリ。
 いいな〜、インド人は。
 皆さんもインド大使館に用のある際は、前もって電話で確認のこと。03-3262-2391

 で、私の失われた往復五時間と、印貨にして八百ルピー余の電車代はいったいどうなる!?
 そこで私はウップン晴らしに、銀座三越地下でカスピ海ヨーグルトの種を買って沖縄に郵送し、上野の国立博物館へ行って「北斎展」および「祈りの中の染織展」および「日本の考古学」を観覧し、夜はお隣の鈴本演芸場で「蝶花楼馬楽・独演会」を見物するのであった。(ウップン晴らしが長すぎる…!?。ついでに鈴本界隈は夜の歓楽街で少々怪しいお兄さんやお姉さん方がしきりに街往く人の袖を引っぱるのだが、私のは誰も引っぱってくれない。藍染め作務衣の袖は引っぱりづらい?)
 というわけで、インドへの道のりは長く険しいのである。

 今日から真木千秋は西表の紅露工房入り。Makiの娘たちもおっつけ合流する。
 一週間ほど当地に滞在し、染色などに励む予定だ。


11月17日(木) 千鳥ヶ淵の怪

 
仕切り直しのインド・ビザ。
 今回はしっかり確かめて出かける。
 花のお江戸は千鳥ヶ淵まで、今日は二時間ほどで到着する。
 ビザ発給のインド大使館・領事部は、しかしながら、驚きの連続であった。

 まず中に入ると、椅子の向きが90度変わっている。
 何事かと思って着座すると、正面の壁に大きなプラズマ・ディスプレー。
 インドの民放が放映されている。
 そのディスプレー右端に小さな別窓があり、受付番号と窓口がコンピュータ表示される。
 最初に番号札を取るのであるが、後は座ってテレビを見ていればいい。
 受付窓口はAからHまで都合八つに増え、進み具合も迅速である。
 番組はヒンディー語だが、つらつら眺めてインド気分にひたってるうち、三十分ほどで番が回ってくる。
 かなり快適。
 これでチャイでも供されれば最高だが、ま、贅沢は言うまい。

 窓口には初老のインド人男性館員。
 男というのも初めてだ。
 いかにも人の良さそうなオジサンである。
 今回は四人分のビジネスビザ申請だ。
 書類とパスポート提出の後、しばしあって、オジサンが受領書をくれる。
 通常はこれを持参して、翌日以降にパスポートを受け取りだ。

 おじさんが、「ハイ、4800円」と言う。
 「えっ、4800円!? 四人で?」、私は驚いた。 
 ひとり1200円ではないか。
 数年前、ビジネスビザが一挙にひとり8850円に上がったことがある。
 さすがにこれは阿漕(あこぎ)だということだろう、翌年はすぐに4800円に値下げされたような気がするが、ともあれ何時どうなるかわからない。
 それゆえ千鳥ヶ淵に赴く際は常に、当家の有り金すべて掻き集め、万全の用意と覚悟のもとに出かけるのである。
 それが今度は1200円。ちょっと嬉しい拍子抜けであった。
 思わずオジサンに礼を言う。(別にオジサンの手柄ではあるまいが)

 しかし、最大の驚きはその後にやってきた。
 受領書を手に、いちおう確認のため、「いつ受け取りに来たらいいですか」と聞く。
 するとオジサン、「Today」と言う。
 「Today??」、私は耳を疑った。
 「そう、Today。五時においでなさい」、とオジサン、受領書の日時表記に下線を引きながらのたまふ。
 (よく見ると受領書もコンピュータ化している。)

 申請から六時間少々でビザ発給!
 これは信じがたいことだ。
 インド開闢(かいびゃく)以来の壮挙。
 昨今の同国の変貌を目の当たりにする思いであった。


11月19日(土) 木には木を

 
弊社には車が三台ある。
 その中で我ながら一番カッコ良いと思うのが、軽トラの荷台に木材を載っけて走るときだ。
 そんな時にはたとえ隣にロールスのシルバースパーがやって来ても、何らヒケをとるものではない。(山ん中だからそんなもん来ないが)
 なぜ木材を運ぶのかというと、ストーブやかまどの薪にしたり、イベントの調度として使うためだ。(たとえばこんなふうに)

 そうした木材はいろんな所で調達する。
 たとえば、近所のサトウ材木店とか。
 そこのオジサンとは仲良しで、よくいろんな材をもらう。
 丸太の切れ端とか、薪用の雑木とか。

 いつかお礼をしたいと思っていた。
 わざわざ買うのもなんだから、到来物の菓子とか。
 と思っていたら、今日、菓子がひとつ到来する。
 取引先の銀行からだ。
 バウムクーヘンだという。
 これはおあつらえむきかも。
 じつは私、この菓子、好きである。
 包装紙を見て、ちょっと心が揺らぐ。
 WAKO,GINZAとある。
 う〜ん、なんか上等そう。めったに口に入らぬかも…。

 しかしそのとき、気づいたのであった。
 バウムとはドイツ語で「木」のこと。
 クーヘンはケーキで、すなわち年輪をかたどった「木のケーキ」。
 木のお礼とするには、これに勝る菓子もあるまい。

 というわけで決然、菓子の包みを小脇にかかえ、サトウ材木店へと向かうのであった。
 ウチから徒歩で三分、坂のてっぺんにある。
 オジサン、ちょうどお茶をしていた。
 奥さんに包みを手渡しながら、「オジサン、洋菓子食べますか」と聞く。
 「何でも食べますよ」と奥さん。
 そりゃ良かった。
 そこで私はウンチクを垂れるのであった ―
 曰く、これはバウムクーヘンで、バウムとは木という意味だから、材木屋さんにはぴったり! 云々…
 ところがオジサン、全然聞いていない。
 「おりゃー、山ん中で、猿みてーなもんだからよ」だと。
 そんなハイカラなもん似合わないというわけか。
 いやオジサン、山ん中の猿であればこそ、味覚も確かなものがあるのかもよん。

 というわけで、木には木をというお話。
 オジサン、わかったかな〜、この洒落が。
 (誰かこれを読んで、ゴホービにWAKOのバウムを贈ってくれないかしらん♪)


11月27日(日) 「柿とクルミのケーキ」あるいは「必殺真空パック」

 
先日の日誌に「誰かWAKOのバウムを贈ってくれないかしらん♪」と書いた。
 無論、戯れであったのだが、戯れで終わらせない人もいるのである。
 下手人は岩手・一ノ関、佐惣珈琲豆のY姉。
 実はMakiの一族郎党、インドへ行く折にはいつも珈琲豆を持参する。
 それで出張直前に煎りたてのを送ってもらうのだが、今回、豆に混じってコンモリした包みがひとつ。
 上に「和光」と筆書きのシールが貼ってある。
 「ん、岩手の和光!?」
 手紙が入っていて、いはく、「ぱるばさん、WAKOより美味しいE'sの柿とくるみのケーキ、食べてください」とある。
 確かに美味しそうなパウンドケーキ。
 さっそくお茶の時間に頂いたが、自然な甘みの上品な味であった。(WAKOより美味しいかどうかは不明)
 このE's(イーズ)、仙台にあるナチュラル派の洋菓子屋さん。
 「竹の家オープンハウス」でクッキーなどを置いたこともあり、好評であった。
 というわけで、戯れでも書いてみるもんだ、というお話。

 さて、インド行きを明後日に控え、ウチは準備で大忙しである。
 特に冬場は一月以上の滞在となるから、持ち物も多い。
 いかにコンパクトにパッキングするか……それが快適な旅を左右する。
 そこで登場する秘密兵器が、電気掃除機。
 コレ、なかなか傑作なのだ。
 原理は布団の真空パック収納と同じ。
 主婦の間ではけっこうポピュラーなんだそうだ。
 糸をポリ袋に入れ、口に掃除機のホースを挿入。しっかり押さえながらスイッチオン。
 こうすると袋内の空気が除去され、容積がぐっと減る。(写真、左側の袋が使用前。右側が使用後)
 ポリ袋も田舎ならではである。
 すなわち、農協から買ってきたネギ用袋。
 糸のほか、ストールなど入れるにもピッタリのサイズだ。

 ちなみに、写真の糸は、今年夏に染めた藍生葉染め糸だ。
 左手前はキハダで下染めした黄緑。
 竹林座繰り糸や赤城節糸を使った生葉染め糸は、真木千秋のお気に入りだ。
 「コレで織ると、売りたくないな〜とか思ったりするんだけど、みんな売れちゃうんだよね〜…」などとひとりごちている。
 ま、いろいろ苦労があるのである。


11月28日(月) 縄文のヴィーナス

 
家を一月も空けるので、畑も整理しておかねばならない。
 それで引っこ抜いた大根に、こんなのが。
 その色といい、カタチといい、ちょっと悩ましい。
 名づけて、「縄文のヴィーナス」。
 ダテに縄文と銘打っているわけではない。
 この辺では縄文土器が出土するのである。
 先日もこの大根のすぐそばで、ゼッタイに石器だとおぼしき石の剥片を拾う。

 食べるに忍びなく、スタジオに持って行ってみんなに見せる。
 折しも、ご縁ギャラリーのうつわ菜の花から展示会案内が。
 「トルソ展」なのだそうだ。
 トルソとは「胴体だけの像」。
 いろんな作家が出品している。
 Makiにおなじみのところでは、三谷龍二とか、安藤雅信とか、高橋台一(ギャラリー主!)とか。
 案内の写真をつらつら眺むるに、う〜んオレのヴィーナスのが良いじゃん!? などと思ったりも。
 そこでチラシをバックに記念撮影。

 な〜んて、悠長なことをしているヒマはないのである。
 明朝出発なのに、午後五時を回って、まだ何も準備していない。
 実は私、旅の準備が大嫌い。
 それでこんなことをしながら逃げているというわけ。


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