Project Henchikurin Project Henchikrin BambooHouse" 竹林日誌2005,, BambooHouse Project Henchikurin Project Henchikurin

東京西多摩、秋川の清流を見下ろす崖上
築二百年の農家を舞台に展開する真木テキスタイルスタジオのお話。

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7月1日(金) 「Mangalgiri」点描

本日から始まったMaki 青山店7月の新作紹介「モンゴルギリ」。

青山まで来られない人のために、ちょっと店内の様子を御覧に入れよう。
 ブラウス(Vネック)
 タンクトップ
 パンツ(スリム)
 タンクトップのいろいろ
 ストールと合わせて…
 ブラウス(ギャザー)
 タンクトップ
 スカート(バルーン)
私も夏はもっぱらモンゴルギリ。
ただしこのメンズシャツは非売品♪
(右下の生地で作ることができる)

7月8日(金) もろこしぼうき

 今、竹の家では糸取りの真っ最中。
 先日、八王子の養蚕農家・長田家から春繭が届いたのだ。
 仕事の合間を見ながら、縁側に繰糸機を二台並べての座繰り作業。

 さて、左写真の一番手前に見える棒状の物体。
 これは「もろこしぼうき」と呼ばれる器具だ。
 もろこし属の植物の穂から作る。
 座繰りには必須のアイテムなのだ。

 繭から糸口を探したり、繰糸中に切れた糸を湯の中からすくい上げるのに、これほど便利なものはない。
 軽いから、手も疲れない。

 群馬のお婆ちゃんたちは、みなこれを畑で自作するのだ。
 ウチも去年、試したのだが、まったく発芽しなかった。
 そこで昨年末、赤城の糸繭商・石田さんを訪ねた折、新しい種をもらってくる。

 それを五月、畑に蒔いたところ、見事に発芽!
 現在、30cmほどに成長している。

 右写真をご覧になればわかると思うが、トウモロコシの木にそっくり。

 さて、立派なほうきをつけてくれるであろうか。

7月17日(日) さようならワヒッド

 
ワヒッドという名の織師がいた。
 これは当スタジオの生地の名前にもなっているから、御存知の方もあろう。
 拙著『タッサーシルクのぼんぼんパンツ』(97年刊・品切れ)の中でも大活躍である。
 おそらく、インドに300万人いるという手織り職人の中でも、最も有名なひとりであろう。
 当スタジオの黎明期から、ずーっと、十七年間、織り続けてきてくれた。

 並はずれた腕の持ち主。
 普通の織師だったら、タテ糸を作った後、ヨコ糸の設計図を渡して、その通りに織ってもらう。
 ワヒッドの場合、使うヨコ糸を決めた後は、設計図なしで、千秋の意図を汲んで織ってもらっていた。
 そうしてできたのが、「ワヒッド」という生地。
 繊細な糸の配合、微妙な綾、適度な打ち込み…
 余人には真似の出来ない織りであった。(右写真「ワヒッドと千秋」04年正月)

 ところが、既に六十を越え、体調もあまり思わしくないワヒッド。
 気力も萎えてきたのだろう。
 今年の始め、「設計図をおくれ」と言ってきて、真木千秋にショックを与える。

 思えば、彼との関係はラッキーなものであった。
 彼の雇用主はニルー。
 頭も良く親分肌のワヒッドは、ニルーたちにとって、相当タフな交渉相手だったらしい。
 拙著にもある通り、かつてはストライキなども組織している。
 ところが、直接、雇用関係にない私たちとは、純粋に織りの部分だけでのつきあい。
 ひたすら、感性があって腕の立つ職人だった。
 ニルーたちには申し訳ないが、イイとこ取りだったのかもしれない。

 先月、シンガポールでの用事がてら、インドに出かけた真木千秋。
 現地でワヒッドを見送ることになる。
 首都デリーから数百キロ離れた故郷に帰る決心をしたのであった。
 トラックに乗って機場を去るワヒッド一家…。
 その様子は、今月末に発行予定の「絲通信」に詳しい。

8月31日(水) もろこしぼうきII

 これは先月お伝えした話(30cm上↑)の続き。
 繭の座繰りに使う「もろこしぼうき」の草だ。
 二ヶ月弱でここまで大きくなった。

 一昨日インドより帰国した真木千秋もびっくり。
 高さは2mを超えているだろう。
 (一番右上の穂先にトンボがとまっているけど、わかるかな!?)

 数えてみると30本ほど。
 なにしろ背が高いものだから、風には弱い。
 先週の台風で、そのうち三分の二ほど倒れてしまった。
 それを起こして、竹や棒で支えている。
 幸い、穂の生育には支障ない模様。
 これで当スタジオの座繰りもしばらくは安泰だ。
 
 右写真が、その穂。
 実がびっしり成っている。

 「もろこしぼうき」という種類の草かと思っていたら、そうでもないらしい。
 というのも、高梁(コウリャン=たかきび)によく似ているからだ。
 おそらくその一品種なのだろう。

 種はそんなにたくさん要らないから、残りはなんとか工夫して食べてみようと思う。

9月7日(水) インド余録

 8月はインドで仕事の月だった。
 真木千秋を始め、真木香、大村恭子、太田綾の四人が、熱暑もモノともせず、当地で布&服づくりに励む。
 私ぱるばが同行すれば現地の実況もお伝えできるのだが、今回は残念ながら留守番であった。

 そこで、先ほど真木香から届いたインドの写真を、少々ご紹介することにしよう。
オンブラマイフ

木陰にて。
いかにも雨期のインドらしい緑したたる戸外の様子。
ただし今年は空梅雨だったという。

前列左から、織師ワジッド、真木香、大村恭子。
後列左から、織師イスラムディン、アシスタントのディーパック、織師バブー
ちあき小母

織師ジャバールの末息子ソエルと。
今はこの子が機場のマスコットであるらしい。
平生は頑なにオバの呼称を拒否する真木千秋であるが、この子にはキャンディーをあげたり抱っこしたり、しっかりオバをやっている。
お袋の味

織師ジャバールの妻、すなわちソエルの母親。
お昼のチャパティーを焼いている。
プッとふくらみ、いかにも美味しそう。
雨に踊る

一天にわかにかき曇り、雨期特有のスコールがある。
すると子供たちはやにわに服を脱ぎ捨て、雨の中で、跳ねたり踊ったりする。
こう見えても、右端のソエル以外、ぜんぶ女の子。
カメラを向けると、みんなで集まって来る。
愛の女神

経糸職人パシウジャマと大村恭子のツーショット。
背後で翼を拡げる某女神。

 9月10日(土) 藍・生葉染め

 9月の9,10日の二日間、信州上田で夏の恒例行事・藍の生葉染め大会。
 知らない人のために附言すると、これはいわゆる「藍染」とはチト違う。
 「藍染」とは、藍草を発酵させて濃色を染める「藍建て」。
 生葉染めは、フレッシュな藍葉を発酵させずにそのまま使う。
 だから藍葉の青々と繁る季節しかできない。
 藍建てとは違う、瑞々しい淡色を染める。
藍葉つみ

 スタッフ助っ人等総勢六名。
 まず藍草を刈って、元気な葉だけを摘み取る。
 藍の色素インドキシルは葉っぱの中だけに存在。
染め

 二日とも幸い天候に恵まれる。
 主に絹糸を染める。
 竹の家で座繰りした春繭や秋繭、赤城の節糸など。
 糸の状態や、染液への漬け方などで色合いが違ってくる。
 糸は今冬インドへ持参して機にかかり、ストールに織り込まれて来年の春から夏に日本に到来する。
黄緑絲

 これも今回初めての試み。
 キハダで黄色く染めた赤城節糸に染め重ねる。
 通常、緑を出すときには黄色の上にインド藍をかける。
 それに比べると透明感のある黄緑色になった。
 黄色にフクギを使う場合よりも、しっかりした色合いになる。
韓流絲 

 今回初めて染めてみた韓国の柞蚕糸。
 野蚕糸は家蚕糸に比べて染着が悪く、ブルーグレーの色合い。
 この糸は細くてしっかりしているので、タテ糸にかけることができる。

千両役絲

 一番美しい色に染まりつくのが、春繭の座繰り糸。
 今年の春、みんなで引いたものだ。
 この写真は染めたてで湿った状態。
 乾くともう少し色が淡くなる。
後染め 

 布も二枚だけ染める。
 「真夏」という名のストール。
 縦横に染まっていない白い糸が見られるが、これは苧麻糸。染まっているのは絹糸。
 これは藍建てによる染めと逆のパターン。藍建てでは麻の方が絹よりも染まりが良い。


9月15日(木) 『無用』の展示

 明日からMaki青山店で始まる展示会、『無用の布』。
 今日は5人がかりでその展示作業だ。

 DMをもらった人はおわかりだろうが、今回は封書入りということで、真木千秋も力が入っているのである。
 明日から三日間、青山に詰めるのだそうな。

それでは前夜レポートを少々。
一階のテーブルには黒塗りのボードを敷く。
 一階正面奥。
李朝の箱「ばんだち」の上で。
二階左手の壁面は今回のために黒く塗装。趣を一新する。