東京西多摩、秋川の清流を見下ろす崖上 |
昨日までの週末三日間、Makiの秋 「竹林篇」が開催された。 昨年の秋から一年ぶりのスタジオ開放&展示会。 幸い天候にも恵まれ、多くの人々の来訪を賜る。 当スタジオにとっても、またひとつ思い出となる催しであった。 その様子をちょっと御紹介しよう。 一番上の写真は、二階の窓から見た風景。 右半分はナーシ布。 左側には竹林が朝日を浴びて輝いている。 この二階部分は、かつて蚕室だったところだ。 それを表側から見たのが次の写真。 二階から垂らした布の一部を、ヒバの胴にぐるぐる巻する。 シルクの腹巻きだ。 こうした大木と遊べるのも竹の家ならでは。 このヒバのほか、ケヤキが数本。ムクノキが一本。そのほか柿、栗、李など。 竹だけではないのだ。 真ん中の写真は、二日目、カゴ編み教室。 「竹の家」展恒例のイベントだ。 毎回、真木雅子オリジナルのカゴをみんなで編む。 このたびは「持ち手のきれいなカゴ」。 乱れ編みの技法を使ったバスケタリーだ。 毎回「20人定員」をうたうのだが、40人近い人々の応募がある。 指導は真木雅子ほか、弟子の先生たち数人。 初心者も経験者も、約二時間、黙々と手を動かす。 みなさん筋が良いのか、指導陣が優秀なせいか、最後にはちゃんとカゴができあがるのである。 この「竹の家」展のときには、青山店も休業して、スタッフ十人ほどがみんな竹の家に集まる。 またそれと同数ほどの、ボランティアスタッフも参加する。 近所の娘とか、美大生とか、友人知人とか。 こうした若人との交流も、また良き刺激となる。 左写真は、そんなひとり大村風生(ふき/19歳)が会期中、手慰みで作った小品。 当スタジオのハギレや糸キレを使った、シルク100%のソフトな二連の首飾りだ。 特に中の赤いキレは、風生嬢が小学生のときに入手したものだという。 なかなかの佳品であるので、いずれ皆さんのお目にかけることもあろう。 三日目には、桑都八王子の養蚕農家・長田さんによる「真綿つむぎ」デモンストレーション。 玉繭や真綿から糸を紡ぎ出す。 六十人ほどの人々が熱心に聞き入っていた。 さて、今回の主食は「七穀雑炊」であった。 キビ、アワ、ハトムギなどの雑穀を使った雑炊だ。 キッチンで作った後、外にカマドを据えて、焚き火で温める。 お客さにはけっこう好評のようだ。 ただ、見てくれがイマイチだったので、私ぱるばはしばし敬遠。 しかしついに最終日の昼、スタッフ用キッチンが満員で入れなかったため、意を決して挑戦。 これがなかなかウマかったのである。 一番下の写真は、雑炊に入れる岩手名物はっと(すいとん)をつくっているところ。 × × × 余談) |
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「蕪の森(かぶらのもり)」とは、山梨県・八ヶ岳の麓にある真木香のスタジオ。 一昨日、信州からの帰りに立ち寄ってみる。 標高八百mを越えるここ長坂町の蕪地区は、既に紅葉も盛り。 実は真木香、青山での個展を約一ヶ月後に控えている。 香にとっては初の舞台である。 それで今、追い上げの真っ最中。 個展の出品作は、大きく二つに分かれる。 ひとつはここ蕪スタジオで香が自ら織ったもの。 もうひとつは香がデザインしてインドの職人が織ったものだ。 今日はそのうち、香が自分で織り上げた作品をご紹介しよう。 |
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右側の写真は「包み布」。 これは今までのMakiにはあまりないジャンルだ。 風呂敷といえば日本の生活芸術品。 しかし香にとっては、使いたいような風呂敷がなかった。 それで自分でつくったという次第。 二枚重ね。 内側は、インドのタッサー絹布を草木染めしている。 外側の布は、糸を草木染めして、織り上げている。 シルク糸を主とし、ものによってウールや木綿が入る。 仕上げも全部、香自身が手やミシンで縫っている。 モノを包むと右中の写真のごとくになる。(photo by Kaori) 右下の写真は、まだ機にかかっている外側の布。 この布は、端の部分にスリットの入るデザイン。 「包み布」は全部で二十点ほど。 一枚一枚みんな違っているとのこと。 |
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左側の写真は、細幅のマフラー。 香自身も首にひとつ巻いている。 シルクとコットンを使い、やや厚手に織る。 ラフに使えるマフラーだ。 自分で織る場合、まず森の中から染材を探すことから始まる。 コナラとか、クルミとか。 そして糸を染め、それから糸を巻き、機にかけ…。 全部ひとりでやることの大変さをしみじみ感じているそうだ。 「薄くて幅広のストールはインドの職人仲間にお任せ♪」とのこと。 たとえば、スペースダイとか、大判コード織りとか、シックなパープル系とか。 それについては、また御紹介しよう。 |
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Ghi Pot 展の初日。 Maki Textileでこうした「アンティーク展」は馴染みがないせいか、壺影ばかりで人影まばら。 |
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花器にして使う。 もちろん、直接水は入れない。 中に花瓶を仕込んで、花を挿す。 |
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今回のアンティークは木ばかりではない。 金もある。 これは真鍮製の大盆。(その上に細幅布をあしらう) 真木千秋がインド西部グジャラート州で見つけてきた。 右下写真の水盤も同種のもの。 直径40cm前後。 |
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インド風・生花。 あちらでは、水盤に水を張って、そこに花を浮かべる。 この菊花は今朝、表参道の花屋で調達。 「開き過ぎで特売」であった。 こちらとしても好都合。 |
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テキスタイル・デザイナー真木香、初の個展。 自ら織り上げたストールには「蕪の森STUDIO」という小さな織りネームがついている。 自分で織ってみて、「イスラムディン尊敬しちゃう」とインドの織師たちを見直したらしい。 |
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香、千秋の姉妹を含め、五人がかりの展示作業。 ストールを掛ける枝は、蕪の森から拾ってきた。 先日の大風で吹き飛ばされた、ナラや白樺の枝だという。 |
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蕪の森で織り上げた、コットンやウールのストール。 織りはニューヨークのジャック・ラーセン・スタジオで仕込まれたという。 |
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メイン・ウォールを飾るのは、 五連のウネ織ストール。 真木香の記念すべきMaki Textile デビュー作だ。 |
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二階には香デザインのMakiストール。 色づかいの得意な真木香らしく、カラフルな布の森になっている。 「途中どうなるかと思ったけど、いい展示になった」と満足気な真木香。 |
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石田氏の作業場を後にして、今度は群馬県立「日本・絹の里」へと赴く。
ここ「絹の里」主催で、「座繰り糸による織りの公募展」という企画がある。
今日がその展示会の初日。
受賞者の表彰式に続いて、記念講演として真木千秋が一席頼まれたのである。
この公募展には、北は北海道から南は沖縄まで、百四十点を越える応募があったという。
主催者もその反響の大きさに喜んでいた。
審査員の中には、桐生の新井淳一氏も。
趣旨はもちろん、この伝統技術を保全し、需要増進を図ることだ。
座繰り糸を50%以上使って織るというのが条件だったという。
着尺や帯、ストールやインテリア布など、応募作はいずれもなかなかの力作。
座繰り糸への関心の高さをうかがわせる。
真木千秋の講演は、まあまあであったかな。
優しい新井淳一・リコ夫妻はたいそう誉めてくだすったが、本人はいたく不満足の様子。
ま、そもそもが手工芸家であって、ハナシ家じゃないから、それも仕方ないか。
展示会は来年2月5日まで。