いといと雑記帳 2010

 

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1月13日(水) 葉っぱのお披露目

ハギレ市5日目の正月13日。
木枯らし吹きすさぶ冬晴れの中、大村恭子の登場。
久々の竹林だ。
先月生まれた子供「一葉(ヒトハ)」を抱いている。

今、神奈川の実家に滞在していて、妹(祐子)&母親と一緒に車でやってきた。

昨年六月誕生の林太郎に続く、竹林二人目の赤子だ。(そういえば二人とも植物系の名前である)
みんなで回し抱っこする。
私ぱるばにも回ってきたので、仕方なしに受けとる。(あんまり慣れていない)
が、怪訝な表情を浮かべながらも、わりあいおとなしく抱っこされていた。
感心、感心。
林太郎に比べると、ずいぶん小さくて華奢な印象。

帰りに記念写真を撮ろうとするが、ちょっと機嫌が悪い。
「そろそろおっぱいかな」と恭子。
「じゃ授乳の写真にしよう」と言うと、「やだ」と断られる。
とはいえ、すっかりお母さん顔になっている恭子。

ところで、昨年末の雑記帳で「もうひとり身籠もっている」と書いた。
そのもうひとりとは誰か!? 様々な憶測を呼んでいるようである。
正解は、太田綾
結婚後、静岡に暮らしつつ、Makiの展示会や服のデザインに携わってきた。
今、四ヶ月目なんだそうだ。
我が国の人口増に貢献しているMaki Textile Studioである。

2月3日(水) インドより

今、インドにいる。
西部にあるプーナという街だ。
日本は節分大寒波で雪が降ったりしているらしいが、こちらはもう夏の陽気。
冷房を入れたいくらいだ。

今年の冬から春にかけて、Makiスタッフは日印間を忙しく行き来する。
一時帰国している真木千秋や図師潤子も、またすぐ渡印だ。
彼らはインドで年を越し一ヶ月ほど滞在して布&衣づくりに励んだのだが、北インドにある首都デリーは連日、冬霧に閉ざされ、寒くて往生したようだ。
南国で寒いと、ホントに寒い。
暖房や防寒具など寒さ対策が貧弱だからである。

私ぱるばは一昨日、デリーのニルー家を訪ねたのだが、一転して、じつに気持ち良かった。
冬霧は晴れ、陽は燦々と降り注いで、日本でいう五月くらいの気候か。
これは私の人徳のせいもあろうが、要は、デリーの冬が終わったということだ。
今回は気候も良いので、きっと仕事も捗ることであろう。(と言って退路を断つ)

プーナはOshoコミューンで有名なのだが、ここには現在、真木香も滞在し、ひとり羽を伸ばしている様子である。
しかし私はのんびり瞑想に耽っているいとまもない。
来週には東部オリッサ州へタッサーシルクの糸を見に行くのだ。

じつは最近、真木千秋も注目のタッサー糸と布がある。
写真のごとく濃色で美しい。
これがオリッサ州の奥地で紡がれ、織られているという。
奥地と聞くと黙ってはいられない。
だいたいタッサーの産地といえばインドでも大僻地。デリー在住のニルーたちでさえ訪れたことはないという。
そこで、誰に頼まれたわけでもないが、現地踏査を決定。
現在、情報収集に努めているところである。
ところで、現在インドからブログを発信中。染織とはまったく関係ないが、ヒマな人はどうぞ


2月21日(日) おもちゃプードル

先日、トイプードルが竹林にやってきた。
お客さんのこどもだ。
女の子で、1歳半。人間で言うと女子高生くらいだとのこと。
ご覧の通り、お母さんのバッグに収まって、まことに行儀が良い。
私ぱるばの手もペロペロなめたりして、愛想も良い子である。

実は今、トイプードルがMakiかいわいで静かな話題になっている。
真木千秋が両親にプレゼントしたのだ。
そうしたら両親、すなわち真木貞治・雅子夫妻がすっかりハマってしまった模様。

最近、真木雅子(バスケタリー作家)はパソコンでスカイプをやっている。
インドにいる娘達と交信したいばかりに、がんばってアカウントを開いたのだ。

その日、パソコンをチェックすると真木母がログインしていたので、さっそく呼び出す。
かくして史上初(でもないか)、トイプードル同士のスカイプ会議が実現するのであった。
もっとも、本人(本犬)たちはそんなに興味を示してなかったが。
やっぱニオイがしないとダメなんだろう。

親たちの話を聞いていると、トイプードルは小さいことが売りであるらしい。
真木家のCoco(♂)は六ヶ月で2.6Kgもあるので、「ハズレ」なんだと。
写真の女子高生は2.5Kgで、これは「アタリ」。
そもそも人間が無理して作り出した品種だから、かなり個体差があるようだ。

ところで、写真のお客さんは犬の服も作るそうだ。
ご希望の向きはMakiまで連絡のこと。
本人は使ったことないそうだが、Maki布でもできるかも。


3月3日(水) 藍の種を蒔く

今日、畑に藍の種を蒔いた。

昨年はいつ蒔いたか忘れたが、芽が出なかった。
それでもう一度蒔いたのだが、やっぱり芽が出なかった。
それであわててHPに掲載し、種を恵んでもらったのだ。
たぶん蒔き時が遅かったのだろう。

昨年のHPをチェックすると……
3月31日に蒔いたとある。

ということは、今年はけっこう早めに蒔いたことになる。
昨年は結局、5月中旬に蒔いて、発芽したようだ。

ところで、畑をならしていて気づいたのだが、もう藍の芽が出ている。(右写真)
昨年のこぼれ種だ。
枯れた藍草を積み重ねていたところから、発芽していたのだ。
ということは、この時期でも芽が出るということか。
遅霜とかあるし、さて、どうなることか。


3月16日(火) 竹林最大の危機

今、ふと竹林を覗いてビックリ!
椎茸がワラワラと出ているではないか。
椎茸とはもう十数年つきあっているが、一時にこんなに出たのは初めて。
最近よく雨が降り、そして急に春めいたものだから、みんないっせいに目覚めたのであろう。
四年前に種をつけたものだ。

しばし衝撃にうちのめされるが、そうしてばかりもいられない。
大ざるを持ち出し、スタッフと二人で収穫しまくる。
とにかく立派なのだ。
「どんこ」と呼ばれる肉厚の椎茸。
それも原木モノだ。
見るからに美味そう…
…というより、ともかくその量に圧倒される。
計ってみたら6.7kg!!
大収穫だ。

どうすんだろ、こんなにたくさん。
とりあえず、今晩は、ウチワみたいに大きなやつを椎茸ステーキだ。
なりは大きくても味は変わらないのである。
明日来店のお客さんにはおすそ分けだな。

 


4月5日(月) 北京のアライ・ラマ



新井氏が今回のために作ってきた大きな布。アルミを蒸着させている。手前が銀色。奥が金色。
右端が新井氏。隣が奥方のリコさん。

 

 今、田中ぱるばは北京滞在中。
 テキスタイル・プランナーの新井淳一さんが清華大学で布の展示会をするのだ。面白そうだったので私もカバン持ちとして同道。

 清華大学のテキスタイル科では新井氏の教え子が教鞭を執るなど、氏とは縁が深い。展示会もこれで二度目。
 今回は氏の五十年にわたる布づくりの軌跡を振り返るという趣向だ。

 体育館みたいに広々とした大学のアートギャラリーに、今日・明日の二日間かけて展示作業をする。
 明後日がオープニングだ。
 今回は特別に氏が「僕の一番弟子」ということで真木千秋の布も展示してくれる。それでストールを十数点持参。Makiの中国初見参だ。

 さすが大陸だけあって大学の敷地も広大。タテヨコとも3km前後のサイズだ。学生はみんな自転車で移動している。
 新井氏夫婦と私は研究者用のゲストハウスに泊まり込んでの作業だ。4月ということで暖房が切られ、チト寒い。こっちの人々は剛健なのだ。(たぶん)
 さてどんな次第になるか、続報を請うご期待。

 



展示作品である黒い「コート」を羽織った学生とツーショット。清華大学といえば中国屈指の名門で、全土から優秀な若者が集まってくる。中国テキスタイル界の次代を背負う人々だ。

 


4月8日(木) 新井淳一的布 — 50年的軌跡





 

 昨日4月7日は新井氏の展示会初日。
 場所は北京・清華大学の美術学院ビジュアルアートセンターだ。
 入口に「新井淳一的布 — 50年的軌跡」とある。(写真左上)。「的」というのは「の」という意味らしい。実際は布を作り始めて60年近くになるようだ。

 中に入ると、高い天井から金と銀の大きな布が吊り下げられ、まことに壮観。この金の大布は今回の展示会用に新井氏が新たに創り上げたものだ。アルミ蒸着の手法を使っている。(写真左中)
 壁面にはとりどりの布が垂れ、林立するマヌカンには学生たちが思い思いに氏の布を着せつけている。(写真左下)

 写真右上は開会の挨拶をする新井氏。
 簡潔なスピーチだったが、要は「テキスタイルの仕事とは世に平和をもたらすこと」ということだ。ともすれば専門的な狭い世界に閉じこもりがちのこの分野で、そんなことをサラッと言ってのけてしまうのも、氏の氏たるゆえんであろう。
 氏の右側に写っているのが、今回のオーガナイザーで通訳も務めてくれた氏の愛弟子・鄭さん。

 展示会場では氏の特別講義もある。(写真右下)
 ちょうどアジアテキスタイルコンペも同時開催されていたので、各国からの参加者や清華大学の学生たちを前にして、新井氏が自らの布作りについて語る。予定の一時間を大幅にオーバーしたのだが、展示されている布の量から比べるとやはり時間が足りない。それでもメモを取りながら熱心に聴き入る学生たちの姿が印象的だった。

 体調の都合で車椅子を使う新井氏。ここ清華大でもよほど慕われているのであろう、どこへ行っても周りに人だかりができる。
 ある英語のテレビクルーに捕まってしまった新井氏、「ぱるば、よろしくお願い」と私に回し、自分は休憩のため立ち去ってしまう。そのクルーに、「それでは新井さんの布について喋ってください」とカメラを向けられ大いに困惑。というのも、私は新井氏のただの友人であり、氏の布についてはよく知らないのだ。それでもカメラを向けられると条件反射でいろいろ喋ってしまう。インターネット放送されるらしいから、その節にはお知らせしよう。

 





 

 


4月18日(日) 中國日報ネット放送

北京・清華大学の新井淳一展。
先日の記事の中で、ネット放送についてお伝えしたが、そのサイトから連絡があった。
「掲載したのでご覧ください」とのこと。
アドレスは、


http://www.chinadaily.com.cn/video/2010-04/12/content_9716933.htm#

そこでさっそく見てみる。
2分43秒の短いクリップだが、会場の様子などがよくわかる。
私の悪戦苦闘インタビューはご愛嬌として、後半の新井氏挨拶などなかなか感動的である。
そのうちまた竹林でアライラマに説法してもらおうと真木千秋と話している。

ところで、どうやら氏はカメラを前にして自分の名前を中国風に発音しただけで、その後、何も知らない私に丸投げしたらしい。
「新井淳一」は中国語では「シンチン・チュイー」と言うのだそうだ。


5月11日(火) 繊維学部資料館




 

 今、信州上田の実家にいる。
 ここ上田市には全国で唯一の学部がある。
 信州大学の繊維学部だ。
 大学の繊維学部は日本ではここ信州大学にしかない。
 上田紬(つむぎ)で知られる長野県上田地方は蚕糸産業の一中心地だった。明治43年に官立の上田蚕糸専門学校ができ、戦後それが信州大学の繊維学部となる。明治43年は西暦1910年なので、今年が「創立百周年」ということになる。
 実は愚父・一夫(かずお)はここの卒業生。実家はかつて蚕種の生産もしていたことがあり、蚕糸や繊維とは昔から縁が深いのだ。
 ここ信州大学繊維学部では、百周年を記念して、資料館をオープンした。そこで今日は両親ともども見学に出かける。卒業後一度も訪ねたことがないという愚父にとっては、実に六十年ぶりの母校だ。

 資料館はかつての繭蔵を改造した赤レンガの建物だ。(写真左上・左端の人物が愚父)
 スタッフの関係で常時オープンではなく、事前に連絡して見学する。今日は事務職員のMさんがつきっきりで案内してくれる。
 内部には繭標本、繰糸器具など蚕糸に関する資料が並ぶ。江戸時代の養蚕技術に関する古書や、蚕糸にまつわる浮世絵が興味深い。右写真の座繰りなどMakiでやっているのと基本的に同じだ。スタジオ用に一枚欲しいが、残念ながらミュージアムショップは無い。
 歌麿筆のも何点かあるが、公開はされておらず、ネットでしか見られない。その中の一点に描かれた繰糸法は興味深い。繭から引いた糸を高いところに引っかけて、それから巻き取っている。座繰りではなく、立繰りだ。

 それからひとつ、これは資料館ではなく、実験棟にあった標本。(写真左下)
 左側のサンプルに「カシミール/ジャム野蚕」とある。
 聞いたことのない名前だ。
 インド北部にあるジャム・カシミール州産の野蚕なのだろう。右側にある通常のタッサーシルク、すなわち熱帯タッサーとは、糸の色も繭の形も違う。温帯タッサーの一種か。
 これからMakiも関わることになる北部インドには、まだ未知の素材があるようだ。

 蚕糸棟の傍らに、初代校長・針塚長太郎揮毫による巨大な蠶霊供養塔がある。
 桑畑では教員や学生が一緒になって作業をしていた。明日は遅霜があるかもしれないということで、防寒の備えをしていたのだ。桑はとりわけ霜に弱い。
 実のところ現在の繊維学部で蚕糸研究の比重はそれほど重くない。それでも上田蚕糸専門学校以来の伝統は色濃く残っているようだった。

 

 

5月31日(月) 絶滅危惧種

私ぱるばの弟子に大村風生(ふき)というテディベア作家がいる。
昨年コンペで賞を取ったことは本頁でもお伝えした

その大村風生の最新作がコレ→。
最新も最新、昨日仕上げたという。
シロクマくん。最近では絶滅危惧種だ。
生地はタッサーシルク×綿。
漂泊したギッチャ糸をヨコ糸に打ち込んだ布で、昨春のハギレ市で見つけたものだ。

高さは5cmほど。左側のタッサー繭と比べればそのサイズがわかるだろう。
下に敷いた白布がモトとなったタッサー×綿の生地だ。
昨年の記事にもある通り、大村風生はMakiの布もよく使う。
今までにMaki布を使って、クマやネズミ、ウサギなど三十種ほど作っているという。

Maki布を使うときは、まず布を手にしてから、何を作るか考えるという。
その辺は真木千秋に通ずるところがある。真木千秋も糸を手にしてから何を織るか考える。
今日はカディ展観覧の大村風生。
ベージュのカディ反物を見て、これでウサギを作ろうかと思案の体であった。
完成の暁にはまたお伝えしよう。


6月7日(月) 表参道&丸ノ内

様々なお店とご縁のある当スタジオだが、今日ご紹介するのは「かぐれ」。
7月30日から十日間、Makiの展示会がある。
表参道と丸ノ内に店舗があって、二ヶ所同時開催となる。
その母体は大阪のとあるアパレルメーカーで、国内に七十数店舗のセレクトショップを展開しているそうだ。
しかしそれに飽きたらず、オーガニックコットンを中心とする自然感覚の店を!ということで、この「かぐれ」が誕生。

右写真はその表参道店。もうじき二周年になるという。
右側の人物が店長の渡辺敦子さん。
左側の人物は、当スタジオキュレーターの石田紀佳(のりか)だ。

表参道にもかかわらず、店の周りは草ぼうぼう。
じつはこれ、石田紀佳が手懸けた「雑草の庭」なのだ。
そんな縁もあって、石田がかぐれのイベント企画を手懸けることになる。
今般のMaki展も石田が下手人なのである。
さてどうなることやら。顧客年齢層もだいぶ違うし…。
ともあれ、しっとり落ち着いた丸ノ内店とともに、ひたぶるに心地良いスペースなので、みなさんもこの機会に探訪してみると良かろう。


6月23日(水) ホトトギス

竹林Shopではよくホトトギスの声が聞かれる。
それもけっこう至近距離。

ホトトギス、ご存知かな?
夏の訪れとともに渡ってくる鳥だ。
今年も一月ほど前、5月19日にやってきた。
毎年、よく忘れずにやってくるものだ。
その声を聞くと、そぞろ夏めいた気分になる。

都会にはあまりいないから、知らない人も多いみたい。
先日も、「ウグイスが歌の練習をしているのかと思った」と言うお客さんがいた。
違うのだ。
「ホーホケキョ」じゃなくて、「ホ・ト・ト・ギ・ス」と鳴くのだ。
今年はスタッフによく指導しておいたから、知らない人は尋ねていただきたい。

ただし、来れば必ず鳴くというものでもない。
鳴かぬなら鳴くまで待つのが肝腎。


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