絲絲雑記帳 2011
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いといと雑記帳 10後/10前/09後/09前/08後/08前/07後/07前/06後/06前/05後/05前/04後/04前/03後/03前/02後/02前/99/98/97/96
竹林日誌 10前/09後/09前/08後/08前/07秋/07夏/07春/06秋/06夏/06春/05秋/05夏/05春/04秋/ 04夏/04春/03秋/03夏/03春/02後/02前/01/99-00/「建設篇」
1月1日(土) 迎春 2011
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謹賀新年。
今年もよろしく!!
私ぱるばは今、信州上田の実家に滞在中。
雪が降るものと期待していたのだが、関東甲信地方はサッパリ。
近来稀に見る穏やかな元旦だ…と愚父が申していた。
特に用事もないので、新作紹介のページをいじってみた。
こんな感じ。いかがかな?
スタジオの入口にも松飾り。(写真左)
ただ、shopのオープンは 1月9日(日曜)のハギレ市からなので、お間違えなく。
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1月2日(日) 信州名物
ときどき、「信州名産の食べ物って何ですか」と聞かれる。
まあ、山国だし、たいしたものないんだよ。
ソバとか、野沢菜とか、おやきとか…
現在、信州上田の実家に滞在中。
今日は愚父の知人宅を訪問する。
実家から100kmほど離れた、南信州の伊那。
定年退職後、農業を営んでいるY氏宅だ。
突然の訪問に、奥さんがいろんなものを出して、もてなしてくれる。
その中にあったのだ、信州名物。(写真右上)
左下から時計回りに、蜂の子、イナゴ、そして、ザザムシ。
海の無い長野県。
伝統的にこういうモノをタンパク源としてきた。
いずれも佃煮。
蜂の子はジバチの幼虫で、なかなか美味。生でも食うという。
イナゴは海老みたいな食感。栄養豊富だ。
以上は私も食べたことあったが、ザザムシは初めて。
これは川虫だ。釣エサによく使う。
かなり高価なものだが、ちとクセがある。
これは天竜川流域(伊那谷)の伝統食らしい。千曲川流域(上田)にはない。
ともあれ、こんなに昆虫を食うのも信州人くらいだろう。
しかし、肝腎な某昆虫の姿がない。
Y氏に尋ねてみると、JR伊那駅裏手のバスターミナル売店に置いてあるとのこと。
この虫はかつて広くタンパク源として利用され、中国等では今も食膳に供されている。
そこで敢然、バスターミナルに赴くと…
「信州の珍味」がズラリ揃っているではないか。(写真右下)
さて、その昆虫とは…。 |
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1月3日(月) 穂高の天蚕
天蚕の里、長野県「穂高」。
かつては穂高町だったが、今は安曇野市だ。
日本の野蚕飼育の中心地として、1994年に第二回国際野蚕学会も開催されている。
江戸時代の天明年間(18世紀)から天蚕飼育が始まって、明治の中頃が最盛期。その後、病害虫や天災、戦災で生産が途絶えたが、戦後、行政が中心になって復活させる。
現在、従来からの地元生産者4軒と移入してきた4軒、あわせて8軒が天蚕の飼育に携わる。
有明山の麓、安曇野市の有明に、「安曇野市天蚕センター」がある。
正月三日、穏やかな晴天に誘われて、信州上田の実家から車を走らせ、訪ねてみる。
事務局長の古田さんは、もともとは千葉の人。
天蚕糸の輝きに魅せられ、旦那さんと一緒に穂高に転入。自宅で天蚕を育てながら、センターの運営に携わっている。
今日も午前中はクヌギの剪定をしていたとのこと。
午後から特別に開館してもらって、映像や展示品を見学しながら、いろいろお話しをうかがう。
近縁種だけあって、天蚕はタッサーシルクや柞蚕と共通する部分が多い。
天蚕の養蚕も、立木に放って育てる「半養蚕」で、これはタッサーシルクの主要品種(ダバ種)と同じだ。
穂高ではクヌギの立木に放つ。
立木をネットで蔽うのだが、それでも歩留まりは50%。(つまり卵100個から最終的に繭になるのが50個)。
天敵は、蟻、カエル、カメムシ等。
タッサーシルクはネットで蔽わなくても歩留まり50%だから、天蚕より飼育しやすい。
穂高では中国柞蚕も試験的に飼育するそうだが、天蚕は柞蚕より弱い生物だそうだ。
だから営繭の時など、農家がつききりで世話をするという。
ちなみに、中国柞蚕もクヌギで育つ。そして天蚕との間にF1品種ができるが、そのF1には繁殖能力がないという。
現在、穂高の天蚕はウィルス病に悩まされているらしい。その点は私たちが昨夏訪ねたヒマラヤ山麓の温帯タッサーも同じだ。
右写真はクヌギの圃場。クヌギは大木になるので、毎年、根元近くまで枝を剪定し、作業しやすい高さに揃える。
天蚕の営繭は6月10日前後ということで、その頃センターを訪れれば幼虫や繭が見られるとのこと。
安曇野市天蚕センター 長野県安曇野市穂高有明 3618-24 TEL0263-83-3835 入場無料 |
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1月4日(火) パソコンバッグ
これ、真木千秋のパソコンバッグ。
先日パソコンを新調したので、それにあわせて自作する。
表地は刺し子。素材は様々なハギレ。糸はタテ糸の残糸。西表島で雨に降り込められた時にチクチクやっていたものだという。
裏地と持ち手はエリ蚕布のザクロ染め。ふくらみを持たせるためエリ蚕布は重ねている。
ちょっと目にはパソコンバッグに見えない。MacBook Air11インチとのコンビネーションがなかなかクール。
パソコンのインナーバッグとしても使え、そのまま大きなバッグにスポッと入れてもいい。
慣れない手で縫製するのは難しかったが、これに入れるとバッグもパソコンも大事な宝物みたいに感じられるとのこと。
みなさんも挑戦してみたらいかが。
自分でできない人は、今回インドで似たようなものを作製予定なので請うご期待。
ともあれ、これを提げて明後日、天竺へと旅立つ真木千秋である。 |
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1月5日(水) 蚕の非繊維利用
平たく言うと、蚕の食品利用。
今年になってそういうシーンによく出くわす。
たとえば、先日届いた国際野蚕学会の会報にタイの野蚕料理研究が掲載されていたり、インド・アッサム州の研究者からエリ蚕の食品化について問い合わせがあったり。
そもそも、蚕の類は食品としてもよく利用されてきたのだ。
場所によっては、繊維より食品としての利用が主だったりする。
たとえば一昨年、中国・寧波の料理屋で、魚介類に交じって活きた蛹を見かけた。大きさから見て柞蚕であろう。活きているということは、繰糸の副産物ではなく、食べるために繭を裂いたと思われる。
三日前(1月2日)の記事にも書いたが、信州伊那で、蚕の佃煮を見つけた。
「さなぎ」と「まゆこ」だ。
試しに購入し、本日、竹林の昼食時に、スタッフともども食べてみる。
まず、「さなぎ」。
みんな蚕の繰糸は経験し、さなぎはお馴染みなので、「え〜、こんなの食べるの!?」と及び腰。
醤油で濃く味付けしてあるが、繰糸の時に匂う、蚕独特のクセがある。
「蚕三つで卵ひとつ」と言われるくらい栄養豊富だという。
しかし、虚心坦懐に味わっても、特別ウマいというものではない。
他に何も食物がなかったら有難く頂くだろうが…。
そして「まゆこ」。
これは蛾なのだ。
繭から羽化したもので、羽は除去してある。
こんなものまで食うとは知らなかった。
伊那の売店のオバサンも食べたことないと言っていた。
ただ、一昨日訪ねた穂高・天蚕センターの古田さんいはく、地元の古老によると蛾のほうがウマいとのこと。
それで箸をつけてみると、確かに、蛹やザザムシよりクセがない。
黙って出せば、誰も蚕蛾だとは思うまい。
というわけで、食品としての家蚕、初体験。
柞蚕やエリ蚕はどんなだろうか。
もしかしてインドにはタッサーシルクのカレーなどあるんだろうか。
(見たことない)
(みなさん食べたい?)
1月12日(水) 渡天の季節
年も改まって早12日。
毎年いまごろはインドで織物作りに精を出す時期でもある。
彼の地に赴くことをいにしえの人々は渡天と言った。天竺に渡るのである。
先週真木千秋は一足先に渡天、来週には私とスタッフ二人も相次いで国を離れる。
真木千秋は先日ゲットしたRicho GXRで写真を撮っては送ってくる。(実は私があてがった)
ブログにupしているので、見てやってほしい。
ここ竹林ではハギレ市の真っ最中。
「まだまだ掘り出し物がいろいろ。福袋も残っているのでぜひどうぞ!!」とは、留守を預かる店長・大村恭子の弁。
1月17日(月) インド到着
昨夜インドのデリーに到着。
成田から十時間以上の旅だった。
この時期、偏西風の影響で時間がかかる。
対地速度は時速六百km台から七百km台。
逆方向は風に乗って時速千kmを超えるから、行きは帰りの1.5倍くらいかかる。
昨年オープンしたばかりの新ターミナルで真木千秋の出迎えを受ける。
こちらも真冬ではあるが、日本から来るとかなり温かく感じる。
時差が三時間半あるから、今朝は2時半に目覚め、やや時間を持てあます。
日本だと午前6時だ。
今日は朝の便で南インドへと向かう。
茶綿の里の訪問だ。
1月28日(木) デラドンの春
今日、5人でデリーからデラドンへ飛ぶ。
5人というのは、真木千秋、石田紀佳(当スタジオ・キュレーター)、つぶつぶの郷田和夫・ゆみこさん、そして私ぱるば。
なんでつぶつぶ(雑穀)の御両人が一緒なのかというと、私たちと浅からぬ因縁があるからだ。
デラドン郊外のganga工房には、ラケッシュを始めたくさんの人々が待っている。
ヒマラヤの麓、北インドのこの土地も、一番寒い時期は終わり、日本で言えば四月頃の気候だ。
夏の間は水田だったところに、今は青々と麦が育っている。
田んぼの畦(あぜ)には、日本では大豆が蒔かれるが、こちらではエンドウ豆が育ち、白い花を咲かせている。
もしかしたら居るかもしれないコブラも、今は穴の中でお休みだ。
そこでしばしお散歩を楽しむ。
写真は、麦畑から振り返って工房を見たところ。
中央の白い建物部分がganga工房。
明日からみんなでヒマラヤ地方の山中深く、ラケッシュの両親の里へ赴く。
帰ってきたらまたお伝えしよう。
1月29日(金) 沐浴
朝早く、デラドンの工房を出発。
車二台に分乗し、リシケシの街からガンガー(ガンジス川)を遡る。
目的地はガオン。ラケッシュの両親の実家がある。
リシケシから狭隘な谷を遡ること約二時間。
聖地デヴプラヤグに到着。
ここは二つの川が合流して、ガンガーの誕生するところ。
合流点にはヒンドゥー教の寺院があって、敬虔な信徒はそこでガンガーの水に触れ、お祈りをする。
ここでガンガーの水に触れると、積みし無量の罪障が滅ぶのである。
昨年8月、野蚕糸を求めてガンガー上流を旅した折、ここデヴプラヤグで頭まで水に浸かり、当スタジオ積年の罪障消滅を図ったのであった。
今回は冬でもあるし、さすがに全身沐浴はあるまいと思っていたのだが…。
現地に来ると、どうしても水遊びの衝動にかられてしまう私である。
こういう時、褌は便利である。
西洋下着だとどう見ても下着だが、褌だと、かかる場合、なんとなく沐浴ウェアに見えるのだ。
それにしても、やっぱ水は冷たかった。(私の顔がそれを物語っている)
おかげでひとまず、当スタジオの罪滅ぼしも叶った次第である。(またすぐ積もるのであるが)
そして私たちは谷間の隘路を一路ラケッシュ両親の里へと向かうのであった。(続く)
2月19日(土) アッサム土産
五日間にわたるインド北東部、アッサムの滞在を終え、昨夜デリーへ。
(真木千秋とラケッシュは一足先に帰って、それぞれの営みに戻っている)
これは私たち二十余年のインド体験の中でも実にめくるめくものであった。
その様子はこちらに連載中!!
糸と布のお土産、たくさん。
(それとアッサムティーも少々)
かなり重量オーバーであったが、空港カウンターのお姉さんが見逃してくれる。
まだ二月だが、首都デリーは毎日五月晴れ。
その中で持ち帰った布を水で洗う。
ムガ蚕の布(左)と、エリ蚕の布(右)。
春風にへんぽんと翻るアッサムシルク。
空気がカラッとしているから、たちまちのうちに乾く。
この布をどうしようかいろいろ思案の真木千秋であった。
なお、いまだ冬の真っ最中であるらしい竹林では、こういう催しが行われているのでお見逃しなく。
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2月23日(水−夜) エリシルク・ヴェスト
アッサムから戻って一週間余。
そのとき見つけて持ち帰った糸から、もう試作品ができた。
エリ蚕糸のヴェストだ。
ほかに手紡ぎヒマラヤウールを10%ほど。
エリ蚕糸は生成。
ウールはタテにグレーを入れて細いストライプ。
それから白ウールをキングラで染めてアクセントにしている。
キングラというのは先日山村から持ち帰った木の根だ。
今までこの種のヴェストはウールだった。
それをシルクにしたことで、ぐっと高級感が増す。
試着した真木千秋の顔にもそこはかとない満足感が…。
どっちにしろ、アッサム行きをけしかけた私としては、その成果が生かせるというのは欣快の至りである。(ハズレも多いので)
他に茶綿を合わせた作も企画中。
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3月7日(月) 雪見ティー
昨日から雨の予報。
朝、起きだして外をチェックすると、一面の銀世界!!!!
雪国の人にはどうということもあるまいが、インド帰りの身としては嬉しいものだ。
特に昨日帰国の真木千秋やラケッシュにとってみれば、ちょっとしたプレゼント。
たまたま店に遠来の客があったので、カフェでティータイム。
「どのお茶にしますか」とスタッフが聞くので、アッサムティーを所望する。
先月、本場アッサムで購入し、はるばる運んできたものだ。
まだ一度も淹れたことがないので、さてどんな味だろう。
そんなに期待していなかったのだが…
ウ〜ム、なかなかイケる!!
シンプルなミルクティー。
竹林の雪を眺めながら、まことに甘露であった。
午後のティータイムには、ラケッシュが淹れてくれた。
彼はひとひねりして、ミルクのほかに生姜とカルダモンを入れる。
マサラチャイだ。
インドから持参のスウィーツがお茶菓子。
4月の「gangaの春」展でみなさんにふるまおうか…
と思ったけど、1kgしかないからなあ。
その前に飲み尽くしてしまうかも。
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3月9日(金) 松屋展示会
本日より銀座松屋百貨店での展示会。
タイトルは「春の光を織る」。
銀座見物がてら、五日市から真木千秋始めスタッフ7人が「上京」。
昔からのお客さんたちとともに、かなりにぎやかな初日だった。
松屋で初めて展示会をしたのは、18年前の1993年であったかと思う。
場所は7階「遊びのギャラリー」。
広さ四畳半くらいの小さなスペースだった。
その後、基本的に毎年春と秋、二回ずつ展示会を開催。
会場は、ほどなく、お隣の「シーズンスタジオ」に移る。こちらは6畳ほど。
そして19年目の今年、店内が大幅に改装される。
かつての「遊びのギャラリー」&「シーズンスタジオ」は無くなり、ひと続きのコーナーとなる。そこにヨーガンレールの常設店舗「ババグーリ」が店開き。
その北隣、小さなギャラリースペースだったところが一新され、改めて「遊びのギャラリー」としてオープン。
こちらが今回からの展示会場となる。
広さは今までの二倍。
真新しくてキレイ、ゆったりとショッピングが楽しめる。
「今回からの展示会場」と書いたが、それはいささか希望的観測なのである。
というのも、今まで二つの会場で展開していた各作家の展示会が、ここひとつに集約されるからだ。
今回はたまたまMakiもやらせてもらったが、この先も今まで通り年に二回できるという保証はない。
松屋で展示会を催したい工芸作家はいっぱいいるのだ。
ま、そういうことは神のみぞ知るで、我々はただ淡々とやるのみである。(と言いつつもかなりぐゎんばっているが)
展示会は22日(火)まで。
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3月15日(火) モバラコ!!
モバラコとは「おめでとう」という意のヒンディー語。
めでたいことのあまりない今日このごろ、Maki Textile にひとつ、めでたいことがあったのである。
糸が着いたのだ。
着いたと言っても五日市スタジオではなく、遠くインドのganga工房。
そして糸とは、アッサムのエリ蚕糸だ。
先月、インド東北部、アッサム州にでかけたことはここに記した通り。
そのとき、ディパリという婦人に出会い、当スタジオ専属の紡ぎ手(スピナー)になってもらう。2月15日のことだ。
日本ではおそらくここで「めでたし」なんだが、インドではなかなかそういうワケに行かない。
なにしろ悠久の亜大陸に住むのんびりした人々だ。
はたして、千数百Km離れた僻遠の地から、本当に糸が届くのか!?
それが、届いたのである。
ディパリと会ったちょうど一ヶ月後の今日、3月15日。
重さにして10Kg近く。
わずか一ヶ月だ。これはインドとしては異例の速さではないだろうか。
gangaの工房長サンジュが、すぐメールと写真で知らせてきた。(写真右)
アッサムから発送して、到着まで一週間ほどかかっている。
写真を見た真木千秋「なかなか良さそうな糸!!」と満足げ。
この裏にはもちろん、蚕糸指導員レヘマンの努力があったのは言うまでもない。
やはりちゃんと仕事をしてくれる男だったのだ。
そういうわけで、めでたい!! モバラコ!!
アッサム・ティーで乾杯するMakiの面々であった。
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3月16日(水) ともしび
夕方の六時半過ぎ、突然、電灯が消える。
予告されていたこととは言え、じつに、あっさりと消える。
用意していたロウソクに火を灯す。
中サイズのロウソクだが、けっこう明るいものだ。
外に出ると、あたり一面、ほの白い月明かりが敷きつめられている。
一本のロウソクのもと、真木千秋+ラケッシュと三人で夕食を摂る。
なんとなくクリスマス。
そういえば、ラケッシュの母方祖父母の家には電気が来ていない。
ヒマラヤ山中の僻村。
毎夜、ランプの灯の中で夕食だ。
ちょっと前の日本でも、これがごく普通の生活だったのだ。
食後、お茶をしていると、突如、電灯が点る。
あまりに明るく、そして、フラット。
その光の三割は、原子力に由来するという。
たまらず消灯し、ロウソクに戻る。
外を見ると、しかしながら、街灯によって月明はかき消されている。
ロウソクの灯というのは、なんだか手紡ぎ糸のようだ。
布にしても電気にしても、湯水のごとくに消費するものではあるまい。 |
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3月25日(金) 「ganga & maki の春」は5月!!
1月末に当スタジオから案内状をもらった人、ご記憶だろうか。
「4月16日 — 4月24日・ganga & maki の春」という展示会予告が掲載されていた。
その催しに向け、インドで製作に励んできたのである。
しかるに、このたびの災害。
計画停電によってJR五日市線の運行もままならない。
そこでご案内。
「ganga & maki の春」は5月1日(日)から開催!!
5月になれば計画停電も解除になるらしい。
織物作品のほか、ヒマラヤ料理や講座などいろいろ企画しているのでお楽しみに!!
4月5日(火) 茶綿糸!!
昨日、インドから茶綿糸が届く。
いやぁ、長かった〜
南インドに茶綿の里を訪ねたのが、今年の1月中旬。
そのとき、糸と布を注文してきたのだ。
糸は二種類。縮れた強撚糸と、普通撚の糸。
糸については、二週間もしたら送るよ、と茶綿組合事務局長のアブドル氏。
ところが、一月経っても届かない。
何度も催促の電話をかけるが、その度に、明日送るとか、今週中に送るとか…。
あるときなど、「先週送ったのに戻ってきてしまった」とか。
ホントかよ!? それも一月以上前の話だ。
ラケッシュいはく、前払いしなかったのがまずかった、とのこと。
お金をもらえば、いくらのんびりインド人でも、やはり気になって仕事するんだそうだ。
事実、前払いしてきたアッサムのエリ蚕糸は一ヶ月以内に第一便が届く。
あと、ウチの注文があまりに少量だから、きっと後回しにされるのだろう。
「でもそのうち届くよ」とラケッシュ。
その言葉通り、二ヶ月半の後に第一便が届いたのであった。
縮れた強撚糸。
オーガニックの茶綿糸だ。
まずは目出度い。
さ、これをどう使っていくか、今後が楽しみだ。 |
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4月23日(土) 信州上田・アグリカフェ
長野県上田市の「月のテーブル」。
これは私ぱるばの実家なのであるが、愚妹・田中惠子がカフェギャラリーを運営し、当スタジオの作品も扱ってきた。
このたび惠子長女の明緒(あきお・すなわち私の姪)が加わり、名前も「月のテーブル」から「アグリカフェ・あまてる」に改め、再スタートを切ることに。
惠子が今まで通りギャラリーを運営し、明緒がカフェを担当する。
自家の田んぼで米を作り、畑で無農薬野菜を育て、ランチなどを提供したいということで、アグリカフェ。
アグリカルチャー(農業)+カフェという意味。
4月29日オープン。
カフェスペースではMakiの小物も含め、手工芸品も並ぶ。
蔵を改造したギャラリースペース「さ蔵」ではMakiの展示会も企画。
詳しくはこちら。
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4月28日(木) 映像トーク!
5月1日(すなわち三日後)から始まる maki+gangaの5月 展の特別企画「田中ぱるばによる映像トーク」。
これは一日二回あって、午後1時と午後3時から、それぞれだいたい一時間。
今回は前と後とで出し物が違う。
午後1時からは「野蚕の大地・アッサム」。
午後3時からは「gangaの原点、ヒマラヤの山村」。
どちらも今年の新春に訪ねた場所で、世界初公開の映像だ。
現在、その編集作業に勤しんでいるところである。
最近は海外からもお呼びがかかり、先週は中国の古都・西安で映像トークをしてきた。
もちろん中国語はできないから、通訳付の日本語講演。
おかげさんで、彼の地のご婦人たちにも楽しんでいただけたようで、多少なりとも日中友好に貢献できたかな。
5月1日から8日まで毎日上演(!)。
入場無料。
ただし、初日だけは諸般の事情から、午後12時と1時から。
場所は竹林母屋の二階。(晴れてると暑いかも) |
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5月2日(月) 雨天結構!!
ゴールデンウィークはタケノコのシーズン。
ここ竹林でも、孟宗のタケノコが顔を出した。
今しがた掘って、即、茹でたところ。
ウマそう!
しかし、おあずけである。
パーティ用なのだ。
明日夕刻ここ竹林で「maki+gangaの5月」パーティがある。
パーティったって、焚き火の周りで太鼓叩いて踊るだけの話だ。
たまにゃそういうのも良いだろう。
それから、日頃のご愛顧に感謝して、夕方以降、飲み食いタダ。
日頃ご愛顧してない人も、まあこの際まとめて面倒見よう。
天気予報を見ると、明日夕刻、空模様が怪しい。
しかし、シェフ・ラケッシュは既にタンドーリチキンを仕込んでいる。
ラケッシュがシェフに戻るのは久しぶりのことだ。
こうなったら雨天決行だ。
東北の詩人も言うではないか、「雨ニモ負ケズ」!
(写真・大村風生) |
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5月5日(木) 藍+香菜+米
藍の種を蒔く。
微妙に難しいのだ、この作物。
去年は3月と4月に蒔いたが失敗。5月中旬に蒔いたのが成長した。
一昨年もやはり5月中旬のが成長。
さて、5月初旬のはどうなるか!?
ついでにコリアンダー(香菜)も収穫して、ラケッシュにプレゼントする。
maki+gangaの5月 展のランチに使うのだ。
昨年秋に蒔いて、冬を越したコリアンダーだ。
ラケッシュは「美味しい」と言っていた。
あの強烈な香味野菜にも味の違いはあるんだろうか?
今回のランチ、まだ食べていないので、明日あたり試してみよう。
そうそう、昨日、主食のインド稗(ヒエ)が底をついた。
このゴールデンウィーク、けっこうカフェが盛況だったのだ。
それで急遽、愚父に米を頼む。
早速、精米された米30kgが届く。
手前味噌(米)じゃないが、けっこうイケるのだ。
よって、明日からインドランチの飯は信州上田のコシヒカリ!
5月6日(金) ランチの出来栄え
今回のイベントで初めて、ヒマラヤ・ランチを食べた。
弊社会長としてはきちんとチェックを入れないとな。
映像レクチャーの終わった2時過ぎに、カフェに入る。
厨房に立っていたスタッフに、まだランチある?と聞くと、まだあるとのこと。
今日のランチは美味しいですよ、とそのスタッフ。
まあ、不味いとは言わないだろうな。
一見すると、いつものランチとそう大差ない。
巷のインド料理に比べると視覚的にかなり地味。
何の期待もなく淡々と食べ始めると、しかしながら、確かに美味しい。
ひよこ豆のカレーだ。
青菜とタケノコ料理が添えられている。
こんなの毎日出してたらお客さんもきっと喜ぶだろう。
すこぶる満足してカフェを出ると、チャイハウスにシェフ・ラケッシュの姿が見える。
ラケッシュ、美味しかったよ、と声をかけると、私も美味しいと思いました、との答え。
自分でも出来栄えに満足していたようだ。
しかしながら、逆を言えば、美味しいと思わない時もあるということだ。
まあ確かに人間、何につけ出来不出来はあるものだ。
会長としては、また明日もチェックを入れる必要があるな、と思うのであった。
5月11日(水) パシミナ
先日の8日、「maki+gangaの5月」展が、無事終了。
ホッとする暇もなく、明日から真木千秋+ラケッシュ+私ぱるばはインドだ。
今回、私の渡印目的は、ズバリ、パシミナ!!
真木千秋は二十数年前インドに渡った時から、手紡ぎのパシミナ糸に関心があった。
インドのパートナー、ニルーからサンプル糸をもらったが、入手先はわからなかった。
右写真がそのときニルーからもらった手紡ぎパシミナのサンプル。
淡青色に染色してある。
一昨年、ganga工房でヒマラヤウールを使うようになった。
makiにとっては初めての手紡ぎウールだった。
手紡ぎウールで思い出したのが、パシミナ。
ganga工房のあるウッタラカンド州の北、ヒマーチャルプラデシュ州やジャンムー&カシミール州まで行けばあるという。
カシミールというのはカシミアの語源だ。
それで今回はカシミールの東部、ラダックまでパシミナ糸を探しに行くことになった。
さて、その首尾やいかに!?
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